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Parfumésie 【パルフュメジー】  作者: じゅん
歌うように。
216/369

216話

 翌日朝。


「……昨日どこ行ってたの?」


 日付が変わってから帰ってきた姉をニコルは心配した。治安がいいとは言えないパリ。今は時期的にも多少は良くなっているが、それでも風が吹けば飛んでいきそうな少女には、夜の街は遠慮してもらいたいところ。寝て起きたらいつの間にか帰ってきていて、さらにすでに支度まで終わっている。


 ダラダラとパジャマのままベッドで横たわる妹に、制服を身に纏ったブランシュは喝を入れる。


「いい加減起きてください。もうすぐ朝食の時間できますよ」


 フランスでは朝はパンとバターやジャム、あとは簡単な卵料理程度で済ませることが多い。食堂は一回ごとに料金がかかるシステムのため、節約して各自でとってもいいし、払って食堂でとってもいい。キッチンも各部屋についているので、そこは自由度が高い。


 今日は自分が当番だったはず、その記憶は改竄したニコル。さらにいえば洗濯なども終わっている模様。が、気になることもある。


「いつ寝た?」


 あまり顔色が良くなさそうな気がしないでもない。無理して笑顔を作っているような。いや、過去には「とりあえず笑え」と言った気もするが、まぁその辺は柔軟に。


 隣のキッチンからは茹でる音。朝食の定番ウッフ・ア・ラ・コック。塩胡椒した半熟のゆで卵。茹でる時間は三分と決まっている。パンを細く切って焼き、つけて食べるだけ。用意するとテーブルに置き、先にブランシュは玄関に向かう。


「私は先に行きますから。あとはお願いします」


 またも返事を聞く前に出て行った。心なしか閉まる音も鈍い。


 フリーズしたまま、姉のいなくなった玄関をニコルは見つめ続ける。


「……」


 言葉はない。納得もいかない。絶対になにか隠している……ということを責められない。自分も色々と言っていないことはあるし。それに比べたら可愛いも——


「ちゃんとシンクに置いておいてくださいね」


 唐突に玄関が開き、再度ブランシュが顔を覗かせる。それだけ伝えたら、またすぐに消えた。


「……なんだかねー」


 なんだかなにもやる気が起きない。悩んだ結果、ニコルは朝食を摂ったらまた寝よう、そう決めてベッドから飛び出した。


 一方、当のブランシュは、たぶんそのまま寝て妹は授業には出てこないだろう、と予測した。元々が潜り込んだだけなのだから、勉強する必要もないのだろう。気持ちはわからないでもない。


 寮の廊下はまだ静かでひんやりとしている。壁や天井の白い色は、夏はいいけれども冬はどこか寒々しく感じる。あまりまだ人の気配がないのも起因しているのかも知れない。床のストーンタイルは高級感があってちょっと好き。なんだか視野が広くまわりが見えている。

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