206話
西洋音楽を演奏する際、独特なリズムというものが存在する。『長い音符は強い』という伝統がそれに当たる。音楽やそれ以外にも文学にも当て嵌めることができ、強いアクセントを持ってリズムというものを作り出す。強さと弱さ。どちらも必要不可欠。
そしてドイツの詩には四つの韻律、つまり言葉のリズムが存在する。それにより聞きやすくするという特徴があり、弱強のヤンブス・強弱のトロへーウス・強弱弱のダクトゥルス・弱弱強のアナペースト。これらを組み合わせることで、詩というものは成り立つ。
ではリズムとアクセントというものを手に入れた結果、歌曲はどうなったのか? よく例として挙げられるのが『水の流れ』である。流れていくためには高低差が必要とされる。平らでは流れはない。だからこそ、滞ることなく音を紡ぐためにはそういったことを意識せねばならない。
強さと弱さの差別化。シューマンという人物は、そのリズムというものが体に染み付いていた、とされているほどに忠実に従っている。感情豊かなドイツリート誕生の第一人者がモーツァルトなら、シューマンは進化の礎を築いたとも言える。




