表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Parfumésie 【パルフュメジー】  作者: じゅん
歌うように。
201/369

201話

 そこに。


「ここが音楽科のホールか。流石だね。ケーニギンクローネよりも大きくて立派だ」


 ゆっくりと開くホールの扉。入り込んでくるのは、姉妹校の制服を身に纏った可憐な少女。階段を降りる足音にも品がある。


 次に顔を覗かせるのは、香水とクラシックを結びつける少女ブランシュ。まだまだホールに入ることが慣れないでいる。


「あ……みなさん……」


 そして日頃からお世話になっているピアニスト達を発見。安堵しつつも申し訳なさ。


 そこに申し訳なさの欠片もなく勢いをつけて入ってくる少女、ニコルの姿も。


「おー、いるねぇ。練習熱心なことで。数名いないけど、まぁいいか」


 ひとりで納得。そのままゆっくり恐る恐る進む姉の背中を押して、ピアノの元へ駆け寄る。ほら、さっさといったいった。


 階段下までやってくる一行。ヴィズが見慣れない人物を視野に捉える。


「……ブランシュ。こちらの方は——」


「シシー・リーフェンシュタールだ。ケーニギンクローネから来た。数日だけど頼むよ。話には聞いてる」


 流暢なフランス語。まるで何年も住んでいたかのような、淀みのない言葉でシシーは軽く挨拶。


 そこに乱入するのはイリナ。初めて見た姉妹校の人物。それと制服。


「……ドイツ? てことは、声楽科の生徒、なのか?」


 透明感のある声。たしかに歌は上手そうかもしれないけども。


 軽やかにシシーは階段を上りつつ、その問いに答える。


「いや? 残念ながら普通科だ。歌曲を歌ったこともない。シューマンの名前は知っていたが『詩人の恋』という曲は初めて聞いた。期待に応えられるよう頑張るよ」


 そして同じようにスポットライトを浴びる。彼女の煌びやかさをより引き立てるかのように。


「よろしく。カルメン・テシエ」


 さらにそこに割り込むのはカルメン。先に右手を差し出し、握手の構え。なんとなく一番にしておこうという気になった。


 にこやかにそれに応じるシシー。ガッチリと握る。


「カルメンさん。よろしく。綺麗な指だ」


 その感想も伝える。それでいてしっかりとついた小指の筋肉。それは言わないでおいた。


 渋々、という形ではあるがイリナもそれに続く。


「……イリナ・カスタ」


 だが、なんだかソワソワと心が落ち着かない。というのも、全くの素人にブランシュが依頼しているという点。なんだか、優遇されているようでズルい。いや、ドイツ語の話者なら仕方ない、そう自身に言い聞かせる。


 数テンポ待ってシシーは握手を返す。そして握った手を引き、顔を近づけてみる。


「よろしく。イリナさんは心の揺らぎが大きそうだ。最近、辛いことと嬉しいことが続いたのかな? なんにせよ、今は楽しそうでこっちも嬉しいね」


「は? なに? なんなの?」


 いきなり。指摘されたことに心当たりのあるイリナではあるが、唐突すぎてケンカ腰になってしまう。同極の磁石のように、パッと距離を取る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ