187話
ロベルト・アレクサンダー・シューマン。トーンディヒター、音の詩人を自称する彼は、フランス語やギリシャ語など、マルチリンガルとしても活躍したドイツロマン派の作曲家。音楽を学び始めたのは七歳から、と他の作曲家と比べても遅く、ライプツィヒ大学の法科に入学するほどの高い知能も兼ね備えていた。
音楽の師はいるものの、彼の曲は独学による部分が大きい。自作のピアノ訓練器具の使用過多により、麻痺が残るほどの故障を抱えながらも、情熱を失うことなく執筆や作曲に精を出し、数多くの名曲を生み出した。特に歌曲に関しては『歌曲の王』と呼ばれたシューベルトの担い手とまで。
シューマンといえば『恋』と言われるほど、美しさと同時に切なさを表現する音楽。幼い頃から詩を発表し、詩集を編纂するなどの感情豊かな文学的な才能も発揮していた彼は、伴侶となるクララの父であり、ピアノの師でもあるヴィークと裁判を起こしてまで、反対された結婚を認めてもらうほどの熱情家。
そして結婚を機に大作曲家の仲間入りをしたシューマンが生み出した傑作『詩人の恋』。ハインリヒ・ハイネの詩に作曲された歌曲集であり、歌い終わった後にも美しい旋律をつけることで、より深い詩の世界を表現したわけだが——。




