表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Parfumésie 【パルフュメジー】  作者: じゅん
重々しく。
173/369

173話

 まだ終わらないミルクの撹拌。そのまま飲めばよかった、と思い始めたベアトリスだが、挑発には乗らない。


「必要ない。私は花屋だ。弾く機会なんてない」


 ようやく終わり、ゆっくりとスチームドミルクを注いで一度切る。その後、微細に揺らしながらフォームドミルクを注いでラテアート。今日はスワンの気分。自己満足だが手は抜かない。


 イスに戻り、不満気にベルは唇を突き出す。


「絶対上手いと思うんだけどなー」


「不要だ」


 譲らないベアトリスは、ラテをひと口。ロブスタ種を変えてみよう。


「はぁ……でも気になりますね。香りを音にするなんて。例えばこのセファランサスシュガーシャックの蜂蜜のような甘い香りだと、どんな曲になるのかとか。全然わかんないんですけどね」


 手近にある花を一輪、シャルルは掴んだ。ほんのり香る優しい花。


 蜂蜜、という部分にベルも頭を悩ませる。


「うーん、やっぱり蜂ってなると『熊蜂の飛行』かな。ベアトリスさんはどう思います?」


 若干機嫌の悪かったことなど忘れて、店主に話題を振った。他に蜂の名前のついた曲、あったっけ?


 ひと口、控えめの甘さを口にしたベアトリスが、嫌そうに答えを出す。


「……バッハの『マタイ受難曲』。第二三曲に蜂蜜とミルクの記述がある。今の私ならそれだ。というか、熊蜂は集団で行動しないから蜂蜜はとれないぞ」


 想像してみたら蜂蜜が欲しくなってきた。ハニーカフェラテ。うん、次はそれだ。


 曲どころか虫の知識でも上をいかれたベルは、頬を膨らませる。


「……やっぱり詳しいじゃないですか」


「知らんな」


 やはりこいつを打ち負かすと、より美味く感じられる。ほんの少しだけ、ベアトリスは優越感に浸った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ