17話
「ちょ、ちょっと待ってください。おじい様はニコルさんに課題を出されたのでは?」
それ以前の問題だ。そもそもがこれは、なにかしら意図があってギャスパー氏がニコルさんに出したものであって、それに横から入っていくのは、どう考えてもおかしいこと。ブランシュは興奮しつつも、冷静に判断する。
冷凍庫奥にあったチョコミントアイスを小皿に移しながら、ふっふっふ、と不敵にニコルは笑う。固すぎてなかなか小皿に落ちず、笑う回数が増える。落ちるまで言うつもりか。最後はふーふー言っている。
「『誰かに聞くな』とは言ってない。むしろ、色々な人の意見を取り入れた方が、あのじいさんにとっては好都合なんだろうね。アイス食べる?」
そもそも私のです、と言い返す力も今のブランシュには残っていない。整理が追いつかない。
「……ニコルさんがギャスパー氏のお孫さんだという証拠はあるんですか?」
「ないね」
即答される。
「写真だって捏造できるし、電話かけたっていいけど、仕事で忙しくて出ないって言い張れる。信じるか信じないかはまかせるよ。やるかやらないかも任せる。やらないのであれば出て行くよ。あの警備員には謝ってーー」
「やります」
「え?」
ニコルは一瞬たじろぐ。
「やります、やらせてください。もし本当であるなら、これは私が手繰り寄せた、ギャスパー氏と関われる最後の蜘蛛の糸なんです……!」
深く、深く息をブランシュは吐く。自分の中にある力を全て使い切って言葉にするような、長年の想いをその言葉に乗せるような決意。
スプーンをくわえながら、「本当にいいの?」と今一度、ニコルは確認する。
「……あのじいさんのことだから、ないと思うけど、もし万が一にもすごくいいやつをブランシュが作っちゃって、それをじいさんが自分のものだとして発売したら?」
「それは……」ない、と言い切れるが、万が一、億が一にでもそれが出来上がったとしても。
「それでも……それで、いいんです。あの方が、私のことを視界の隅にでも置いてくれたのなら……!」
そこまで口にした後、ブランシュは真下を向いたまま動かなくなった。膝の上に両手を置き、様々な感情を抑えている。
「……なにがそこまでさせんのかねぇ。頼んだ私が言えることじゃないけど」
そう言いながらニコルは一気にアイスを平らげた。
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