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Parfumésie 【パルフュメジー】  作者: じゅん
重々しく。
138/369

138話

 しかし、強引さはニコルの真骨頂。そんなこともあろうかと、案は用意している。


「あるじゃん、屋内で弾けるところ。さー、夕食ついでに運動しよう」


 たしかにホールで聴くブランシュのヴァイオリンは好き。だが、それ以上に外でのびのびと弾く彼女を見ているのが好き。気分転換が必要なのは我々も。


 ……なにか裏がある。感覚でブランシュにはわかる。


「……嫌な予感しかしませんけど」


 ジトっとした目で凝視する。たしかに、多少は温度の変化を抑えつつ、演奏している人が多数いる場所はある。そして、少し前にそこでやった過去がある。そこを指しているのであろう。


 お互いに意思疎通し合い、その情景を思い浮かべると、メリットをニコルが提示する。


「メトロの駅構内。お金ももらえる。開放的でストレスフリー。いいことしかない」


 弾くのは自分じゃないけど。まぁ、そういう日があってもいいじゃない。


 だが、今日は頑なに拒否するブランシュ。


「……やっぱりこうなりますか。やりません。そもそもなのですが、これは許可が必要なんです」


 というのも、パリのメトロでは、駅構内や車両内で音楽を演奏する者、歌う者、人形劇などを行う者が多数いる。そうした大道芸人達は趣味として、もしくは小遣い稼ぎ程度にチップをもらうのだが、一時期あまりにも増えすぎたためオーディション制となった。その後は無許可で行うことは禁止されている。


 もちろんニコルもそれは知っている。だが、例外を思い出す。


「前にフォーヴと勝手にやってたじゃん」


 かつてフォーヴがベルギーから旅行で来た時に、映画『ポン・ヌフの恋人』のワンシーンを真似て、演奏をしたことがある。その時、ついでにブランシュも演奏していた。


「あれは……! フォーヴさんがやりたいというので……言わないでおきました……」


 そこを突かれるとブランシュには痛い。先んじてやったのはたしかに自分。楽しそうにしているフォーヴを見ていたら、言い出すことができなかった。映画に憧れて来ていたのもある。


 これらの事実をひとまとめにしたニコルの見解。


「つまりはバレたら逃げればいいってこと」


 なんでそうなるのかは不明だが、実際に許可制になった後も、無許可で演奏して捕まる者は後を絶たない。もはやここまでくると、稼ぎたいという者達はほぼ皆無で、その雰囲気を楽しみたい芸術の都パリの魔力。


「いいわけありません。禁止です」


 ツーン、と感情を消すブランシュの否定。許可証は見せるようにしておかなければならないため、すぐにバレる。学校では物静かなキャラで通っている自分が、唐突に捕まったらなんというあだ名がつくのだろうか。

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