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Parfumésie 【パルフュメジー】  作者: じゅん
歩くような速さで。
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1話(イラストあり)

 ココ・シャネルは「香水をつけない女に未来はない」という名言を残しているが、ブランシュ・カローにとっては未来どころか現在もないと思っている。というのも、未来があるためには現在の自分の行動や思想が根底にあるわけで、さらにいえばその現在に至るために過去がある。


 フランスでは一四、五歳の誕生日に母親や祖母から『いつか自分自身に合う香水を』というメッセージと共に贈られるという習慣がある。もちろん全員が全員、そうではないのだが、根強い習慣としてはるか昔から香水を送る文化は存在しているのだ。


 ひとつの香水を生涯使い続ける人もいれば、日によって、時間によって、気分によって使い分ける人もいる。場合によっては二種類の香水を混ぜてオリジナルを作る人もいる。寝る時に香水をつけるマリリン・モンローのような人も。


(やっぱり……パリはあまり好きではありません……)


 フランス・パリ一二区。二○あるパリの行政区の中で最も面積が大きく、ヴァンセンヌの森と呼ばれる森林公園が区の六割を占める他、パリ花公園という自然スポットもあり、大都会パリの中では緑あふれる区といえるだろう。


(それでも、やはりここは落ち着きます。故郷に一番近いのは、パリではここですね)


 ブランシュの故郷は、ここパリではない。南フランスのニースから三〇キロほど離れた、人口約五万人ほどの小さな街、グラース。中世ヨーロッパの風土が色濃く残り、石畳や城壁などが至る所に存在する。よく晴れ、雨が少なく、水はけがいい土地もあって、香りのある植物がよく育つ。別名『香水の聖地』とも呼ばれる。


 街全体が花の香りに包まれている、という表現があるが、あながち間違いでもない。一年中ジャスミンやラベンダーなどが咲き誇り、パン屋や雑貨屋なども、その香りをイメージした商品などがあり、他では手に入らないオリジナル。有名な香水の工場なども多く、街全体がそうあるべきと栄えてきたのだ。


 そんな街で一五年育ってきたブランシュは、元々内向的な性格もあり、趣味はヴァイオリン。将来は街の影響もあり、香りのスペシャリスト、調香師になることを夢見てきた。香水も好きだが、なにより『香りに包まれていること』、これがたまらなく好きだった。


 調香師になるためには資格などはいらない。芸術家と同じくくりにされているからだ。だが、芸術家ということはもちろん、学ばなければいけないことはたくさんある。ひとり故郷を離れ、パリの専門学校に通うべく、高校からは寮のあるモンフェルナ学園に転入する運びとなった。が。


(なんでこんなことになったのでしょうか……)


 数日前まで遡る。


挿絵(By みてみん)

続きが気になった方は、もしよければ、ブックマークとコメントをしていただけると、作者は喜んで小躍りします(しない時もあります)。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 頑張って下さい!
2023/05/19 22:54 退会済み
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