火力発電所、給電開始
「早急に駆けつけて頂いて、おまけに治療までしてしていただき、誠にありがとうございます」
負傷者が落ち着き、西洋医から、跡も残らないとお墨付きをいただいたので、汲広とアントネラは今、所長室に居る。
治癒魔法師は治療院に帰って患者の治療をするとのこと。
なので、掃き出し窓の能力で治療院へ返した。
急患だと治療院の患者を放って置いて、発電所に駆けつけたのである。
治療院にいた患者は急ぎではないものの、放っておく訳には行かなかったのである。
「あの設備は熱を余すことなく使うための、二次的な設備でね。発電の出力は下がるが無くても一応しのげる。あの水蒸気は循環式で設計されていて、配管に何らかの不備があったのだろう。蒸気漏れで循環はストップだ。今は煙突から水蒸気を逃がしている。河から水を供給してしのいでいるところだ。しかし、作業員を危険にさらした。これは私の責任だ」
所長は沈痛の面持ちだ。汲広は、
「それでは、今後、事故の究明と再発防止策をお願いします」
と、お願いすると、
「もちろんだ。本社にこの事故を報告し、事故の究明と再発防止策を打つつもりだが、本社のものと同等の資料をアカツキ伯爵にも提示するつもりだ」
「それを聞いて安心しました。ご報告、お待ちしております」
負傷者は、傷は治ったものの、精神的ショックがあり、1週間有給扱いで休ませるそうな。
復帰前に、一度、西洋医が念のため、傷跡を見たところ、傷跡は、無かったかのようにきれいに治っていた。
半月後、中間報告が火力発電所から届いた。
配管の結合部のパッキンが、手違いで年代物が火力発電所に届き、それに気付かず取り付けたそうな。
結合部を外してみたところ、パッキンは劣化してホロホロと崩れ落ちたそうな。
報告書は数点の写真付きで送られてきた。
確かにパッキンはボロボロであった。
パッキンを新しいものに取り替え、通常運転の倍の圧力の水蒸気を流して入念にテストしたところ、各部問題ないとされて、通常運転に戻った。
問題は、火力発電所から、パッキンを納入したゴム製造の会社へと移った。
これを端緒に、火力発電所の他の設備も入念にチェックされた。
他は特に問題なしとされた。
出力60%になったところで工業団地に給電する運びとなった。
火力発電所ができたことで、前に作った水力発電所は火力発電所の管轄となり、揚水型の水力発電所に生まれ変わる予定となった。
火力発電所を作る計画案が出たところで工場団地だけではなく、近隣の村にも給電して欲しいと頼んでおり、工場団地の建設と共に、各村々へと給電する電線、村で電気を使うための変電設備、そして、村の家一軒一軒へ電気を配る配線も、着々と準備が進められていた。
出力の関係でまだ給電されていない。
出力が70%になったところで近隣の村への給電が順次行われる予定だ。
その村々の中にはハーパヤの街も含まれる。
元々、水力発電所から少ないながらも給電がされていた。
その配線を入れ替える形で新たにもっと高出力な電気に耐える配線に差し替えられた。
電気に慣れてきたハーパヤの住民に配慮し、まずはハーパヤに電気が供給された。
汲広がハーパヤの街を歩くと、
「電気が明るくなった。ありがとう」
やら、
「スマートフォンの充電が家でもできるようになった。ありがとう」
など、感謝の言葉をかけられることが度々あった。
汲広は、電気が使える生活は、良い変化なのだろうと思っていた。
「調子に乗って使いすぎると、電気代金払えなくなるぞ」
と、汲広はちょっと脅してみた。すると、街人からは、
「領主様のお陰で収入が増えました。電気料金くらいは払えますよ」
との返事だった。
工場団地の目的に、地元民を多用して、安い賃金で労働力を確保するという狙いがあった。
そのため、工場の労働者は、インジスカン王国のみならず、周辺各国へも応募され、まず、日本語を覚えてもらい、日本の工場で研修を受け、工場団地の片隅の団地に住まい、新たに稼働した工場で働いている。
畳ではなく土足の生活ながらも団地は日本式が多用され、労働者の度肝を抜いた。
テレビもある。ケーブルテレビで日本の放送が見られる。インターネットも使える。
冷蔵庫に掃除機に洗濯機。労働者の生活は一変した。
その噂は他の領地にも飛び、果ては数年後には他の周辺国にまで広がることとなる。
他の領主から”見学に来たい”との申し出が多数来たが、汲広は”もう少し落ち着いて、労働者の生活が安定してから”と、丁重に先延ばしにしていた。
これでインジスカン王国も一変するかな?と、期待と一抹の不安を持つ汲広であった。
お読み下さりありがとうございます。
地球や日本、リアルな世界とこの話での世界観は同一ではありません。また、ぷい16が理想とする世界観でもありません。フィクションとして楽しんで頂ければ幸いです。





