休養日
とある休養日。いつもなら、平日にできなかった仕事やらカリキュラムのブラッシュアップに追われる王都組のアカツキ夫妻だが、今日は珍しく何の予定も入っていない。
「特に何も無いし、領地組の汲広やアントネラの様子でも思い出してみるか」
「そうですね」
アカツキ伯爵の私室。仕事机に身内の来客用にテーブルと椅子。アカツキ伯爵はその来客用の椅子に座っている。
向かいにはステファニア。
目をつぶって日頃、自分の仕事に専念する為、フタをしている領地側の汲広とアントネラの様子を思い出してみる。
「うむ。ちゃんと領地視察はしたようだな」
「そのようですね」
「ほぉ。それで油田を見つけたか。そして、この二人が牧場を営むのか」
長い間フタをしていた記憶を思い起こす二人。
「あぁ、国王を領地にお連れしたとき、これじゃぁ、こちらの念話に気付かないわけだ」
「通信については汲広のまねは出来ませんわね」
「あぁ、あんな高い所はゴメンだ」
「貴方でも、汲広より劣るところはあるのですね」
「うちの家族をこちらに観光に来させてくれたのには感謝している」
「貴方、根を詰めすぎて参っていましたものね」
アカツキ伯爵にしか出来ないことはアカツキ伯爵がする。
汲広にしか出来ないことは汲広がする。ただそれだけだった。
「そして、油田の調査をして…農作物の売り先の開拓までしたのか!」
「売り先が多い程、売り上げは上がりますからね」
選択肢が多い程、高く買ってくれる所へ卸せる。
「あと、王都の電化だよなぁ」
「王都では、民間にまでは広げられませんでしたけどね」
「あとは映画館とスマートフォンのエリア拡大か」
高い所はゴメンだととつぶやくアカツキ伯爵。
「まぁ、働いてくれた人へのメシくらいはいいだろう」
「何も無ければ誰もついてきてはくれませんものね」
「貴族の希望者への電化」
「貴族とて、電気料金は痛いみたいですね」
「そして、カンデラ家の日本訪問か」
「私の実家までよくしてもらって」
「通信制の学校に編入したか。僕はあいつにこっちの仕事押しつけすぎたかな?」
「仕方が無いですわ。貴方だって手一杯なのですから」
アカツキ伯爵は汲広に無理強いさせすぎたかと反省するのだったが、
「第一採掘場に工場団地予定地と、掃き出し窓の能力フル活用だな」
「掃き出し窓の能力づくしであちらも忙しいようですわね」
「使用人にまで掃き出し窓の能力を授けて…」
こちらも忙しいが、あちらもフルに活動している。
変わってやることも出来なくて歯がゆいアカツキ伯爵であった。
「おい、あいつ、免許を取りに行ってるぞ!」
「あ、私も取ってる」
「あいつ、免許証を土のう袋の能力に入れて… あった!」
「私のもありましたわ!」
「これは便利そうだ。ステファニア、こっちも車を買うぞ!」
「財政は引き締めるんじゃなかったのですか?」
「車は別だ。あと、バイクも買うぞ!」
「あらあらまぁまぁ」
アカツキ伯爵は汲広に連絡を入れ、車とバイクを買いたいことを伝えた。
汲広からはもっと具体的にとの返事だったが、「条件はお前のところとさして変わらないのだからそこら辺は見繕え!」と、無茶な要求をするのであったが、「選んだ物に、文句を付けないで下さいね!」と、汲広は念を押して、引き受けるのであった。
そして、車の方は、9人乗れて、走破性のある、ハイブリッドな車を、バイクの方は、走破性がありながら、電動で動くバイクを見繕って王都のアカツキ伯爵邸へと届けるのであった。
車が届いて早々、「ステファニア、付いて来い!」と、アカツキ伯爵は馬車しか通らない、何も無い一本道をひたすらドライブするのであった。
汲広の思い出を巡ることによって、場所を覚え、行動できる範囲が広がったアカツキ伯爵。
汲広の思い出に、海が見られる場所があったので、そこを走ってみた。
「爽快感があるな!」
「あまり飛ばしすぎないで下さいよ!」
「分かってるって」
久々に青春を謳歌する二人であった。
「ジョージ国王にもこの景色、見せたいな」
「貴方、何を無茶なことを」
次の日、仕事終わりのジョージ国王をドライブに誘った。
「おぉ、馬車より速くて景色も良いぞ!」
ジョージ国王もノリノリであった。
「アカツキ伯爵よ、私も車を持つ。準備致せ」
「でしたら運転手を選定しなければなりません」
「あい分かった」
数日後、運転手が選定され、また、王城の謁見の間へと向かったアカツキ伯爵。
アカツキ伯爵は前にスキカからもらったテレパシーの能力で車とバイクの運転技能を運転手と、ついでにジョージ国王にも送った。
車は、また汲広に見繕ってもらった。
またも走破性のある、ハイブリッドカーであった。
ちゃんと技能が伝わっているか不安だった為、運転手にも、ジョージ国王にも運転してもらったが、問題なく伝わっているようだ。
ジョージ国王が、どこにドライブに行くかは知らない。
アカツキ伯爵は、静かにグーの右手から、親指を上に突き立てて前に出し、満面の笑みを浮かべるのであった。
お読み下さりありがとうございます。
地球や日本、リアルな世界とこの話での世界観は同一ではありません。また、ぷい16が理想とする世界観でもありません。フィクションとして楽しんで頂ければ幸いです。





