閑話―アカツキ領主の評判
「しっかし領主様が変わって、アカツキ領になってから、今の領主様、人使いが荒いぜ!」
ここは、アカツキ領のアカツキ伯爵邸のある街ハーパヤ。そこにある一軒の酒場である。
「ある日突然水車小屋を建てるとか言い出して人をかき集めて建てたと思ったら、今度は電気の配線をしろってひたすら土を掘りまくらせやがって」
この男、仮に街人Aとしよう。
時間があったから水力発電所の建設と、電線の埋設工事にかり出されたようである。
日本では、電線と言えば、電柱を立てて、空を這うように電線を張り巡らせているが、ハーパヤの電線は、全て地中に埋めている。
「そうだなー。人使い荒いよなー」
街人Bも賛同した。
「まぁ、そのお陰で、電線の埋め方も覚えたし、自分家もそうだが、色んな家に電気を通してやって喜ばれたがよっ!」
と、言いながら、鶏冠鳥の塩焼きをアテにエールをグビッと飲む。
肉を食える辺り、この男、懐具合はかなり暖かいようである。
「それに、俺ッちは仕事があったんで参加できなかったが、何でも広い土地に延々と柵を作らされたって話しじゃねぇか!」
すると、街人Bは、
「俺ッちはそっちにも参加したよ。重い木材を運ばされるやら槌で杭を打ち付けなきゃならんやら、杭と杭の間に板を張っ付けなきゃならんやら。重労働な上に終わりが見えんときたもんだ。あれをやっている間は絶望したよ」
街人Bは焼き唐辛子をアテにしながらビールをグビッとやる。
「本当に終わりが見えんもんで、俺ッちは何か罪でも犯したか?強制労働か?って領主を恨んだもんだよ」
街人Cも話しに入ってくる。
「でも、時々領主の野郎の奥さんが持って来る昼食は美味かったなぁ」
「あれが無ければどれだけの人間が逃げ出したことか」
すると、街人Aは、
「そっちでも出たのかい。電気工事をしてるときも時々出たなぁ。あれはウマかったなぁ」
街人Aは遠い目をする。そして、
「工事が一段落して、領主邸の庭で食った飯も美味かったなぁ。あんな飯食ったのはあれで最初で最後だ!」
街人Aは、エールをあおって、次のエールを店員に注文する。すると、街人Bは、
「柵の方も完成したし、近々また、あの食事を振る舞うって話しだぞ。お前、工事に参加しなかったから食えんな。残念だったな!」
「何を!いや、大勢居るからバレやしないか。こっそり忍び込んで食ってやる」
「領主の機嫌を損ねないように美味くやるんだな」
街人Bはアテの唐辛子を二つ口に放り込み、ビールをグビッとやる。すると、街人Cは、
「しかし、あの領主になってから、麦農家は麦の取れ具合が良かったらしいぞ!何でも、領主があちこちの麦農家を回って土地をいじくり回したら取れ高が増えて、今じゃ麦農家は結構羽振りが良いそうじゃねぇか」
「ケッ。麦農家の奴等は良いな」
街人Bは悪態をつきながらビールを飲み干し次を注文する。
「そういや、あの領主、領地内の全部の村を回って何かを調査してたらしいぜ」
「あぁ、俺もその話、聞いた」
「でも、麦農家みたいにどこかがいきなり儲かったっていう話しは聞かんなぁ」
「何でも食肉用に家畜を飼えって触れ回ってたらしいぞ」
「家畜と言えばザービルやらヘートルしかいねぇじゃねぇか!あれは労働力だ。労働力を食っちまったら後の生活はどうしろってんだ!」
「何考えてんだあの領主!」
「…俺ら、あの領主に付いて行って大丈夫なんだろうな?」
一瞬その場が静まりかえる。その沈黙に耐えられなかった街人Aは、
「ま、まぁ、麦農家はあの領主のお陰で儲かったんだし、次は他の者も儲けさせてくれるかもしれん」
「それに、あの領主のお陰で夜が明るくなった。夜に手仕事ができてちょっと儲かった」
「それに、駆り出されたらたまに美味しい昼食くれるしな!」
「そして、仕事が終わったら食ったことがない美味い夕食が食えるしな!」
「きっと美味い方向に進んでいるんだろうぜ!」
街人たちは少し不安だったが、不安を払拭する為に、悠生を褒めだした。
日本ではやる手法だが、インジスカン王国国民にとっては全く馴染みのない手法。そこに不安を持つのは当たり前である。
「きっと美味い方向に進んでる。そう思っとこうぜ!」
悠生の想像ができない行動に不安を抱えていた。
領主は自分たちでは変えられない。
根拠なく、明るい展望が見えていると思うことにした街人たちであった。
お読み下さりありがとうございます。
地球や日本、リアルな世界とこの話での世界観は同一ではありません。また、ぷい16が理想とする世界観でもありません。フィクションとして楽しんで頂ければ幸いです。





