農作物運搬班の採用試験
掃き出し窓の魔法と土のう袋の魔法を使える者をアカツキ伯爵領内で募集したところ、ちらほらと集まり始めた。
掃き出し窓の魔法と土のう袋の魔法が使える者、土のう袋の魔法の方のみが使える者。
汲広は、掃き出し窓の魔法を使える者を、テストしてみることにした。そのテストとは、一度、日本へ連れて行き、その者が、日本から行って帰ってくるテストだ。
試してみると、ほぼ、行くこともできないもの達ばかりだった。一人の例外を除いては。
マヤ・スムケホーズという女性だけが、日本へ行くことが出来た。でも、帰ってこない。
不安になった汲広が、一度、マヤの様子を覗きに行くと、
「マヤ、何故帰ってこないんだ。心配するだろう」
「魔力が回復するのを待っていたのです。あとちょっとで魔力が回復し、戻れると思いますので、テストを続行して下さい」
「分かった。熱意はあるのだな。もう少しだけ待ってみる。戻ってこなかったらまた来る。そのときは、私の掃き出し窓の魔法で帰って貰うからな」
「はい。そのときは残念ですけど断念します」
そう、会話をして、汲広は一足先にアカツキ領に戻った。
待つこと30分、マヤが自力で帰ってきた。
「帰ってこられました。私を雇って頂けますか?」
「おぉ、雇うとも。行った先で、お前達に依頼したい仕事は、すぐに戻る必要の無い仕事でな。回復したら自力で戻れるなら十分だ!」
マヤ以外の他の者に聞いてみた。
領地の村々を自力で行ったり来たりできるかと。
そうしたら、それくらいはできるということだった。
そこで考えたプランは、マヤ以外の掃き出し窓の魔法の能力者が、各村々の農作物を集めてマヤの元に集まる。
そうして集まった者たちをマヤが掃き出し窓の魔法で日本に送り届ける。
そうして、税関やら検疫やらのテストを受けている間にマヤに魔力を回復してもらって、合格なら市場に出す。
不合格なら農作物をまた土のう袋の魔法に詰める。
それで、マヤの掃き出し窓の魔法で帰ってくる。
以前、汲広は、領地行脚の際、果物農家に”日本で売らないか?”と声をかけたことがある。
そのときは準備が間に合わず、断念した。
今は果物はシーズンオフ。秋の果物やら麦を売りに行くには時期がちと早い。
そこで汲広は、明日、農作物やら麦を実際積んで日本に飛べるかテストすることにしたのだ。
「今日はテストお疲れ様。明日は私が考えたプランが実際に動くかどうかのテストをしたいと思う。君達を雇うかどうかの最終テストだと思ってもらって構わない」
そうして、マヤも含めた掃き出し窓の魔法の能力者に、各村々へ回るルートを割り振った。
「明日はテストだ。各々明日に備えて魔力を回復することに努めて欲しい」
そうして、汲広は、各村々に、模擬農作物となる、本物の土のう袋を置いていって、”明日、集配テストをするので、農作物の代わりにこれを渡して欲しい”と、果物農家に土のう袋を託すのであった。
そして次の日、掃き出し窓の魔法の能力者が、昨日の打ち合わせ通り、果物農家を回り、土のう袋を土のう袋の魔法に詰めてマヤの元へやって来た。
汲広は、念のため、土のう袋の数ををチェックして、マヤに日本まで繋いでもらい、続々とマヤの掃き出し窓の魔法で、皆、日本へと渡るのであった。
そして1時間後、マヤが掃き出し窓の魔法を使って元の場所へ戻ってきた。
念のため、もう一度土のう袋の数ををチェックする。すると汲広は、
「テストは成功だ。合格だ。このテストに付き合ってくれた皆を雇うことにしよう。実際に働いてもらうのは果物も含めて農作物が採れる時期。それ以外の時期にも給料は面倒を見る。何か、状況によっては他の仕事を振るかも知れない。君達のお陰でアカツキ領産の農作物を、日本に売りに行くルートを開拓できた。輝かしい一歩である。私は君等のこれからの働きにに期待する!」
皆、雇ってもらえることが決まったので大喜びだった。
しかし、汲広は次に不穏なことを言うのであった。
「君等はアカツキ領産の農作物を日本に売りに行く販売担当だ。日本には、日本語という言葉が使われており、サーメイヤ語は通用しない。君等は農作物を市場に送り出す為に、最低限度の日本語が使えなければならない。君等には日本語の特訓を受けてもらう!」
綿抜一久、五右武路永遠とは逆に、インジスカン王国国民が日本語の勉強をする。
ニホンゴムズカシイネ。
これから掃き出し窓の魔法の能力者、これから運搬班と呼ぼうか。
運搬班には日本語の地獄の勉強が待っているのであった。
お読み下さりありがとうございます。
地球や日本、リアルな世界とこの話での世界観は同一ではありません。また、ぷい16が理想とする世界観でもありません。フィクションとして楽しんで頂ければ幸いです。





