掃き出し窓の魔法の能力者、募集中
綿抜一久と、五右武路永遠という二人の日本人を新たに迎えたアカツキ家。
しばらく二人はアカツキ邸に泊まってもらって、まずは牧場の場所を選んでもらう。
そして、選んでもらった牧場に、柵を設置する。牧場に家を建てるか、街から通うかは本人の意思に任せる。
その後、野生のブーキルやブーエルを生きたまま捕まえて、一度飼ってみて、家畜として育てられるかどうか判断するという手順になった。
「いらっしゃい。食事は済ませたの?」
「いえ、まだです」
「食べてません」
「それじゃぁ、まずは食事ね♪」
そう、アントネラは言うと、食堂へ案内し、4人で夕食となった。すると、一久からこんな質問が飛んできた。
「しかし、こちらは畜産という概念がないのに暁邸では普通に肉が出てきますね」
「これらの肉は、ハンターやらうちの兵士らやが狩ってきた動物だ。肉は基本、狩ってくる」
「貴族だから肉は食える。平民はどうですか?」
「一部の裕福な商人なんかはたまに食えるが、一般庶民は何かの祝い事やお祭りの時にしか食えないらしい」
「やはり、肉はご馳走なんですね」
「そうだ。だから僕は領地視察で各村々を回っているときに、畜産をしてみないかと触れ回ったが、元々畜産の文化そのものが無くてね。村人には全然理解してもらえなかったんだよ。だから、二人には、先行例として期待しているよ」
「思った以上に期待されていたんですね。頑張ります」
「オレも頑張ります」
自分の意思で勝手に来たと思っていたら、実は期待されていたと知った二人。
自分たちの人生もかかっている。失敗は許されない。
気合いの入る二人であった。そして、アントネラは、
「ところで、サーメイヤ語の勉強は進んでいるかしら?」
「すみません。仕事を辞める手続きとか何やらで忙しくて、パラパラとめくる程度にしか勉強できていません」
という一久と、
「やっと文字を覚えて、書けるようになりました。でも、発音は全然ダメで…」
という永遠。するとアントネラは、
「全然ダメじゃない!二人とも、ここに住むのよ!言葉くらい覚えなきゃ!」
アントネラ、激オコである。
「幸い、僕たちは、大学でサーメイヤ語学科ができる前は、二人でサーメイヤ語教室をやっていてね。語学は教えていたから二人にはみっちり指導させてもらうよ」
「はい。頑張ります」
「オレも頑張ります」
「それと、魔法で僕たちはもう一人ずつ居るから、僕たちが二人居てもビックリしないように」
「え?双子とかじゃなくですか?」
「あぁ。見た目も瓜二つだし、記憶も共有している。まぁ、自分の仕事中心だから、相手のことは記憶にとどめておく程度だけどね。」
「魔法、ハンパねぇ!」
二人は驚愕していた。
「それでは、二人は夕方まではこれからの仕事の準備、暗くなってからは語学の勉強。忙しくなるぞ!」
「「はい。頑張ります」」
決意を新たにする二人であった。
「それとだ。君等には随分先になる話しなのだが、掃き出し窓の魔法と土のう袋の魔法ができる領民を募集しようと思っていてね」
「掃き出し窓の魔法と土のう袋の魔法ですか。それはどんな魔法ですか?」
「掃き出し窓の魔法は、さっき使った移動魔法だよ。覚えている土地に瞬時に行ける魔法。で、土のう袋の魔法は、異空間に物を出し入れする魔法。担いだり手に持ったりせずに、重量物でも軽々運べる便利な魔法だ」
「で、その掃き出し窓の魔法と土のう袋の魔法がオレ達に何の関係が?」
「まずは農作物からだが、豊富にとれれば日本やら地球にも輸出したいだろう。そのためにこの二つの魔法は便利なんだ」
「色々考えているんですね」
「まぁ、僕はここの領主だからね」
そうこう話しながら食事は進んだ。その後、時差の関係で眠くない一久と永遠に、サーメイヤ語を遅くまで教える汲広とアントネラであった。
そして、翌朝。アカツキ領全土に公募が交付された。
”掃き出し窓の魔法と土のう袋の魔法の片方、または両方できる者を募集。人数、若干名。雇い主、アカツキ領領主、ユウセイ・フォン・アカツキ。仕事、農作物や畜産物の遠方への運搬”
うまくいけば日本円やら地球の外貨を稼げる。
生産者は買ってくれる相手の幅が広がり、より高値で買ってくれる相手を選びやすくなる。
汲広の飽くなき開拓心は、まだまだ底が見えないのであった。
お読み下さりありがとうございます。
地球や日本、リアルな世界とこの話での世界観は同一ではありません。また、ぷい16が理想とする世界観でもありません。フィクションとして楽しんで頂ければ幸いです。





