領地行脚
次の日から領地を巡る汲広とアントネラと執事とその他従者。
代官のミラトはお留守番だ。いくら書類仕事が進んでいるからといって、即時決裁しないといけない案件があるからだ。
執事はアントネラ付きの執事であるセバスチャン・ハーバーズである。こちらに来て、領地のことを詳しく学んだらしい。お、俺の仕事が… と汲広が言ったとか言わなかったとか。
インジスカン王国のアカツキ伯爵は前に、麦畑を大幅てこ入れして、その年の麦は、例年にない大豊作だったらしいが、その他はあまり見ていない。
その他の作物やら工芸品、生活雑貨などを見て回る予定だ。
最初に着いたのはオバーヘ村だ。
ここは果物が有名だ。村の中心部に人が住み、その周りが果樹園になっている。
オクラみたいに筋状にへこんでいるのだが、長さ的にはトマトみたいなラクオーベという果物を食べた。甘酸っぱくて美味しい。でも、大きいタネを、一口ごとに吐き出さないといけないのが難点だ。
次に食べたのは、ツナマアセという果物。
柑橘類のようにデコボコとした見た目だが、皮が苺のように薄く、皮ごと食べるそうな。
一噛みして、果汁、ジュワー。口の中が甘みでみたされ、歯触りも、シャクッ、シャクッとして、中々に美味しい。日本にはない食べ物だ。
取れ高を聞いてみたところ、平年通りだという。
果実の間引きもしているみたいで、果実の一つ一つにちゃんと栄養が集中しているみたいだ。
出荷先を聞いてみると、アカツキ伯爵領のある、ハーパヤの街だとか、何といっても大きいのは、王都のシンダーグスが、出荷量ではダントツらしい。
でも、どちらの果物も、他の領地からも入ってくるらしく、同じ量を採っても、値段が下がり傾向だそうな。
それなら、日本で売ってみないか?と聞いてみたところ、売れる先があるなら売ってみたいという返事だった。
汲広は、スキカから、トンデモな世界の第一人者という本人には不本意なキャラクターを与えられているため、人脈が豊富だ。農水省の役人にも、果実の市場にも顔が利くから今度、納入できないか聞いてみるのもいいだろう。
納入するからにはちゃんと検査をパスしなければ。
しかし、どの村を見ても、人が住んでいる所は点々としていて、遊ばせている土地がいっぱいでもったいない。村人の一人に聞いてみる。
「肉は食べられるか」
「お祭りのような特別な日にしか食べられないです」
「もっと気軽に肉を食べたくはないか?」
「肉なんかは滅多に手に入らない。食べたくても食べられないじゃないですか」
村人は言っても仕方ががないことなのにと、こちらが何を言いたいのか分からない様子だ。
「それでは、家畜を飼えば?」
「家畜は労働力です。やはり食えません」
「いや、肉食用の家畜を飼うんだ」
「はぁ?」
「肉食用に育てて、時期が来れば潰して食うとか、市場で売るんだよ」
「そんなの聞いたことがありません」
「日本、というか、地球では普通だぞ?」
これは、教育的指導が必要だ。この国には労働力としての家畜は居るが、肉食用の家畜は居ない。話だけでも振りまいておく必要がある。
「よし、次の村へ行こう!」
何だか、この村では、特産品を食べただけで、何もしていない気がするが、とにかく次の村だ。
馬車で移動して、カーヤネン村に着いた。ここは麦の生産で有名で、一度、ジロウ伯爵が、生産のてこ入れに来ている。
「諸君、麦の育ち具合はいかがかな?」
「あぁ、これは男爵、今のところ、順調に実っております」
「順調か。それは良かった。で、今は私は伯爵だ」
「おぉ、昇進おめでとう御座います!」
何やかんやで汲広の顔を覚えている村人もいるようである。ここでも、一つ、言ってみることにする。
「諸君、肉を鱈腹食べたくはないかな?」
「食べたいです!でも、特別なことがないと食べられないんです!」
「それでは、農地の外の、遊ばせている土地に、肉食用の家畜を飼うことだな」
「肉食用の… 家畜… ですか?」
まぁ、この国にはない取り組みだから、疑問符が付くのは仕方がないな。
そうして、行く先々で、”肉食用の家畜を育てよ”と触れ回る汲広であった。
お読み下さりありがとうございます。
地球や日本、リアルな世界とこの話での世界観は同一ではありません。また、ぷい16が理想とする世界観でもありません。フィクションとして楽しんで頂ければ幸いです。





