他国からの使者
日本の汲広がアカツキ領の領主邸で、アントネラや代官のミラトと事務作業をしている頃、執事がやって来て、
「ジロウ様、マムスヌーン王国より、使者の者が参りましたがどう致しましょう?」
マムスヌーン王国、結構遠い国である。
以前、平和協定ブームがあったが、その範囲外、インジスカン王国とは直接は、あまり国交のない国である。
「すぐ行くから応接室へお通ししろ。一応、お茶と茶菓子も忘れずにな」
お茶はともかく、茶菓子を出す指示を出すのは汲広らしかった。
汲広は、今取りかかっている事務作業に切りを付けて、応接室へ向かった。
「マムスヌーン王国から参りました、アルザヘ・ニッキムーンと申します」
「私はこの地の領主、ユウセイ・フォン・アカツキ伯爵だ」
自己紹介をする汲広と使者のアルザヘ。汲広は、ややこしいのでアカツキの名を名乗った。
「この度は、国王から使命を託されて参りました」
「使命を託されたのなら、王都へ行くべきなのでは?」
汲広には分からなかった。
汲広で用が足りる、国王からの使命って何かあるだろうか?
「アカツキ様は、以前、平和について、熱く語られたとか。
そのことが隣国から伝わり、どういうことが話されたか知りたいと我らの国王が仰せで」
「あぁ、それくらいのことか。それなら原稿があるから渡せるぞ。何部欲しい?」
「いえ、書き写すならこちらでしますから1部で結構です」
「いや、筆耕屋に頼まなくともほとんど手間がかからずに渡せるのだが」
「それでは5部程お願いします」
「5部か.分かった。今用意するからくつろいでいてくれ」
汲広は自室のコンピュータでその、日本語学校で演説したときの台本を5部コピーした。言わば、”アカツキ・ペーパー”の原本である。
汲広は客間へ戻り、プリントアウトした5部の”アカツキ・ペーパー”の入った封筒をアルザヘへ渡した。
「いやはやお早いお戻りで」
「今印刷したものだが、早いし、手間もかからなそうだろ?」
「いやはやびっくりしました」
”アカツキ・ペーパー”の入った封筒を土のう袋の魔法へしまうアルザヘ。
「あと、強力な武器を手に入れるつてを持っているとか」
「あぁ。あるが、これは私の一存では購入相手を紹介するどころか武器について語ることもできん。これはさすがに王都の王や貴族に掛け合ってもらわなければ」
「さすがにそうですか」
汲広は国防部門の貴族ではないのである。自分では判断できないので他の者に話を振った。
「しかし、その交渉相手の使う言葉は王都で学ぶことができるぞ」
「それは本当ですか?」
「あぁ。あれは秘匿にせず、国外の者も受け入れている学校だからな。
来期にでも通訳候補を王都へ送ることをお薦めするぞ」
「これはありがたい情報を。これは早速国元へ戻り、報告せねば」
「武器を購入するのもいいが、先ほど渡した文書の内容は争いごとのない平和な国を作りましょうというものだぞ?」
「戦力を持っていませんと強い国に攻め込まれます。牽制の意味も込めて武力は持っていませんと不都合があるのです」
「まぁ、道理だな。で、他に何かあるか?」
「いえ、十分有益な情報を頂きました。要件は以上で御座います。ありがとうございました」
知りたい情報は聞けたので、帰っていくアルザヘ。そして、執務室に戻った次郎は、
「しかし、何気ない文書が重宝されることもあるものだな」
「どうしたのですか?」
アントネラもミラトも何の話か分からなかった。すると汲広が、
「いや、日本語学校で話した内容のメモが、”アカツキ・ペーパー”とか名前がついて、随分と重宝がられていて、何が重要になるか分からないものだなと思ってな」
「あぁ、”アカツキ・ペーパー”ですか。私も一度読んでみたいものです」
「そういえば、渡したことがなかったな。明日にでも原稿を渡そう」
「いただけるのですか?ありがとうございます」
「いや、コピーはあまり手間がかかるものではないのでな。それに、私の下で働く者が知らないのもおかしな話だからな」
そう言って、書類仕事に戻る汲広。すると、ミラトが
「そういえば、時差ぼけは治りましたか?」
「あぁ、時差ぼけはもう治ったぞアントネラはどうだ?」
「はい。私も大丈夫です」
「書類仕事も随分先のものまで進んでいますし、明日から領地の視察に行きませんか?」
「そうだな。早めに動けば見回れる領地も多くなるから私は賛成だ。アントネラはどうだ?」
「私も賛成です」
「それでは部下に指示を出してきます」
そう言って、ミラトは部屋を出て行った。明日から領地視察をすることが決定したのだった。
お読み下さりありがとうございます。
地球や日本、リアルな世界とこの話での世界観は同一ではありません。また、ぷい16が理想とする世界観でもありません。フィクションとして楽しんで頂ければ幸いです。





