時差ボケ
「それでは扱いの難しい案件をこちらにくれ。手分けしてやろう」
打ち合わせが終わった後、ミラトが執務机に戻り、汲広とアントネラが来客用のテーブルで書類仕事を始めた。
「そういえば、住民達が、自宅に電気を引き始めましたが…」
「あぁ、そちらは申請の出ている者は構わん。
ただ、申請を出していない者は申請を出すように言っておけ。
それと、電気を引くなら工事を手伝った者を優先にな」
「あれだけ財を投じて税も上げず、住民に使わせるのですか?」
「あぁ。あれは私のわがままもあるからな。それに、余っているんだ。
住民の生活が豊かになるようにしても大丈夫だろう。
但し、発電と消費のバランスには目を光らせておくようにな」
今は家に電気を引いている者は少ない。
これから工事が進み、発電が消費を上回っているうちはいいが、消費が上回ったら何か対策を考えなければいけないからである。
「あと、ランタンがあったろ、あれの貸し出しにも気を配ってくれ。あれも工事を手伝った者を優先にな」
家に電気を引くまでの間、明かり取りに充電式のランタンを貸し出しているのである。
「それから、雨漏りのする家には電気は引けないと通達しておいてくれ」
「雨漏りですか。それは何故ですか?」
「雨は電気を通すんだ。一応各家々にブレーカーを取り付けるように指示は出しているが、あまりひどい雨に晒されるとこの領主邸も、ハーパヤ全体が停電するんだ」
「はぁ、電気とは扱いが難しいものですなぁ」
「それから、昔より明るいからもっと働けるだろうと住民に労働を強いるのは基本、ナシだ。そういうことの為に電気を引いたのではないからな」
「こう言っては何ですが、クミヒロ様は住民に甘いですな。あれだけ私財を使っておきながら、住民の税を上げないとは」
「何もこれからも上げないとは言っていないぞ。
それよりも住民の生産性を上げてやって、その余裕分を税として貰いたいんだよ。
そうすれば、住民も、こちらの管理側も両得だからな」
「ジロウ様のお考えは深いですな。私はそこまで思い至りませんでした」
「まぁ、それだけ伸びしろがあるから言えることだがな」
話をしながらも書類仕事には手を抜かない3人。
昼食前にはその日の書類仕事は粗方片付いた。
「やはり、手分けして進めると、早いものですな」
「明日しようと思っていた書類はもう届いているか?」
「はい、早いものはもう届いております。それも今日、やってしまいますか?」
「2時までにしよう。あとはお前の裁量でできる書類を続けてやっておいてくれ。こちらは時差ボケで辛い」
「あぁ、時差ボケと言えば、あの、こちらが12時なのに、日本に行くと夜中の12時というアレですか」
「あぁ、そうだ。2時まで仕事をしたら、こちらの感覚では夜の2時まで仕事をした換算になる」
「それはお辛いでしょう」
「いや、まだそうでもない。電気があると、夜まで作業ができる。慣れっこになっているからな」
「電気とはある意味恐ろしいものですな」
「同感だな」
昼食を挟み、1時間仕事をして、
「それでは後を頼む。しかし、お前に残業をさせているようであまり良い気分ではないな」
「事情は先ほど聞きました。どうかお気になさらずに」
「私もできる限り早めに時差ボケを克服したいものだ。
それと、残りの案件を分かるようにしておいてくれ。早くに目が覚めると思うのでな」
「焦らなくても視察にはまだ日があります。まずはご自身のお体を大事にして下さいませ」
「気遣いありがとう。それでは気兼ねなく休ませてもらうとするよ」
「そうして下さいませ」
そうして、汲広とアントネラは風呂へ入った後、睡眠を取るのであった。
*
次の日、案の定、インジスカン王国王国時間で夜中の4時に目を覚ました汲広。
朝の支度をして執務机でミラトが分けておいてくれた書類を処理する。
すると、アントネラも身支度を調え、執務室へやって来た。
二人で書類仕事をする。
時差ボケ解消はまだしばらくかかりそうであった。
お読み下さりありがとうございます。
地球や日本、リアルな世界とこの話での世界観は同一ではありません。また、ぷい16が理想とする世界観でもありません。フィクションとして楽しんで頂ければ幸いです。





