日本の汲広、旅立つ
インジスカン王国のアカツキ伯爵夫妻が日本の汲広たちに会いに来たのは期末テストが終わった直後であった。
それから、汲広、アントネラはインジスカン王国のアカツキ伯爵夫妻役をするべく、記憶を探り、やっとこさ二人の役を出来るであろうレベルに達したと思う日本の二人。
汲広の学校でのテストの結果は偏差値の真ん中。まぁ、普通であった。
そして、終業式。通知表をもらう。
数字の大きい方が良い5段階評価でたまに4があるが、ほとんどが3であった。
汲広は一旦自宅へ帰り、アントネラを伴って、隣にある実家へ行くのであった。
「ただいま」
「あらまぁ、お帰りなさい」
母の朋子が出迎えてくれた。
汲広はテストの結果と、通知表を母に見せるのであった。
「あらまぁ。平均ばっかり」
朋子は褒めてよいのやら怒ってよいのやら分からなかった。
「まぁ、あなたたちは日頃、忙しいから仕方ないわね」
朋子は、ここ1年ちょっとの汲広の生活の異常さに、怒るのもかわいそうになり、慰めるのであった。
「でも、この成績で旅に出すのは不安なのよね」
汲広は、インジスカン王国へ行くのは旅だと説明している。
「宿題は全部持って行くし、ステファニアの実家の顔も立てないといけないから」
インジスカンのアカツキ伯爵はもう独立している。
おまけにステファニアの実家は子爵で地位だけを言えばにアカツキ伯爵が上になっている。
実家の顔を立てるも何も無いのだが、汲広はこう言い訳をしたのだ。
「しかし、ステファニアさんの実家と行き来できるなら、あちらのご両親にも式に出て欲しかったわぁ」
「母さん、前にも言ったろ?昔は難しかったんだって」
昔は分身の術といううまい言い訳が出来なかったというのも大きいが、あえて伏せておく。
母との会話を一区切り付け、自宅に戻る汲広。
そこで普段着に着替え、土のう袋の魔法に教材を一切合切詰め始めた。
インジスカン王国では忙しくなるだろう。
魔力消費が無くなったとはいえ、あまり頻繁に帰ってくるつもりはない。
着替えはアカツキ伯爵のものを使う。
教材を詰め終わったら、とっぷりと日が落ちていた。
自宅の戸締まりを確認して、再び実家へ戻る汲広。
「ありゃ、まぁ、お兄ちゃんって、私より成績悪い?ねぇ悪いの?」
「朝里、止めなさい!お兄ちゃんだっていろいろあるのよ!」
妹の朝里は良い点もあり、そこそこ成績優秀であった。
平々凡々の成績の汲広にちょっかいを出す妹を母が急いで止めた。すると、
「ただいま。今帰ったぞ」
父の修司の帰宅である。
修司は着替え、少しくつろいだ後、汲広の成績を見て、
「お前も苦労したんだな」
そう言うだけであった。
家族で順々にお風呂を済ませ、夕食となった。すると修司が、
「そういえば、お前達、いつ発つんだ?」
「夕食を食べてすぐかな?」
「それは急だな」
「あっちは時差があるし、すぐには動けないだろうから、早めに着かないと」
「お前達も色々大変だな」
それからはいつも通りの夕食であった。
夕食が終わり、一息ついて、家族の目の前で汲広が掃き出し窓の魔法を使い、
「それでは、父さん、母さん、朝里、行ってくるよ」
「気をつけてな」
「行ってらっしゃい」
「帰ってこなくてもいいよ」
「朝里、そんなこと言うもんじゃありません!」
結局最後まで妹にからかわれる汲広であった。
*
日本とインジスカン王国とは時差が12時間ある。
日本で夜の9時に出発した汲広は、インジスカン王国には朝の9時に着いた。
汲広とアントネラはまず、自室へ行き、着替えた。
日本の服は、インジスカン王国では奇異で、目立つのである。
そして、執務室をノックした。
「ミラトだ。今頃誰だ?」
「汲広とアントネラです」
「おぉ、伯爵夫妻でしたか」
急いで扉を開けるミラト。
「すみません。今、仕事を一段落させますのでお掛けになってお待ちください」
机に向かい、急いで切りの良い所まで仕事を済ませるミラト。
「お待たせしました」
「日本から来た岡塚夫妻です。宜しくお願いします」
「アカツキ伯爵夫妻にそうかしこまれて恐縮ですが、ここの代官をしておりますミラト・バハーミッツです。こちらこそ宜しくお願いします」
そして、領主の仕事や、領地の視察の予定を詰める3人。
「ここもまだ行っていないはずだよな。ここも寄れるか?」
「ちょっと慌ただしくはなりますが、可能です」
「それでは、ここも寄れるように手配してくれ」
「畏まりました」
インジスカン王国のアカツキ伯爵は忙しい。
まだ寄れていない町や村がかなりある。
できるだけ満遍なく見て回りたい汲広であった。
お読み下さりありがとうございます。
地球や日本、リアルな世界とこの話での世界観は同一ではありません。また、ぷい16が理想とする世界観でもありません。フィクションとして楽しんで頂ければ幸いです。





