歓迎できない動き
語学実習では、もう自己紹介が終わって、互いの国をよく知ろうということで、テーマごとに話し合ってもらっている。
それで、議題のテーマを募集することもあるのだが、毎回没にしているテーマがある。それは、武器や防具について。つまりは自衛やら戦争のことである。
しかし、そろそろ抑えきれなくなっており、悠生は悩んでいた。
(戦闘や、戦争、自衛なんかをテーマにしたら、インジスカン側からは魔法について。
まぁ、これは良いんだが、日本側からは銃火器の話がインジスカン側に流れるんだよなぁ。
でも、交流を深めると、いずれバレてしまう。ここは講義と平行させて、そろそろバラす時期なのかなぁ)
今は午前中。講義内容やら、授業用のプリントを作る時間である。
(ここはステファニアに相談するか)
悠生はステファニアの部屋に行った。
「ステファニア、居るか?」
「はぁい。居ますよ。どうぞ入って来て下さい」
悠生はステファニアの部屋に入り、ステファニアに率直に意見を求めた。
「インジスカンでも戦争は起こります。
確かに銃火器がインジスカンに流れると、戦争というものは様変わりすると思います。
しかしいずれバレます。教えないわけにはいきません。
ここは語学は一旦中止にして、戦争とは、自衛とはというテーマで悠生の意見を話してはどうですか?」
そこで、ステファニアの意見を聞き、語学を中断して、戦闘行為についての授業に切り替えることにした。
これは、インジスカン側の日本語教育も、日本側のサーメイヤ語教室も両方である。
語学実習でも、武器の種類より、戦闘行為に関する事情や、自国と他国の関係、平和とは何かということを先行させて、あまり広めたくはないが、武器の種類はそれが終わってから議題に出すことにした。
悠生も一般的な日本人。戦争は嫌いであった。そして、その日の授業で、
「今日は語学の授業は一時中断して、皆が知りたがっている戦闘行為についての授業をしたいと思う」
悠生が日本には、殺傷能力の高い武器があることを生徒に話し、日本語教室の生徒は湧いた。しかし、悠生は水を差す。
「確かに、日本、いや、地球には、殺傷能力の高い武器が多数存在する。
もし、インジスカンがその武器を得て強くなったとしよう。
しかし、相手国もバカじゃない。周辺国も地球から殺傷能力の高い武器を買うことに躍起になることだろう。
そこで、双方の国が睨み合いだけで、戦争に発展しないことが望ましいが、いざ戦闘になれば双方に多大な被害、死者が出ることが予想される。
一時的な優位で安易に戦争をふっ掛けたり、相手国の挑発に乗ると、この世界が滅んでしまうことを念頭に置いて、これからの授業を受けてもらいたい」
厳しい言葉だが、事実である。まぁ、ミサイルやら電子機器満載の飛行機やら、船舶、基地、レーダーなどは高額すぎて買えないし、もし、買えたとしても使う能力が元から無いためそちらの心配は無いだろう。
しかし、銃やライフル、機関銃などは、練習すれば使えるようになる。ローテクな武器を輸入するだけでも世界は変わってしまうのである。そこに悠生の恐怖はあったのである。
*
悠生の心配は当たっていた。
商人の生徒の中には、インジスカンは支店で、国外に本店を持つ商人や、貴族の中でも他国に内通する者もいた。
この授業で、殺傷能力の高い武器が地球にはあるらしいという情報がインジスカン王国の周辺国に広く伝搬されることになった。
一応悠生の心配した世界が滅ぶという情報も付加して伝えたのだが、伝搬途中で問題なしとされ、国には”地球には強力な武器があるらしい”という情報だけが伝えられた。
語学実習で、地球には日本の他に百を超える国があり、それぞれ国の事情があることも伝えられている。
語学の授業内容も隠れて周辺国に伝わっている。
日本に武器を注文すれば悠生やインジスカンにバレてしまうかも知れないが、周辺国は、その他の国ならば?という考えに至った。
インジスカン側の生徒も日本に行ったことがある。掃き出し窓の魔法を使える者もおり、悠生が知らないところで悠生が教えた日本語を使って生徒以外が日本へ行き、外国へ密出国をした。
一度地球の外国の地を踏めば、掃き出し窓の魔法というものは、日本経由しなくとも直接外国へ行き来できるのである。
インジスカン王国のあるニーヘロイ星の諸国は暗躍した。我こそが先に武器を手に入れ、優位に立とうと。
お読み下さりありがとうございます。
地球や日本、リアルな世界とこの話での世界観は同一ではありません。また、ぷい16が理想とする世界観でもありません。フィクションとして楽しんで頂ければ幸いです。





