新居完成
「隣の空き地、ずっと工事してるね」
「どうも家が建つらしいのだが、誰が建てているのやら」
汲広と父、修司の会話である。
いつの頃やらか空き地だった隣、
汲広が小さい頃は、よくそこで修司とキャッチボールやら、自転車の練習をしていた。
修司の家の二倍程の面積のある空き地。そこに3階建ての家が建っている。
外装はもうすでに終わっており、内装も終わりかけている。建築現場には誰が家を建てるだとか建築会社は誰だとか書いたボードが必ずあるのだが、この二人、そこまで見ていなかった。
程なくして内装も終わり、防音シートや足場も取り除かれ、家具が運び込まれた。
そろそろ新しい家主さんが挨拶に来るかと思っていたが、一向に来る気配がない。ひょっとすると挨拶まで気が回らない都会の人かな?と、これから仲良くやっていけるのか少し不安になっていると、電話がかかってきた。
「もしもし、岡塚ですが」
「どうもお世話になっています。網弾野です。ご無沙汰しております」
「あぁ、網弾野さんですか。こちらこそご無沙汰しております」
「今日は例の特別法案の件でお電話差し上げました」
「と、言いますと?」
「あの特別法案には、”お二人の住居を日本国が提供する”という文言がありまして、新居の準備が出来ましたのでまずはお電話でご報告をと思いまして」
「新居ですか?」
「新居です」
汲広はマズイと思った。新居が遠くなら学校に通うのが遠くなる。もっと遠いと転校になってしまうからだ。
「学生の身分で新居とはまた… マンションやアパートですか?」
「いえ、一軒家です。登下校の都合もありますから、ご自宅の近所に家を建てたと報告が上がっております。近いうちにご案内致しますので詳しいことはその時に」
「はぁ、分かりました」
会う約束をして電話を切った。数日後、
「ごめん下さい、網弾野です」
「はい。いらっしゃい。どうぞお上がりください」
網弾野と不動産業者だろうか、二人は家に上がってリビングに通された。
「で、新居の件ですが、お隣の建物です。こちらが鍵になります」
「え、隣ですか!」
「家より立派な家に!」
仰天であった。
床面積なら修司の家の2倍はあろうかという一軒家に住んでもいいということなのである。
かくして鍵をもらい、業者さんに建物の説明を受けた。家具も備え付けられており、すぐにでも住める状態であった。一通り説明を受け、帰っていく網弾野と業者さん、すると、修司が
「家族会議を行う」
かくして岡塚家で家族会議が開催された。
「二人は折角なので、家に住まわせて貰いなさい」
修司の意外な言葉だった。
「そうさせて貰いなさい。食事や風呂は、こちらで済ませるといいわ」
母の朋子も同意見であった。
かくしてお隣に引っ越しとなった汲広とアントネラ。アントネラは地球での暮らしが長くない分、私物はあまりなかったのですぐに移動は済んだ。汲広は、つい最近習得に成功した土のう袋の魔法に一旦部屋の荷物を全部入れ、新居の自室にて取り出した。
「前の家より2倍くらい広さがあるなぁ」
そう、広さは2倍ある。そして、ベッドは無い。寝室は別なのである。荷物を運び終えた汲広は、アントネラの部屋の様子を見に行った。
「こちらももう済んでしまいました」
時刻はもう夕方。二人は鍵を閉め、実家へ戻った。
隣の実家で風呂や夕ご飯や、歓談をした後、新居行った。
「僕は宿題やら明日の準備があるから自由にしてなさい」
「じゃぁ、汲広の部屋で待ってる」
汲広は黙々と宿題を済ませ、明日の支度も終えた。
汲広とアントネラはリビングに下り、少し歓談しながらお茶を楽しみ、二人揃ってダブルベッドの備え付けられている寝室へと向かうのであった。
*
その後が大変であった。
住んでいる所はお隣さんで、住所も1号違い、ただそれだけだったのだが、
修司が、「こういうことはちゃんとしてなさい」と、
住民票の書き換えやら、学校への手続きなど書類仕事、一応引っ越しなので、菓子折を持ちながら、近所へのご挨拶回りが大変であったことをここに書き記しておく。
お読み下さりありがとうございます。
地球や日本、リアルな世界とこの話での世界観は同一ではありません。また、ぷい16が理想とする世界観でもありません。フィクションとして楽しんで頂ければ幸いです。





