西洋医、後輩を連れて来る
”年間パス”
日本から海外に行くには、空港なり港なりで入出国審査をして海外に行き来する。
しかし、こと、インジスカン王国へ渡るとなると、空港や港に寄る必要はない。
移動は魔法である。
掃き出し窓の魔法が使える者に頼み、入出国審査なしで行き来できてしまう。
その、入出国審査をどうしようかと日本政府とインジスカン王国首脳陣が考えた結果出来たのが、”年間パス”である。
厳しい審査を受けて、”年間パス”を手にした者が、入出国審査なし、荷物検査なし、入出国記録なしでいつでも日本とインジスカン王国間を行き来できる制度である。
掃き出し窓の魔法がある以上、入出国審査など土台無理な話である。
日本とインジスカン王国間の苦肉の策である。
もっとも、汲広やアントネラ、悠生やステファニアは他の法律で日本とインジスカン王国間を行き来するのだが。
悠生とステファニアと言えば、スキカに魂と体を1つずつもらってもう一人ずつ、2ペア居るのだが、インジスカン王国に長く2ペア居るため、インジスカン王国側から説明を求められた。
分身の術で… と、苦し紛れな答弁でその場は乗り切ったが、特殊事例なので、インジスカン王国に特措法ができた。
”アカツキ伯爵夫妻は2組居り、その地位や財産、その他権限を悠生は悠生と汲広共通、、ステファニアはアントネラ、ステファニア共通であり、2人で1人の扱いをする”と。
日本も汲広たちの特別立法を改正して、”汲広と悠生は1人の人間として、アントネラ、ステファニアは1人の人間として、国籍、地位、財産その他を共に共有する”という文言が付け加えられた。
これで、悠生が2人居ること、ステファニアが2人居ることを誤魔化さずに済むようになったのである。
*
工業団地の西洋医、今では治癒魔法師としても、地位を確立し始めているのだが、彼、多々身省語は、後輩とよく電話をし、面白いからとこちら、インジスカン王国で、一緒に医療をやろうとインジスカン王国への移住を強く勧めていた。
すると、その後輩は、”一度会って直接話がしたい”と言われ、企業に張られた掃き出し窓を使って日本に渡り、直談判に出かけるのであった。
「多々身さん、電話では最近よく話していますがご無沙汰しております」
「多田之助君、お久しぶり」
後輩、名を大倉多田之助と言うが、省語が何故、インジスカン王国行きを強く勧めるのか意味が分からなかった。
省語は、
「インジスカン王国には治癒魔法というのがあるのは知っているかな?」
「あぁ、魔法ですか。最近大学に魔法学とかできたあれの延長ですね。私に言わせれば、怪しいことこの上ない」
「まぁ、そう言わずに資料を見てくれ」
そう言うと、インジスカン王国から持って来た大量の資料を多田之助に見せた。
その資料に載っている内容は、西洋医学ではあり得ないアプローチで患者を治す試みが記されていた。
「え、これ、本当ですか?」
「本当だとも。私も、西洋医学を学んで、医師免許まで取って医療に励んできたが、治癒魔法は画期的だ。私も治癒魔法は学んでいる最中だが、奥が深い。使いどころを間違わなければ医療は劇的に進歩すると確信しているよ」
「これが本物かどうかは私には判断できません。ですけど多々身さんの希望です。今行っている病院には長期休暇をもらって現地で実際に見てみようと思います」
「おぉ、そうか。見学に来てくれるか」
「それでは時期が来ればそちらにお邪魔したいと思います」
そうして話は終わった。
省語は、インジスカン王国へ帰ると、汲広と面会し、大倉多田之助のことを伝えた。
汲広に伝えるのは早いほうが良い。
自分も身辺を探られた身として、多田之助を早く見てもらい、早いうちに魔術医療を授けてもらおうと思ったからだ。
「分かりました。魔法医術を教えるにたる人物か、調べさせてもらいましょう」
汲広の行動は早かった。
日本での多田之助の人となりを調べ上げ、省語の推薦もあって、会う前から、汲広は多田之助に魔術医療を授けることを決意するのであった。
*
時は流れて多田之助がインジスカン王国へやって来た。
省語と多田之助の話しもそこそこのところに多々身医院に汲広がやって来た。
「あなたが大倉多田之助さんですね。話は伺っております。あなたに魔術医療を授けましょう」
と言って、汲広は多田之助の頭に手をかざし、多田之助の頭に直接、魔術医療を叩き込むのであった。
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地球や日本、リアルな世界とこの話での世界観は同一ではありません。また、ぷい16が理想とする世界観でもありません。フィクションとして楽しんで頂ければ幸いです。





