【海底帝国裁判2】
【ロベルト】
「意義あり」
閉廷しようとした時、その声が響く。
その声に驚き、エリザベータが声の主の方を振り返る。
【エリザベータ】
「お父様?」
声の主、帝国の王。
ロベルト・アネーリオに発言権が移されていく
【裁判長】
「ロベルト・アネーリオ陛下」
【ロベルト】
「わしの娘が殺されるのを黙って見ていろというのか?裁判長?」
【裁判長】
「残念ですが、姫様のご意向ですので」
【ロベルト】
「貴様も愚かだな、エリザベータ、何故その男が恋しい?他にもいい男などこの海にたくさんいるではないか?」
【エリザベータ】
「あの人は、やさしい目をしていました」
【ロベルト】
「エリザベータ、だから貴様は愚かだと言うのだ、人間に何人の人魚が殺されたのか忘れたのか?」
【エリザベータ】
「……それは……」
下唇をかみながらエリザベータがうつむく。
そしてエリザベータは思い出していた。
かつ人間に恋した人魚が陸に出て行き。
一人を除いてはみんな死んでしまったこと。
人魚が捕らえられて殺されたことや、逆に人魚が人を殺した歴史。
簡単には修復できない溝が人魚と人の間にあるということを。
【ロベルト】
「……特例767条の申請をします」
ロベルトがそう告げた時、法廷内がざわめく。
そして裁判長がゆっくりとロベルトをなだめ始める。
【裁判長】
「お言葉ですが、ロベルト王、あなたは自分が何を言っているのかお分かりですか?」
そういわれてロベルトは目を伏せながら、悔しそうに
【ロベルト】
「それは当然、娘が海の底に沈められるか、泡となるか、その差しかないことも、よく分かっている」
とぎれとぎれ言葉を続ける。
そう話しながら時折小刻みに肩を震わせている。
【裁判長】
「あの特例はここ数百年、リスクがあるとして禁じられています、それに、執行するには王の承認がなければ……」
裁判長をさえぎるようにロベルトは割ってはいる。
【ロベルト】
「現時刻を持って承認する、ワシは、娘がみすみす死ぬのを見ておれんのだ、ワガママだとは分かっている、エリザベータ、お前にはチャンスをやる、これでよかろう」
そういい残すと、ロベルトは退席。
エリザベータの両脇を抱えるように、兵士が囲む。
【裁判長】
「……以上、ロベルト王の承認により、特例767条を執行する、エリザベータ姫は48時間以内にこの国を追放されます、そして、陸上での生活に移行させていただきます」
声を震わせながら、裁判長が判決文を読み上げる。
【エリザベータ】
「あたしは一体どうなって?、裁判長?何のことか私には分かりません」
何が起こるのかわからず、戸惑っているエリザベータ。
しかし、この内容は王族と司法機関の人間しか知りえない内容。
その守秘性を守るために
【裁判長】
「以上をもって閉廷とする」
裁判長はすぐにこの法廷を閉廷させる。
エリザベータは手錠をかけられ、法廷からとある所に連れて行かれる。