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あおいと俺  作者: FATMAN・BAGGIO
21/22

【ヒミツの夜】

家についてから。

俺とあおいは一つの課題を抱えていた。


それは、姉のみやに話すタイミング。


あおいの話で分かったのは、あおいが消えてしまっていたら。


俺の記憶からも、みやの記憶からもあおいのことが消えてしまっていたらしい。


でも、真実をみやに伝えるのはとても勇気がいるし。


もしかしたらみやは人間以外の女性に弟を取られるのを嫌って。

この家を追い出されるかもしれない。


あおいが、そう心配したのもあって今日一日はみやに黙っていて。


タイミングを見て二人そろってうちあけよう。


と言う結論に達していた。


お互いに不自然な行動もとらず。


今までどおりを装いながら。


夜を迎えていた。


ものすごく、個人的に寂しい感覚だった。


好きな人は目の前にいる。


でも、気軽に触れられない。


夕食後。

肩を抱きたい。

とか

もう一度キスしたい。


そんな感情が渦巻いていたけれど。


今はガマン。


今はガマン。


そう繰り返しながら。


今を迎えていた。


なんだか、好きな人と一緒に暮らしているはずなのに。


少し遠くにいるような切なさがあった。


また、あした、あおいとデートしよう。


そう諦めながら布団を頭までかぶった瞬間。


部屋のふすまが開く音がした。


何が起こったのかとその方向を見ると。


あおいがぽつんと立っている。


【あおい】

「こんばんは」


【恵】

「こんばんは」


そんな風に挨拶しながら二人とも小声になっていた。


【あおい】

「となりに行っても良いかな?」


【恵】

「うん」


あおいはニコニコしながらとなりに座る。


【あおい】

「今日は声が戻ってから、少しひやひやしたね、でも、いつかはみやにもちゃんと説明しないと」


【恵】

「うん、そうなんだけど、今からだともう遅いしね」


【あおい】

「そうだね。でも、いつ話そうか?」


【恵】

「そうだな、明日の朝とか?」


【あおい】

「それが良いね、今日はね、いつもどおり茶の間で寝てしまうのがなんだかとっても寂しくて」


【恵】

「そうだったんだ」


あおいがそういいながら、俺の手を握る。


【あおい】

「せっかく、恵の彼女になれたのに、同じ家にいるのに、どうせだったらもっとそばにいたいなって」


【恵】

「そっか、そういってもらえるとうれしいよ」


【あおい】

「それにもっとそばにいたくて」


【恵】

「そっか」


俺はうなずきながら、静かにあおいの肩を抱いた。


沈黙が部屋を包む。


俺の呼吸する音と。

あおいの呼吸の音。


後は家近くにある海の波の音だけが。


響く空間。


あおいが話せなかったときからなれているせいか。


あおいとこうして黙って座っていることに何の抵抗もなかった。


あおいが黙って、顔を近づける。


俺はそれにこたえて、優しくキスをする。


あおいは嬉しそうな顔をする。


その嬉しそうな顔を見てると、もっとキスしたくなって。


何度もキスをしていく。


何度も、何度も繰り返していく。


何回かキスしたあとで。

夕方の告白の話題になる。


【あおい】

「人魚だったわたしを愛してくれただけでなく、こうして受け入れてくれたことがとっても嬉しいよ」


【恵】

「あおいが人魚だったことなんて関係ない、あおいが俺のことを好きでいてくれる、だったら愛し合うのは当然だと思うんだ」


【あおい】

「恵はやっぱり優しいね、小さなときと変わってない」


【恵】

「そういえば、夕方色々話してくれたときにその話をしてたね、あおいには悪いんだけど、俺は覚えてないんだ」


【あおい】

「それはそうよ、わたしはあの時、息が戻りかけていたあなたに記憶を消す薬を飲ませたし」


【恵】

「そうなんだ、でも、驚いたよ、人間に恋した人魚が泡になるって本当だったんだね」


【あおい】

「そのことは人魚の方が逆に知らないんだけど、どうして恵は知っていたの?泡になるって?」


【恵】

「子供のころから読んでる童話に『人魚姫』ってあってね、そのお話に出てくる人魚姫は泡になって消えてしまうんだ」


【あおい】

「そうなの、でもおかしいわね、帝国の中でそのことを知っているのは王だけ、あとは司法関係者だけのはずなのに」


【恵】

「アンデルセンって言う童話作家が書いた話なんだけど、アンデルセンが人魚だったとか?」


【あおい】

「それはないはずだわ、今まで人に恋をして陸に言った人魚は何人かいるけれど男の人魚は海の上に上がってくることはないはず……でも……たしか……」


【恵】

「たしか?」


【あおい】

「一人だけ、人と結ばれた人魚がいるって話は聞いたわ、もしかしてその作家さんの奥さんが人魚とか?」


【恵】

「でも、アンデルセンは生涯独身を通してるんだ、奥さんはいなかったはず」


【あおい】

「奥さんまで行かなくても、人魚と恋をした人なのかもしれないわ」


【恵】

「そうかもしれないね、だからそのことを童話にしたのかもね」


【あおい】

「わたしは二人目になれて本当に良かった、恵がわたしを愛してくれなかったら、今頃は……」


【恵】

「実は、二日前くらいから好きだって言いたかったんだ、でも、それが原因で遠い国に帰るって言われるのが怖くてさ」


【あおい】

「そうだったの、わたしはこの家に来て恵に助けられてから、いつ告白しようかずっと悩んでたの」


【恵】

「そうだったんだ、でも、俺があおいを好きなことが、結果としてあおいを助けることに繋がったんなら、俺は嬉しいよ」


【あおい】

「うれしい、本当に嬉しい、ありがとう」


あおいからのキス。


さっきとは少し違う優しくてあたたかいキス。


そのキスが終わったら俺からキスをしてまたあおいにキスされて。


やがて、その愛し合うキスが終わったあとで。


俺たちはゆっくりと眠りについて行った。


………………


…………


……


【みや】

「いやあああああああっ、なにしてるのぉ?」


二人で過ごす静寂が破られたのはその6時間後。


朝食の支度を終えて様子を見に来たみやが叫んでいた。


何事かとみやのほうを見るとみやは小刻みにプルプルと肩を震わせていた。


【恵】

「どうしたんだよ?みや?」


【みや】

「あおいちゃんと、恵と……え?……ええ?……えええええええっ?」


あおいという名前を聞いて今思い出した。


【恵】

「みや、話があるんだ」


【みや】

「あぁん?卑猥か?」


【恵】

「まぁ、落ち着いてくれ」


【みや】

「落ち着いてなんかいられないわよ、あんたもしかして悲鳴も上げられないあおいちゃんを無理やり、なんてことを」


【恵】

「それは違う、色々あって、あおいもしゃべれるようになったし、話したいことがあるんだ、頼むから落ち着いて聞いて欲しい」


【みや】

「はなせる?えと、その、話が見えないんだけど?」


【恵】

「これから説明するよ、あおいの口から説明した方が良いこともあるだろうから、あおいも説明を頼むよ」


【あおい】

「うん、みやさん、色々お話したいことがあるんです、聞いてくれますか」


【みや】

「あおいちゃんが話してる……信じられない……」


【あおい】

「話せるようになった理由も含めて、お話したいんです、いいですか?」


【みや】

「は、はぁ」


みやにも、昨日の夕方話したことが伝えられる。


あおいは人魚だったこと。

薬のせいで話せなかったこと。

そして、それをどうやって元に戻したか。

そして俺に対する気持ちと、この先どうやって暮らして行きたいか。


それらが語られた後。


みやは信じられないと言った表情で俺を見つめながら問いかけてくる。


【みや】

「恵、あんたはあおいちゃんのことが好きなの?」


【恵】

「みやも何であおいが話せるようになったか聞いただろ?俺はあおいのことが好きなんだよ」


【みや】

「それは、信じていいのね?」


【恵】

「うん」


【みや】

「そう、その覚悟さえ聞ければお姉ちゃんは何も言うことはない、ただ言いたいことは一つだけ」


【恵】

「うん」


【みや】

「恵も男なんだから、責任とってちゃんとあおいちゃんを幸せにするのよ?もしあおいちゃんを泣かすようなことがあったら、お姉ちゃんが許さないんだから」


【あおい】

「わたしと恵が付き合うの認めてくれるんですか?」


【みや】

「弟があおいちゃんを好きだって言ってるんだもの、それをとめる権限なんてないわよ、これからも仲良くやりましょう」


【あおい】

「はい」


【みや】

「恵は分かった?」


【恵】

「うん、約束するよ」


【みや】

「ならよし、さ、朝ごはん食べるわよ」


みやはそういいながら俺の部屋を出て行く。


俺もあおいに手を引かれて食卓に向かう。


みやの快諾のもと。

俺たちの恋人としての生活が始まった。


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