【キス、そして】
【あおい】
「ん……んんっ……」
唇があおいに触れた瞬間、小さくあおいののどから声が漏れる。
でも、最初はそれに気がつかないくらい、ドキドキしていた。
キスをしたまま、あおいを抱き寄せる、少し力が強かったせいか、抱きしめていたあおいの背中にぐっと力が入る。
その変化に気がついて、慌てて力を緩める。
顔を離して、あおいを自由な状態にする。
戸惑った様子のあおいを見て、少し乱暴だったかな。
そんな気持ちになった。
【恵】
「ちょっと強引過ぎたかな、ごめんね」
そう謝る。
頭を下げて、あおいをもう一度見たとき。
あおいはとても不思議そうな顔をして自分の体を見つめている。
【あおい】
「あ……あああ……ああああ……」
あおいの体内から、振り絞るようにかすかに声が出ているのに気がついた。
【恵】
「あおい……声が出てる」
そう伝えた瞬間、あおいの目からたくさんの涙が溢れていた。
そのまま俺の胸に顔をうずめあおいはしばらく泣いている。
さっきのような恐怖に満ちた涙ではなく、何かがこみ上げてきて、嬉しさで泣いている。
【あおい】
「ありがとう……ほんとうにありがとう……ありがとう」
涙を流し続けながら、あおいが感謝の言葉を繰り返す。
あおいを抱きかかえ。嬉しいやら、驚いたやらでどぎまぎしていた。
あおいの泣くのが収まってから、色々語られた。
【あおい】
「わたしはもともと、人間ではなかった、人魚の姫だった」
いきなりのそんな告白を受けて衝撃を受けた。
でも、それと同時に、今までの疑問がすべて一つに繋がった。
あおいはだからテレビも知らなかったし、ありふれているソフトクリームやケーキを知らなかったんだと納得した。
その後も、あおいが背負っていたことがあおいの口から語られる。
もし、あの時俺とのキスの中に偽りがあれば、あおい泡となって消えていたこと。
そして今日の日没までにキスできないでいたら、どちらにしろ、泡となって消えてしまっていたこと。
そして更に語られたのは俺が泳げなくなった理由について。
小さかった俺は、おぼれたと同時に、サメに襲われそうになっていた。
それをとめてサメを殺してしまったのも自分の責任、だからあおいが罪に問われた。
そして俺は覚えていないけれど、小さなときに俺とよく話していたと言う。
それが帝国をおわれる理由になった。
と、すべてを打ち明ける。
だから泳げなくなっていた俺を見て自分の責任だと思うようになった。
恋はかなわなくても、もう一度海を愛して欲しかった。
すべてを打ち明けたあとで。
【あおい】
「もし私が人魚だと知ったら、もう好きじゃなくなるのかな?」
そう不安そうにつぶやくあおい。
【恵】
「さっきは、勝手にキスして申し訳ないと思った、でも、それが結果としてあおいを助けることに繋がったのなら、嬉しく思うよ、たとえあおいがそういうものを背負っていたとしても、嫌う理由にはならないと思っている」
俺のその言葉を聞いて、あおいはにっこりと微笑んで抱きついてくる。
【恵】
「自分の命の危険も省みず、こうして会いにきてくれた人魚姫を嫌う理由なんてどこにも無いよ」
俺ははそう告げたあと、あおいを抱きしめ返してもう一度優しくキスをする。
【恵】
「あおい、大好きだ」
もう一度改めて告白する。
【あおい】
「わたしも、大好きだよ、恵」
あおいもそれに笑って応えてくれる。
お互い気持ちを確認したあとで手をつないで帰宅。
これからもずっとずっと一緒にいれればいいなと。
心のそこからそう願った。




