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あおいと俺  作者: FATMAN・BAGGIO
19/22

【あおいとして】

わたしは瞳を閉じる。


心の中は、今すぐにでも逃げ出したいくらいの恐怖と、生き残って、恵君と永久に暮らしたい。

そんな気持ちが入り混じっていた。


目を閉じて、覚悟を決める。


この場でキスするのを拒まれたらわたしに残された時間は、もう無い。


顔に徐々に近づいてくる、恵君のぬくもり。


ぬくもりが近づくにつれてテレーザの言葉が私の頭の中をよぎる。


【テレーザ】

「このキスには条件がある、それは、互いが互いを愛していると言うこと、その条件が守られないときは」


人間のあおいとして過ごしたこの一週間。


いろいろなことがあった。


陸の暑さに耐えかねて倒れてしまった。


そんなとき、わたしを運良く恵君が助けてくれた。


家でお世話までしてもらった。


次の日には商店街にお買いものにも連れて行ってくれた。


そこで食べたソフトクリームはおいしかったし、お香というのもとってもいい匂いだった。


【テレーザ】

「どちらかの気持ちに嘘偽りがある場合は、そのときは…………」


それから、恵君が海を怖がっていることを知ったときはショックだった。

せめて、罪滅ぼしをしようとして、無理にでも海に連れて行った。

みやと水着を選んだり、帰ってからケーキを食べたり。

みんなで行った海水浴も、恵君の泳ぎを上達させるための二人きりの海水浴も。


全部、全部、楽しかった。


もう一度、恵君が泳げるようになって、本当によかった。


恵君が海を愛する人であって欲しい。


その願いに少しでも近づけたと思う。


【テレーザ】

「海の泡となって消えてしまうのです」


その言葉を思い出して、私の心臓は爆発する寸前だった。


速いテンポで、ドクン、ドクンと激しく脈打っている。


そして昨日、恵君に告白した。


本当は、自分がなくなってしまうのが。


泡になって消えてしまうのが。


怖くて、怖くて、しかたなかった。


そんなときに、苦しさが和らげばと思って。


少しでも胸の中に秘めている感情を出していこう。


告白していた。


いきなり想いを伝えたわたしを受け入れてくれた。


恵君の気持ちを全身で感じたとき。


本当に、本当に、この人を選んでよかった。


心からそう思えた。


そして今、わたしのことを優しく、抱きしめてくれている。


やさしい人に抱きしめられて、最高の瞬間だとわたしは思う。


そして……大好きな人の唇が私の唇に触れる。


やわらかい恵君の唇が触れた瞬間、今まで以上のぬくもりが心を満たしていく。


これほどの幸せを感じながら。


心の中のが、あたたかさで満ちている、こんなに、幸せな瞬間になら。


たとえ、泡となって消えたとしても…………わたしは、幸せだ。


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