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あおいと俺  作者: FATMAN・BAGGIO
14/22

【エリザベータの恋】

【エリザベータ】

「そうね、あの人と初めてあったのはもうだいぶ前の夏の日、帝国からはかなり離れたとても陸に近い海でのことだった」


エリザベータは少しずつ思い出しながら話し始める。


【エリザベータ】

「まだ小さかったわたしは、比較的自由に帝国の外に出られた、それにもともと、ほかの帝国の王子にお嫁に行かされるはずだったわたしは、外に出てもお父様にはあまり怒られなかった」


【テレーザ】

「自分から進んで海に出たがるなんて、珍しいお姫様ですね」


【エリザベータ】

「小さなときからおてんばだったの、色々な魚と戯れるのが好きだったし、それにお婆様の話が気になって、よく陸の近くまで出かけていたわ」


【テレーザ】

「お婆様はいったいどんなことをお話ししてたんですか?」


【エリザベータ】

「お婆様はいつも言っていたの、帝国にいれば太陽はあまり見れない、でも、海の上まで行って、水平線に沈む夕日はこの世界で一番美しいって」


【テレーザ】

「それで、姫様は見れたんですか?水平線に沈む夕日を?」


【エリザベータ】

「ええ、初めて見たのは7つのとき、それ以来、夕日を眺めるのが好きで、毎年、太陽が一番きれいに見える夏の時期はこっそり帝国を抜け出して、夕日を見に行くのが楽しみだったの」


【テレーザ】

「さぞ、きれいなんでしょうね」


【エリザベータ】

「ええ、とってもきれいよ、それで、いつもどおり、夕日を眺めに行ったある日のこと、波にさらわれて、海底に沈もうとしていた人間の男の子がいた」


【テレーザ】

「それが、姫様の想い人?」


【エリザベータ】

「そう、そしてその少年は海に沈んだだけではなく、大きなサメの餌食になろうとしていた」


【テレーザ】

「そのままだったら、間違いなく少年は死んでいたんでしょうね」


【エリザベータ】

「ええ、でも、わたしは助けてしまった、少年を守らなきゃと思った」


【テレーザ】

「その助けたときに恋をした?」


【エリザベータ】

「そうだって言いたいけど、実は違うの」


【テレーザ】

「違う?じゃあ、いつ恋をしたんです?」


【エリザベータ】

「わたしが初めてあの少年に恋をしたのはその事件がおきる2年前、少年がまだ浮き輪をしているときだった、幼いわたしはその少年に見つかって焦った、これが帝国にばれたら、わたしの命も危ないと焦った」


【テレーザ】

「法律では厳しく禁じられている、異種との会話をしたと、そういうことですね」


【エリザベータ】

「そう、でも、彼はわたしを見て、嫌悪するどころか、親しく話しかけてきた」


【テレーザ】

「それで惹かれていった」


【エリザベータ】

「ええ、彼は人魚のわたしを差別しなかった、それに帝国でうわさされているように、わたしを捕まえようともしなかった、むしろ、わたしのことについて聞いてきた、わたしを怖がるどころか、友達になりたいと言い始めた」


【テレーザ】

「伝承で伝わっている人間とはまったく違いますね」


【エリザベータ】

「それから2年くらい、二人の間で秘密だったし、楽しみだった、沖合いにある岩の上で二人で話をするのが」


エリザベータは、紅茶をすするとさらに話を続けた。


【エリザベータ】

「わたしは、『人魚がいるとばれたら捕まえられて殺されてしまう』だから黙っていて欲しい、そう約束したし、わたしはもちろん、人間の少年と話しているのがばれてしまえば、帝国から出れなくなるのが分かっていた、だから黙っていた」


【テレーザ】

「まさに秘密の時間だったんですね」


【エリザベータ】

「本当にね、少年はわたしにさまざまなものをくれた、陸のおもちゃや、甘くて黒い飲み物もくれた、彼は、わたしが人魚の姫だと言うだけで尽くしてくれたわ」


紅茶の器を見つめ、少し苦しそうにエリザベータは言葉を続ける。


【エリザベータ】

「でも、彼はでも無茶をしすぎた、その岩にたどり着くには陸の人間が張った金網を越えなければいけなかった、彼はそれを毎日越えてわたしに会いに来てくれた、そんな誠実な彼を見て、わたしは恋をした」


【テレーザ】

「でも、それは帝国では禁じられた恋だった」


【エリザベータ】

「そう、そしてわたし彼を求めすぎた、だから罰が当たった、彼が来る時間が遅かった、だから心配になって金網の近くまで見に行けば、彼は波に飲まれて海の底に沈んでいた、サメに食べられそうになっていた」


【テレーザ】

「海に出た人間の運命さだめ


【エリザベータ】

「でも、わたしはそれを捻じ曲げた、年老いたサメの食べ物を奪い、彼を助けた、そして怖い思いをした彼はもう、海に戻ってこないと思って」


【テレーザ】

「…………」


【エリザベータ】

「彼の記憶を消した、わたしのこと、サメのこと、すべてを消し去った」


エリザベータはそういいながら涙を流す。

手を強く握りながら、小さく震えていた。


【エリザベータ】

「彼は幸せだったかも知れない、でも、わたしにとってはとっても辛いこと、自分のことを忘れられると言うことが、どれほど苦しいのか、そのとき初めて知ったわ」


【エリザベータ】

「それだけじゃない、彼にはとっても残酷なことをしたかもしれない、あれほど海が好きだった少年に怖い記憶を植えつけてしまった」


【テレーザ】

「その少年に会って償いをしたいと?」


【エリザベータ】

「償いではなく、想いを伝えたい、そのほうが正しいと思う」


【テレーザ】

「想いを伝える?」


【エリザベータ】

「彼のことが忘れられなかった、彼の記憶を消す前よりも、彼を好きになっていた、彼に会いたくて、また会いにきてくれると思って、あの岩に何度も行った」


【テレーザ】

「しかしそれは、叶わなかったと」


【エリザベータ】

「ええ、そしてしだいに、夕日を見に海の上に出て行くだけで、彼のことを思い出すようになって、どんどんつらくなっていって、たまりかねて、自らお父様にすべてを話した」


【テレーザ】

「それで、姫様の罪状が、同族殺しと、異族への恋、だったんですね」


【エリザベータ】

「だからわたしは死を選んだ、叶わぬ恋を一生し続けるよりだったら、自らの罪を受け入れて自らを葬ろうとした、それでも、葬ることも許されなかった、それがわたしのすべて」


【テレーザ】

「お話はよく分かりました、その話を聞いた限り、姫様にはできるだけの事をしたい、そう思います」


【エリザベータ】

「それはありがたいことです」


【テレーザ】

「たとえ異族でも、その恋する気持ちは変わらない、そう思います、姫様がそこまでその殿方を愛しているのでしたら、767条を適用します」


【エリザベータ】

「ありがとう」


【テレーザ】

「ただ魔法をかける前に、この魔法がかかっている間の制約と、その恋が届かなくて消えてしまうと言う事象の間にさまざまな壁があります、それを説明をしないといけないと思うのですが、いいでしょうか?」


【エリザベータ】

「はい、説明をよろしくお願いします」


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