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あおいと俺  作者: FATMAN・BAGGIO
13/22

【泳ぎの練習】

翌日、着替えのバックを持ってあおいが準備している。


【あおい】

『今日も泳ぎに行こう』


【恵】

「うん、今日もがんばって泳ごう」


【あおい】

『うん、がんばろー』


あおいちゃんに促されながら、海に行く準備を始める。


着替えを見て、海水パンツをはき、パラソルと、敷物だけ準備して準備を急ぐ。


おとといのような不安がまったく無かったわけではない。


それでも、不思議とそんなに怖いと言う感覚は無かった。


昨日はあおいちゃんが手をつないで指導してくれたし、今日だってきっと、そんなには怖くないはずだ。


そんなことを考えながら海に出る準備を終える。


【恵】

「よし、準備できたよ、あおいちゃん」


【あおい】

「…………(コクコク)」


あおいちゃんに手を引かれながら家を出て行く。


海岸までのほんの数分の道のり。


何も話さなかったけど、昨日よりもとっても気楽に歩けた気がする。


ビーチは昨日よりもかなり空いていた。


確かに今日は平日だし、お昼も過ぎていたから、帰った人も多いのかなとか、一人で想像していた。


昨日と同じように、パラソルをたてて、敷物を敷く。


昨日と違うのは、クーラーボックスが無いことくらい。


クーラーボックスが無いのは当然と言えば当然だ。


今日は午後から出てきているし、今日はクーラーボックスが無い代わりに、保温のきく、水筒を一個持ってきただけだった。


【あおい】

『それじゃあ、着替えてくるね』


【恵】

「うん、いってらっしゃい」


あおいちゃんを見送りつつ、俺は一人であおいちゃんに帰りを待つ。


一人きりで海を眺めつつ、ぼんやりと海を観察する。


昨日よりも気温が高いような気がしてしまう。


気のせいだろうか?


昨日よりも蒸し暑く感じてしまう。


それでも、精神状態は昨日よりもとても安定している。


あおいちゃんが帰ってくるのを待ちながら、昨日のことを思い出す。


少し俺から離れて俺を待ち、俺が泳いでたどり着いたら抱きしめて受け止めてくれる。


そして、言葉は無いけれど、頭を撫でてくれる。


正直、あおいちゃんに撫でられるのは恥ずかしかったりする。


でも、そこで突っぱねることもできない。


だって、海の上では、スケッチブックを持っていくわけもいかないし、声が出せない、話せないあおいちゃんなりの、よくできましたと言う表現方法なのかなと感じる。


そんなことをぼんやりと考えていると。


トントン、トントン。


あおいちゃんに肩をたたかれる。


【あおい】

『おまたせ』


【恵】

「着替え終わったんだね、よし泳ぎに行こうか」


【あおい】

『うん、準備運動は終わった?』


【恵】

「いやまだだよ」


【あおい】

『それじゃあ、しっかり準備運動しよう』


そう促されて準備運動をする。

軽くジャンプしたり、手足をほぐしたり、ストレッチしたり。


体をある程度ほぐし終わったらあおいちゃんのほうを見る。


【あおい】

『よし、今日もがんばろう』


【恵】

「うん」


あおいちゃんに手を引かれて、海に向かっていく。


昨日よりも、海に向かうときの気持ちが楽な気がする。


すんなりと海に入って、水の冷たさに慣れてから、腰ぐらいまで浸かる位置まで進んでいく。


あおいちゃんはすでに離れて、俺を待っている。


ここまで泳いで来い、そういう意味だと思う。


昨日の感覚を思い出しながら、バシャバシャと水しぶきを立てて、泳いでいく。


あおいちゃんも昨日と同じことを繰り返す気も無いらしい。


昨日よりも、ずっと遠い距離だ。


それでも、怖がらず、ただひたすらあおいちゃんを目指して泳ぐ。


昨日よりもちょっと遠く感じたけれど、そんなに疲れるほど遠くは無かった。


やがて、自分の手があおいちゃんに手が触れる。


手が触れた瞬間、あおいちゃんが俺を抱きかかえてくれた。


そして、俺の頭を優しく撫でてくれる。


撫で終わったあと、また次の目的地を目指して俺から離れていく。


それを追いかけて、また泳いでいく。


そしてたどり着けばまたあおいちゃんが離れていく。


それをただ繰り返していく。


そのたびにあおいちゃんがが受け止めてくれて、俺の自信が元に戻っていく。


やがて、離れていくあおいちゃんをおいかけていけるくらいに元に戻っていた。


数時間泳いでから、ビーチに戻っていく。


ビーチに帰ってからどっと疲れに襲われる。


長い距離を泳いだ疲れが体に押し寄せてくる。


ぐったりと敷物に腰を下ろす。


ゆっくりとくつろいでいると、あおいちゃんが話しかけてくる。


【あおい】

『これで一人で泳ぐ自身が持てた?』


【恵】

「もちろん」


【あおい】

『よかった』


【恵】

「ありがとう、これで今度から来たときはもっと長く泳げそうだよ」


【あおい】

『わたしも、恵君が泳ぐのうまくなったと思うよ』


【恵】

「そっかあありがとう」


【あおい】

『ところで、お願いがあるんだけど』


【恵】

「なに?」


【あおい】

『明日から毎日、海を見にきたいなぁ』


【恵】

「いいよ、夏休みだし、明日から毎日こようよ」


【あおい】

『本当に?嬉しい』


【恵】

「いいよ、海がほんとうに好きなんだね」


【あおい】

『うん、大好き、夕日を見るのがとっても大好き』


【恵】

「夕日かぁ」


【あおい】

『恵君はきらい?』


【恵】

「嫌いとかは無いんだけど、そんなにじっくり見たこと無かったなって」


【あおい】

『そうなんだ、海に映ってる夕日がものすごく好きなんだよ』


【恵】

「そっかぁ、そこまで見てなかったなぁ」


【あおい】

『ほら』


あおいちゃんがそういいながら水平線を指差す。


水平線には、大きな太陽が沈もうとしている。


あおいちゃんが言ったとおり。


海に反射してきらきらと輝いている海面がとても幻想的だった。


【あおい】

『きれい』


【恵】

「うん」


それ以後、しばらく言葉は無かった。


二人で夕日が沈んでいくのを眺めていた。


徐々に、小さくなっていく太陽。


今日一日が終わっていく。


また明日に向けて太陽が沈んでいく。


太陽が沈みきってから、あおいちゃんが着替えに行く。


俺は、ただぼんやりと待っていた。


そして明日から海に来たときは何をしてすごそう?


そんなことを考えていた。

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