【海底帝の魔女3】
【テレーザ】
「この第767条には一つだけ選択権が含まれています。」
紅茶を一口すすったあと、テレーザの口からそう語れる。
【エリザベータ】
「その、選択権とはいったいなんです?」
疑問をぶつけるエリザベータ。
その疑問に対して、ゆっくりとテレーザは答えていく
【テレーザ】
「それは、人となって一週間相手に手を尽くしてアプローチするか、それとも人間にならずにこの場で、今すぐ消えてしまうかの二つです」
【エリザベータ】
「それを選ぶのは私次第と言うことですね、そんなの決まっています、当然人間になって、あの人に想いを伝えます、それが叶わぬ恋だったとしても、想いを伝えることに意味がある、わたしはそう思います。」
エリザベータは毅然とした態度でそう言い切る。
しかしその言葉を聞きながら、テレーザはさらに注意を続けていく。
【テレーザ】
「それはそうですね、気持ちはよく分かりますが、お考えになって決めてください、人間になることもできれば、今この場で死を選ぶことも可能です、どちらを選んだほうが確実に幸せだと言うことは無いと思います、ですから、もう少しお考えになってからご決断されても良いかと思います」
【エリザベータ】
「わたしは人間になります、そしてあの人と恋をしたい、そうすれば死なずにすむし、うまくいけばあのひとと結ばれることだって……どちらかを選ぶかなんて決まりきったことだと思います、何もしないでこの場できえてしまうだなんて、嫌です」
【テレーザ】
「確かにここの部分だけ聞けば、人間になる方が希望に溢れてるようにも見えます、しかし姫様、人間になるにあたって、不自由になってしまう部分もありますし、恋愛を成就させるにはかなり難しい条件となります」
【エリザベータ】
「難しい条件?」
【テレーザ】
「はい、かなり難しい条件が課せられます、それに立ち向かう勇気が無いのなら、この場で死を選ばれたほうが幸せかもしれません、その詳細については、説明いたします」
【エリザベータ】
「お願いするわ」
【テレーザ】
「エリザベータ姫、その前にお聞きしたいことがあります、よろしいですか?」
【エリザベータ】
「ええ、かまわないわ」
【テレーザ】
「姫様がどうして人間になりたいのか?自分はそれは知りたいんです」
【エリザベータ】
「わたしが……人間になりたい理由……」
【テレーザ】
「話しにくければ話さなくてもいいんですけど」
【エリザベータ】
「いえ、話すわ、そういえばわたしが何故あの人に恋をしたのか、誰も聞かなかったものね、いいわ、お話しましょう」
【テレーザ】
「いいんですか?」
【エリザベータ】
「でも話す前に、貴方に逆にたずねたいの、貴方がその話を知りたいと思ったのは、魔女としての務めから?それとも、ほかの何かの理由があったのかしら?」
【テレーザ】
「できれば魔女の務めだと言いたいのですが、実は違ったりします」
【エリザベータ】
「それはよかった、何故あなたが知りたいのか、どんな理由か知りたいわ」
【テレーザ】
「恥ずかしながら、それは単純に女としての興味と言いますか、もしそんなにも深い愛情が芽生えるほどの恋ならば、できるかぎりのことをしたいなと思っただけでして」
【エリザベータ】
「それならなおさら話しやすいわね、それじゃあ、お話ししましょう、あの人とはじめてであった日のことを、そして、何でわたしが恋に落ちて行ったのかも」
【テレーザ】
「はい、お聞きしたいです」
【エリザベータ】
「そうね、あの人と初めてあったのはもうだいぶ前の夏の日、帝国からはかなり離れたとても陸に近い海でのことだった」




