【海水浴の日の朝】
朝8時。
俺はぼんやりと歯を磨いている。
洗面所の窓から、今日行く海をぼんやり眺めながら、歯ブラシを動かしていく。
晴れ渡る青い空。
海から吹きつけてくる潮風。
ここ数年、家の目の前にありながら、あまり気にしてこなかった場所。
今日はここのビーチに遊びに行って遊ぶのか。
そんなことを考えながら見つめていた。
やはり、完全には不安はぬぐい切れていない。
幼い日にあった怖い体験をどうしても振り切れないでいた。
もしパニックになってしまったら、俺はどうなるのか?
そんなことばかり考えてしまう。
そうなったとしても、あおいちゃんやみやには迷惑はかけれない。
そんなことをしてしまったら、あおいちゃんあたりは落ち込んでしまうかもしれない。
そんな心配ばかりが頭の中を埋め尽くしていく。
なんだか自分でも分かるくらい、ピリピリとした空気が張り詰めていた。
そんな心配がピークに行こうとしていた時。
トントン、トントン。
後ろから肩をたたかれる。
誰かなと思って後ろを振り返ると、あおいちゃんだった。
【あおい】
『おはよう』
【恵】
「おはよう」
【あおい】
『今日はいい青空』
パジャマを着たまま、まだ眠そうな顔であおいちゃんがニコニコ笑っている。
【恵】
「今日は海に行くの楽しみ?」
【あおい】
「…………(コクコク)」
微笑みながら、あおいちゃんがうなずく。
【あおい】
『みやはもうお昼作りはじめてる、楽しみ』
【恵】
「そっか、みやも楽しみなんだね」
【あおい】
「…………(コクコク)」
そんなやり取りをして、少し勇気が出た気がする。
今日一日は海に行って泳がなきゃと言う部分よりも、今日一日は海に行って楽しもう。
そう思えてくる。
大丈夫、今日が天気も穏やかだし、小さなときとは身長も体重もぜんぜん違うんだから。
そうそう簡単に波に飲まれるわけが無い。
それに今日はあおいちゃんもついていてくれるらしいし。
怖がることは何も無い。
そう自分に言い聞かせながら自分も準備をしていく。
みんなにおいていってしまわれないように。




