〈1〉
短いですが、キリがいいので。
まぶしい日差しの中、川ではしゃぐ子ども達の声が響いている。ここは源村。都の太平京からは、南西に歩いて二日程に位置する山村だ。村の南を流れる川で子ども達が水遊びをしている。
そんな中、子ども達の群れから少し離れた岸の岩に、冷たい水に足を浸けながら腰かけている二人の少年の姿があった。年の頃は十二、三で、川にいる子ども達の中では一番の年長である様だった。
「こうして自由に遊んでいられるのも、あと少しだな。」
感慨深げに少年の一人が呟いた。
「申太は仕官してからも自由に遊んでそうだけどな。」
それに対して、からかうようにもう一人の少年が答える。
もうすぐ二人は、村から少し離れた街で、武官として国に仕えることになっていた。
「ひどいなぁ。俺だって真面目に働くさ!…にしても、桃華は文官を選ぶと思ってたのにな。頭良いしさ。」
からかわれた少年─申太が言い返す。
「俺は男らしくなりたいんだよ。ただでさえ、この見た目でからかわれるからな。」
確かに、桃華と呼ばれた少年は、華奢な体格をしている。さらに、顔は少女と見紛うばかりの可憐さで、本人の劣等感を刺激している。
それとは逆に、隣にいる申太は日に焼けた健康な肌と、しなやかな筋肉がついた手足を持つ、少年らしい少年だった。未だ子どもの未熟さを残していながらも、精悍な顔立ちをしている。
桃華は、決して性別を間違われることのないこの友人を、羨ましく思っていた。
「でも桃華は、からかわれた分だけやり返してやってるじゃないか。」
申太がニヤリと笑って桃華に返す。
「当たり前だろう?言われっぱなしな訳ないじゃないか!」
「くくくっ。ほんと、黙ってれば可憐な美少女なのに、中身は狂暴だよな、おまえ。」
「うるさいな。ほら、ちび達が呼んでるぞ!」
「今のうちに遊んでやるとするかー。」
そう言って二人は、子ども達のとろこへと向かって行った。