08.メス竜
――――メス竜 -side-
「やあ! は じ め ま し て、
僕の名はサポード。」
目前の人間は人であるまじき、翼を有していた。
額にはユニコーンを連想させる一角が、堂々と生えている。
角も翼も薄水色を帯び、神秘的だ。
しかし、服装がその人の全てを物語っている。なんと、全裸である。
変態だ。関わりたくない。
残念ながら母竜は不在だ。助けがない。
おわった。
これから私は誘拐されて、下半身をメチャクチャにされるぅ。
不安と興奮でいっぱいだ。
思わず下を覗くと、人にあるべき、突起物も、穴もなかった。平らだ。
よく見ると顔は中性的で、全体的に整っている。
なんだこのイケメン。
やばい・・・胸がキュンキュンする。
れ、冷静になれ。この人は変態なんだ。
それに私は元男だ。屈しないぞっ
ともかく挨拶には挨拶を返さなければ。
「こ、こ、こ、こんにちは。わ、私の名前はーーー」
ん?名前? ないな。
母竜と一緒にずーっと寝てたから、名前もらってないや。あは
「?」
サポードは首を傾げている。
「私は、はぅ。 う、生まれたてで、その、ミカンくさくて、名前は ま、まだないの」
「んじゃ、僕がキミの名付け親になろうか?
アハハハハハ 冗談 さ
その純白の鱗。 同じ鱗を持つ竜は渓谷に一匹しかいない。
キミは マザードの娘さんだね。」
マザード。母竜の名はマザード。
知らなかったなぁ。
そういえば元の世界の話だけど、
赤ちゃんが、母親の名をお母さん、と思い込んでて
本名を教えたら、衝撃的な顔で驚いてた、とか聞いたことがあるなぁ。
私もまだ子どもなんだし、ここはナゼナゼ攻撃を仕掛けよう。
「なんでマザードはマザードなの?」
「母竜だからね
マザーと、ドラゴンを掛けた名前が マザード さ
キミの父もマザードと同じ 簡単な名前だね
父とドラゴンを掛けて、ファザード
それと昔、キミのお母さんが 瀕死の僕を 窮地から救ってくれたんだ
マザードは命の恩人なのさ
僕は恩返しにと思って、マザードの助手をやってたら
ある日 僕に新しい名前をあげると言い出してね
その名はサポード。 由来、分かる?」
助手のドラゴンだから、サポート・ドラゴンかな。
ほんと適当だな。
「サポート・ドラゴン?」
「そう! サポートするドラゴン
僕はこの名前で構わない、たぶん父も
まッ キミも、お母さんの妙な命名規則には 気を付けることだね。」
お、おう。