04.寝る
ーー翌朝
目が覚めた。私の体勢からして、うつ伏せになって寝ていたようだ。
あまりこの体勢で寝るのは得意じゃない。息苦しくなって寝つきが悪くなるのだ。
猫はよく毎日うつ伏せになれるものだ。
収納形態時に、手首のアームを前に突き出す軟体動物の構造は謎に包まれている。
そして全国のネコ科ネコ属にうつ伏せ皆勤賞を与えたい。
しかし、やけに目覚めが良い。
空気がキレイだ。今日も1日がんばりましょう。
ふと体を起き上がらせようと、二足歩行を試みたら、平衡感覚が働かずに仰向けに横転した。
ドキりとしたが、後ろの何かにぶつかったため、頭への打撃は避けられた。
思うように体が動かない。
後ろを見上げたら、巨体が私を囲むようにうつ伏せで熟睡していた。
巨体の正体はドラゴンだ。肌は純白の鱗に覆われ、眼は固く閉ざされている。
私はその瞳の色彩を記憶している。ダイヤモンドの拡散する煌めきに、レモンの黄色を足した色。瞳孔は黒く、外側が薄赤身を帯びている。
ざっくり言うと、ヘビや猫みたいな目。さらに後頭部からは2本の立派な長い角を生やしている。
尻尾は細長め。手足もざっくり例えると、後ろ足はダイコンの3倍太くて長い、前足もニンジンの3倍は太く、長い。
もちろん手も足も、人間や猫のアームのように折り曲げることができる。そして、それらとは異なり、天を掴むほどの大きな翼を所有する。
翼は今、折りたたまれている。母竜は寝てるからな。私のほうが早起きだ。
ふと、自分が人から竜へ転生したのを思い出した。
私の体は母竜を小型化にしたものそっくりだ。
もととなる母竜のスケールは高さ約3m、長さ約5m。
比べて、高さ30cm程度の私。生まれたてだからか各々のパーツは成竜と違って、翼が短く、全体は丸みを帯びている。
私たち親子は、凄まじく広い雀の巣で寝ている。ドラゴンの巣だがな。
なお、私は仰向けになってソファーにのしかかったかのようにダラーンとしている。
母竜は枕。平和。
二度寝することにした。
おやすみ。
ーー翌朝
目が覚めた。私の体勢からして、うつ伏せになって寝ていたようだ。
あまりこの体勢で寝るのは得意じゃない。息苦しくなって寝つきが悪くなるのだ。
母竜を枕にして仰向けで寝たはず。何かの拍子にうつ伏せになったみたい。
昨日とは打って変わって、一匹の鳩っぽい鳥がいた。鳥は母竜のおでこをつついている。
のどかだ。
よし、周囲を再確認だ。
ここは渓谷。二つの山に囲まれた所だ。
山といっても私からだと、白いゴツゴツした岩肌の高層ビルにしか見えない。
周囲の岩肌には緑がささやかに芽生え茂っている。高さがあるほど、木が生えているようだ。
地面は砂利。耳を澄ますと、川のせせらぎが聴こえる。
晴天だ。夏の山中のように涼しい。風もある。
ドラゴン生活3日目。毎日寝るだけ。飼い猫と同レベルの生活水準だ。
食べてないから猫より酷いかも。
先ほどの鳩は、クチバシに封筒を挟んでこちらを見ている。何か急かしているような。
伝書鳩というやつでは?
「お母さん手紙きてるよ」
「んんぁー」
母竜のあくびは、んんぁー