03.初めての魔法
生まれたてのメス竜は柑橘類の香りがするらしい。
「じゃあ生まれたてのオスの匂いは一体どんな風味なんだ?」
「ドラゴンの匂いよ」
わかんねぇよ! なんだよドラゴンの匂いって
なんでメスだけミカンなんだよ!
ここは一旦話を変えよう。
俺、いや私か。私は魔法が凄い気になるからね。わくわく
俺は心を女に変えるべく甘えた声で、
「魔法の使い方教えてー」
「いいわよ、魔法の基本。ドラゴン-スキャンからね」
母竜によると、ドラゴン-スキャンは、対象の情報を確認する魔法みたいだ。
例えば、毒キノコをスキャンすると、毒の解除方法が頭に流れ込むらしい。
ただし、この情報はドラゴンが好き勝手に書いており、
異様に雑な説明があったりするとか。
嘘の記述は、ドラゴンの人類監視部門に弾かれるようだ。
あと、他の種族は参照できないと教えてもらった。
この魔法はスキャン対象を自分にすることで、自分の名前や種族、体力、覚えた魔法を閲覧できる。
母竜がこの魔法が基本と言ったのも、まずは己を知るのが先だということだろう。
「『ドラゴン-スキャン!!』 で、でない」
「そうではない。魔法を使うには体内で魔素を操るのよ」
体内で魔素を操る。ふむ、ふむ? 魔素ってなんだ。急にファンタジーチックな言葉が出たな。
「魔素は魔法の素材。魔素よ。自分を信じて頑張って! 我が子よ!!」
あっ、ダメだこの人。説明が下手なタイプ。直感型の天才だ。
そして私(俺)は独学に明け暮れ、夜になった。
そういえば今日は何も食べてない。その割にお腹がすいてない。ドラゴンは食べなくても生きていけるかもしれない。ドラゴンはトイレに行かない。
よしこれが最後だ。
『ドラゴン-スキャン!!』
#ステータス
名前:なし
種族:純潔の白き竜
HP:7/7
SP:★
魔法:
零「ドラゴン-スキャン」
一「ドラゴン-イヤー」
一「ドラゴン-パンチ」
二「ドラゴン-ブレス」
なんか出た
よっしゃああ成功だ
母竜に報告しなきゃ。
「できたよ。ドラゴン-スキャン」
「我が子は物覚えが良いのね。しかも努力家! 私は何も教えれなかったのに、すごい!!」
めっちゃくちゃ褒められた。
前世では人に褒められたことはあまり無かった。何をしても失敗、人並み以下。
今となっては記憶が曖昧だけど、完全に忘却していいんだ。現在が幸せ。今が楽しい。ただいまハッピー。
メス竜として生きよう。
ふと疑問に思ったが、ドラゴンの寿命ってどのくらいだろう?いつ、繁殖期を迎えるのだろう?
繁殖! 私の思考がメスっぽくなってきたな。多分
まだ生誕1日目なのだ。急がなくていい。母竜に尋ねるのは後日にしよう。
母竜は四本の足のうち、細い前足で私の頭を撫でてくれた。
たまに爪が当たって痛いけど我慢だ。痛みよりも愛が勝るのだから。
だが、本能が危険信号を送っているように感じる。なんだろう。
『ドラゴン-スキャン』
#ステータス
名前:なし
種族:純潔の白き竜
HP:3/7
SP:★
魔法:
零「ドラゴン-スキャン」
一「ドラゴン-イヤー」
一「ドラゴン-パンチ」
二「ドラゴン-ブレス」
げっ HPが減ってる。次、撫でられたら私 死ぬ。
「撫でないで!! 私の体力が削れてる!」
『お母さん-ヒール』
母竜は何事もなかったかのように、回復魔法を振る舞った。
しかし、体は正直だ。
母竜の前足は震えている。
仕方ないよね、生まれたての子供を失うところだったんだもの。
私は、妙な名前の魔法が気になった。
『ドラゴン-スキャン 対象は、お母さん-ヒール』
#スキャン結果
名前:お母さん-ヒール
説明:回復魔法。子供に対してのみ通常の3倍の効果を得るぞ。
ほう。私の魔法がドラゴンシリーズなら、母竜はお母さんシリーズの魔法なのか。
魔法は体系化されているみたいだ。
今日はおしまい。
明日も特訓がんばるぞ。