おまけ8 兄妹
エドワードとサマンサ(お茶会1と2の間)
「エドお兄様、ナタリー様に何故何も話さないの?」
「必要がない事はしない」
サマンサが明らかに不機嫌そうに、こちらを見ている。
ナタリーの為にならないから話していないのだが、サマンサにそう言った所で納得しないだろう。私が反応しないでいると、サマンサはつまらなさそうにため息を吐いた。
「お兄様は素直なのに」
「ジョージと比べられても困る」
「お兄様はお姉様を置いて戦場へ行ったのよ? それはわかっているの?」
「戦場に女性は連れて行かないものだ」
「エドお兄様が仕掛けた戦争でしょう? 万が一お兄様に何かあったらどうするのよ」
ナタリーの事を言いに来たのではなく、ジョージが心配なのか?
「安心していい。ジョージは圧勝して帰ってくる」
「圧勝がナタリー様を王宮へ残す条件なのね?」
やはりナタリーなのか。サマンサの何が目的かわからない話し方は一体誰に似たのだろうか。
「違う。ナタリーを自由にする条件だ」
「自由? ナタリー様が出ていきたいと言ったら引き留めないつもり?」
「ナタリーの意思を尊重するつもりだ」
サマンサの顔が一気に不機嫌に変わった。自分の思い通りにならないと不機嫌を顕にするのは、父上が甘やかしたせいだろうか。
「エドお兄様はナタリー様の事を何もわかっていないのね」
「サマンサは何を知っているつもりだ」
「教えてあげないわ」
サマンサは妙に上から目線だ。私が拗らせている事、まさか気付いているのか?
「エドお兄様の指示でナタリー様に帝国語を習うふりをして近付いたけれど、もうそれは終わっているからね」
「知っている。その後の茶会はサマンサの意思と言いたいのか」
「そうよ。もしエドお兄様が引き留めないつもりなら私にも考えがあるわ」
「サマンサに何が出来る?」
「私の侍女として、他国に嫁ぐ時に一緒についてきてもらうのよ」
私はサマンサに訝しげな表情を向けた。あまりにも非常識すぎる。
「一国の皇女を侍女にするなど許されない」
「だけどナタリー様は自由になるのでしょう? 私のお願いなら聞いてくれると思うわ」
「レヴィの立場も考えろ。嫁に出した皇女を他国に嫁ぐ王女の侍女にするなど説明が出来ない」
「それならエドお兄様がきちんと責任を取りなさいよ」
サマンサが睨んできた。どうやらサマンサは私とナタリーを夫婦にしておきたいようだ。
私もそれを望んでいるが、ナタリーにそれを強要するのは違うと思う。
「最終的に決めるのはナタリーだ。私はナタリーの好きにしたらいいと思う」
「何でも自分で決める癖に、ナタリー様に対しては弱気なのね」
「好きに思ってくれていい」
ナタリーは何も自分で決めない。服の布でさえ決められない。だから私が傍にいてくれと言えば、本音など言わずずっといてくれるだろう。
だがそれは嫌だ。そういう所をサマンサはわかっていない。
「そう。それならもう言わないわ。折角助言をしに来てあげたのに」
「助言?」
「もう言わない。エドお兄様は賢いのに、肝心な所が馬鹿で残念だわ。それではまたね」
サマンサはそう言うと私の部屋から出ていった。
今の会話の中に助言などあったか?
私は暫くサマンサとの会話を思い出しながら一生懸命考えた。




