おまけ3 とある日の執務室
ナタリーの出産を控えたある日の執務室
「殿下、名前は考えましたか」
執務中だというのに、リアンは呑気に尋ねてくる。
「仕事に集中しろ」
考えているに決まっているではないか。勿論、ナタリーが考えていたら、そちらを優先するつもりだが。
「しかし名前は大切ですよ。年寄りみたいな名前はいけません」
「ライアンとリアンという名前には絶対にしないから安心していい」
ライアンはスミス家でよく使う名前だから祖先に多くて年寄りのように感じるのだろうが、王都を探せば若者のライアンは結構いると思う。
だが絶対に自分の子供には付けたくない。リアンと同じにはしたくない。
「女の子ならリアンは可愛いと思いますよ」
「そう思うなら自分の娘に名付けたらいい」
「そうしたらどちらを呼んでいるかわからなくて、ややこしいではないですか」
ややこしくない。自分がライアンに戻ればいいだけだ。言うと面倒だから言わないが。
そろそろリアンを黙らせてくれ。そう念じながらスティーヴンを見る。優秀なスティーヴンは私の視線に気付いた。
「リアン。王家の名前はある程度決まっているのは知っているだろう?」
「つまりスティーヴンは名前の予想が出来ていると」
「あぁ。男児ならフィリップ。女児ならアンナ。いかがですか?」
スティーヴンは楽しそうにこちらを見た。リアンを黙らせるのではなくて自分が話すのか。しかも人の考えを見抜いたような事を言って。また考え直さなくてはいけないではないか。
「名前はナタリーに任せるつもりだ」
「えぇー。二人で考えているのではないのですか」
「煩い。早く仕事をしろ」
リアンの所は相思相愛だから仲良く決めただろうけど、こちらは違う。空気を読まない皇帝陛下がナタリーに話してしまったから、彼女は男児の名前は考えられないだろうし。男児を出産した場合、彼女はどのような顔をするだろう。思いつめたりしないだろうか。
出産したらすぐに向かおう。産まれた後なら会いに行っても不自然ではないだろうし、ナタリーも嫌な顔はしないはずだ。
それより先に名前を考え直さなければ。スティーヴンに言われたままの名前は付けたくない。




