おまけ1 スティーヴンとリアン その1
ここからはWeb拍手のおまけSSの再録になります。
本編の補足のような話が中心です。
エドワードとナタリーが結婚して二年目のとある日。
「なぁスティーヴン、殿下は何故ナタリー様に冷たいのかな」
殿下が休憩で執務室を開けている時、リアンが私に尋ねてきた。
「服も誂えていらっしゃるし、十分ではないか」
「表面的にはいいかもしれないけど、精神的に冷たい気がする」
「殿下が何故休憩をしているか知っているのに、それを言うのか」
私が呆れた顔を向けると、リアンはつまらなさそうな表情をした。
「殿下が心から愛し合える人を探しているのはわかっているよ。そういう夢見がちな所は嫌いじゃないし。でもさ、相手がナタリー様でないと決めつけずに、一度向かい合ったらいいと思うんだ」
「ナタリー様はシェッド帝国の皇女だという事を忘れたのか?」
「だけどもうレヴィに嫁いだのだから関係ないよ」
「そのように簡単にはいかない。それよりも早く手を動かさないと帰宅時間が遅くなるが、それでいいのか」
「そうだ。今日は家族で夕食の日だから早く帰らないと」
リアンはそう言うと書類に視線を戻した。リアンは貴族としては恵まれている。政略結婚ではなく好きな女性と結婚をした。だから政略結婚がよくわかっていない。殿下の場合は国と国の政略だ。しかも仲良くなる為のものではない。
私だって殿下に長らく仕えているから、殿下の幸せは望んでいる。初恋を拗らせた殿下が本当に愛し合える人を探す事は咎められない。しかし殿下は結構手当たり次第に声を掛けているのに、未だにそう言う人が見つかっていない。もしかしたらレヴィ国内にはいないのかもしれない。
ナタリー様がもう少ししっかりした方なら可能性もあるのだろうが、殿下の為にならない事はしたくないの一点張りだから難しい。殿下に想いを寄せる事は殿下の為にならないと、一線を引いている感じがする。殿下も殿下でナタリー様を将来修道女にしようとしている節があるから噛みあっていない。夜会で見かける二人の仮面夫婦振りは素晴らしいが、それが上手くても仕方がない。
私は書類と睨み合いをしているリアンを見た。リアンはたまに鋭い事を言う。普段は何の特徴もない平凡な男だが、人が見ていない所を見ている時がある。大聖堂へ行くナタリー様に付き添っている回数が多いから、ナタリー様の中の何かが殿下に相応しいと判断したのかもしれない。しかしこれを殿下に言った所で笑って流されそうだ。
私も書類に視線を戻した。
けれど頭の中ではナタリー様を本当の意味での正妻にする為には、どうしたらいいかを考え始めた。




