第三話 クロスオーバー チャイナガールズ編
「それまでは私の剣舞をお見せするわ!」
そういうが早いかレイレイさんがステージに上がろうとする。
「あっ!」
私とハニエルちゃんが同時に声を上げる。
うん、ステージとその外側は完全に別空間で、
つまり……
「痛っ……たぁ!」
うん、こうなる。
レイレイさんは顔面から空間の壁にぶち当たり、
何が起きたのかわからないまま地面にしりもちをついていた。
「レイレイさん あっちの椅子に座ってみて」
ノブユキが私(本体)を指さす。
レイレイさんは私と私(本体)を二度見……いや三度見?
してから同じように座る。
一瞬でステージ上に意識が飛ぶことに驚きを……
感じていないね、すごく輝いた笑顔を見せる。
「なにこれ! すごい!」
私にとっては慣れた事だけど、
レイレイさんにとっては未知の体験。
「えっと、ステージの上は自分の意識を飛ばして、
何のリスクもなく全力で暴れられる場所……になるのかな」
私も正確に把握していないけど間違ってはいないはず。
自分の分身を作り出して自由に操作できるといえばよかったかな?
「ここは本当に不思議なところね、夢なのかな?」
夢……夢かぁ。
レイレイさんの言葉に考え込む。
大好きな人と大好きな事を夢中になれる。
それって確かに夢のようだね。
そんな考え込む私を無視してレイレイさんは、
金色に輝く剣を腰ベルトにひっかけている鞘から抜いた。
とたんに焦げた匂いがあたりを包む。
レイレイさんのお団子頭のを二つ結っている、
長めのリボンがひらひらと揺らめく。
刃を右頬横に持ってきて、構えている。
きっとその刃にはレイレイさんの大きな瞳が映っているだろう。
アシメのドレスはレイレイさんの動きを艶やかに演出する。
ゆっくりと、しかし流れるような剣舞。
ノブユキとは違う、けれどとても完成された動き。
ふと横に目を移せば、ハニエルちゃんが真似をしようとしている。
動きを追って真似をしている姿に私は声をかける。
「動きを追うんじゃなくて呼吸を重ねるんだよ」
いつの間にか隣に来ていたノブユキから刀を受け取ると、
私もレイレイさんに合わせて剣舞する。
レイレイさんは驚いた顔をするけど、
そんなに驚くほどの事でもないよね?
こういった踊りというのは呼吸を意識してあって、
動きの緩急は呼吸を意識してある。
型と動作は錬気(呼吸)だもの。