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ねじまげ物語の冒険 第二巻  作者: 下上次郎
第一部 果てしない物語のちょっとした開幕
1/3

はじめに――その少年について

 以前――


 ずいぶん昔の話になるが。


 牧村洋一少年に関するお話は、つらつら述べたことと思う。そのお話は、ちょいと奇怪で、少しく奇抜で、だから終わりまでお付き合いしていただけたか、心許なく思っている。いや、やっかい至極。


 そのお話が、そんなふうに奇妙であったのは、洋一少年のおかれた状況によるものだが、少年たちに関するお話は、あれで終わったわけではない。なるほどエンドマークの鐘こそ鳴ったが、洋一少年にかかる苦難は、あの事柄が最後だったわけではないし、むしろあれからの方が大変であったのだ。



 さて、くだんの少年は小学四年生で、体格も普通なら容姿もふつう、別段とりたてたところのない少年だった。住んでいるところは古い古い洋館で、そいつを私立図書館にしたてなおしている。が、両親はいない。殺されてしまった。

 洋一は自分の親のことをふつうだと思っていた。それまで普通に暮らしていたし、自分自身が取り柄も特徴もない、普通の少年であったのだから当然だ。

 だけど、中間世界からやってきたという、ほらふき男爵と侍の親子が、彼のすべてを変えてしまった。

 彼に関わる秘密を、話してしまったのだ。

 彼の両親が、本の世界を守ってきた古い古い一族の生き残りで、伝説の書という、 これも奇怪な本を守ってきたこと。その本を狙う凶悪な敵がいて、二人はその人物に殺されてしまったこと――

 洋一はその敵――ウィンディゴの力を削ぐために、本の世界に入り込んだ。ウィンディゴは、本の筋書きを悪い方に変えて、自らの力に変えていたからだ。洋一が宿敵の目的を阻止するべく、選んだ本は、かの「ロビンフッドの冒険」だった――



 平凡な少年が、いかにして物語の主人公となりえたのかは、すでに述べた。

 洋一は奥村少年と協力して、数々の危機を脱しはした。ロビンの命も救ったし、物語も正しい方向へと導いた。ロビンたち森の仲間が勝利して、本の善は守られたのだ。

 だが――

 洋一少年は、目的の一端を果たしたけれど、真の目的となるとどうだろう?

 宿敵との決着はまるでついていない。洋一はそれからもウィンディゴに狙われ続けたのだし、狂った物語はごまんとあったのだ。

 いや、くどくどと申し訳ない。語り残したお話がたんとあるのは、わたしの不徳と致すところ。

 物語の幕は、開かなければならない。

 あれよりも奇怪面妖なお話になってしまうことは、もうしわけないが。


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