空想ヒーロー
ぼくは子供の頃から同じ夢をよく見ていた。
夢の中のヒーローはいつもぼくを助けてくれた。
どんなに怖くて強い敵がぼくを襲ってきてもヒーローが倒してくれるし、
ぼくが苦しくて辛い時はいつもそばに居てくれて励ましてくれたのだ。
誰よりも優して強い、ぼくだけのヒーロー。
ぼくも本物のヒーローになって困ってる人を助けたいと、幼少の頃から願っていた。
ヒーローは弱いものの味方だ。
だからぼくはずっと弱いものの味方をしてきた。
本物のヒーローになるために。
集団でいじめられている子を助けたり足が悪いおばあさんの荷物を持ってあげたりしたし、
泣いている子を慰めてあげたりもした。
でもわるものとずっと闘うのは疲れるし怒りや憎しみなど余計な感情がぼくを邪魔してくる。
そして年を重ねるごとに本物のヒーローになるため闘い続けるぼくを笑う奴も増えていく。
『ヒーローになるのは自分には無理なのではないか』という疑問も大きくなりヒーローになるのを諦めようかとぼくは迷った。
それを期にぼくはいつも当たり前のように見ていたヒーローの夢を全く見なくなった。
学校に通うため電車に乗って疲労や苦しみが滲み出ている顔を眺める毎日。
気づかないうちに現実に囚われ、流されるぼく。
本物のヒーローになるきっかけにはなるだろうと思って始めた特撮ヒーローも知らないうちに本物のヒーローなのだと無理矢理にでも信じ、
仮面をかぶり来る日も来る日も自分を偽り続けていた。
本当は分かっていた。
特撮でいくらヒーローのふりをしてもぼくの憧れる本物のヒーローにはなれないと。
確かに特撮ヒーローになることで子供の憧れの的になることはできるだろう。
でも子供が憧れているのはぼくじゃない。
救っているのもぼくじゃない。
子供たちにとってのヒーローはぼくが演じているこのキャラクター、登場人物なのだ。
夕日の光を浴びた公園のブランコに座りながらどれだけ足掻こうと本物のヒーローになれない自分を憎むことしかできなかった。
それだけぼくは無力だったのだ。
ふと顔を上げて前を見ると電柱の側に誰か立っていた。
一目見て何故かこの世界の住人じゃないと感じた。
「君はヒーローになりたいのかい?本当にヒーローになりたいのなら方法を教えてあげる」
ぼくは再び顔を上げる。
「簡単なことさ。その身体を捨ててしまえばいい、夢の世界へおいで。そうすれば君はヒーローに相応しい身体を手に入れられるよ。さあ」
オレが本物のヒーローになった日、それは星も月も無く空は闇のように暗かった。
どうも、汛樹です。
今回は文章に気を付けて書きました。
前回よりは多少読みやすくなったと思います。
それでも変な部分があったらご指摘していただけると嬉しいです(汗