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プロローグ

 教卓の横に立たされる、クラスの担任教師が手を叩くと、クラスメート全員が注目した。

「みんな、知ってると思うが今日で彼はこの学校を去る、いやぁ平和になるね~」

 明らかに悪意の満ちた表情を浮かべ笑う教師、その教師の言葉を聞き、教室が一気に騒がしくなる。

「なんで?」「退学?」「本当かよ」

 色々な言葉が俺の耳に入ってくる、それは疑問の言葉だったり、残念そうにする言葉ばかりで、自分がこの学校の、この教室でどれだけ慕われていたのかを示す証拠とも言える。

 俺は般若の面をかぶったような顔をして、悪意に満ちた表情を浮かべ笑う教師を、睨みつけてやる。

 「ひっ」と小さな悲鳴を上げる教師、なぜこの教師は悪意に満ちた表情で笑っていたかと言うと、それは俺がこの学校では「札付きの不良」と言う大変、不名誉極まりない見方をこの学校の全教師がしているからで、つまりは邪魔者、厄介者が消えると教師達は考えているのであろう。

「神埼…お前本当にいなくなっちまうのかよ」

「神埼君がいないと…また私あいつにセクハラされるわ」

「何があったんだよ神埼ィ~」

 残念そうにする同級生たち…何故俺がこの学校を去る事になったか話すと、約1ヶ月程時を遡る。



 寒い冬の二月半ば頃、目覚まし時計のアラーム音が鳴り響き、俺を深い眠りからひっぱりあげる。

 体中が倦怠感と寒気を感じる…おかしい、十三時間も眠ったと言うのに、体の内側から本来湧いてくるであろう元気と言う名のエネルギーがまるでない。

「咲~?起きてるなら、早く朝ご飯を食べなさ~い」

 自分の部屋のドア越しのリビングから母が俺を呼んだ。

 先にことわっておくが「咲」と言う名前は「さき」とは読まず「さく」と読む、学校で自己紹介などを文章で行った日には、確実に「さき」と間違える生徒続出と言う光景が目に浮かぶ。

 そしてその挙げ句の果てに俺には「さき」と言う女子を呼ぶような、呼び名が定着してしまうだろう、まぁ今は学校では「神埼」と呼ばれている。

 今日は日曜日だ、学校はもちろんない。

 それにしても、異常な体の倦怠感だ…風邪気味なんだろうかと考えていると、携帯のメールの着信音がなった。

「お、沙羅からか…」

 沙羅とは俺の彼女…なかなかのルックスとワガママなボディの持ち主にして、中学二年生。決して俺はロリコンではない…多分。

 メールの内容はオタクの聖地、秋葉原で一緒に遊ばないかと言う、デートのお誘いだ。

 体の倦怠感が一気に吹き飛ぶ、即答で「おk、秋葉原の電気街口に十時で」と送ると、俺はリビングに飛び出して朝ご飯を完食、寝間着を脱ぎ捨てて、原宿で買った服に着替えた。

「出掛けてくるわ」

「いつ帰るの?」

「夕飯も向こうで食うから、夜遅くなるよ…明日の学校には間に合うようにする」

 母親に予定を伝えつつ、靴を履いて玄関から自転車に乗り、秋葉原へと向かった。

 携帯の音楽プレイヤーから自分のヘッドホンにお気に入りの音楽が流れる、有象無象の雑踏の世界から自分を唯一シャットアウト出来る手段だ、この世で最も偉大な発明だろう。

 秋葉原の電気街口に到着する、相変わらず日曜日は人が多くて、沙羅を見つけ出すのには時間が掛かりそうだ。

 彼女の呼び声が聞こえなくては、まずいので、ヘッドホンを外して壁にもたれ掛かる、ポケットから携帯を取り出して沙羅に連絡を取る、「今、何処?」もうすぐ約束の時間だ。

 聞き覚えのある独特の着信音が鳴り響く、だがこれは俺の携帯の着信音ではない…これは沙羅が良く使っていた着信音だ、近くにいるのか?

 よく周りを見渡すと、俺と同じような姿勢で壁にもたれ掛かる沙羅の姿が、目の前にあった…ん?周りの奴らは、なんだ?

「ね~いいじゃん、どーせ暇でしょ」

「俺達と遊ぼうよ~」

うわ、ナンパか…でも見てて面白いのでしばらく放置してみよう。

「うざい…死ねよお前ら」

二人のナンパ男のがギョッとした表情になる、すると二人のナンパ男は態度を一気に変えてみせる。

「んだと、てめぇ」「下手にでてりゃつけあがりやがって!」

 ナンパ男のひとりが沙羅の手を無理やり掴もうとする、しかしその瞬間、男の体が宙を舞う。

 男は地面に叩きつけられてから、ようやく自分の身に何かが起こったのを理解して、真っ青な顔色になる。

「て、てめぇ!」

 もう一人のナンパ男が沙羅を殴ろうとする、ここら辺で入って止めておくか。

 俺は男の振りかぶった手を掴む。

「その辺にしときなよ、でないと彼女に殺されるよ」

「はぁ? 誰だよお前」

「そいつの彼氏」

 ナンパ男の一人は悪態をついてから、俺の手を振り払い、もう一人の男を担いで消えて行った。

「相変わらず強いなぁ~沙羅、また伝説ふえるぞ」

「もぅ、気がついてるなら、彼氏らしく助けてよね、それに伝説ならあなたの方がずっと多いでしょ」

「そうか?そうかもな…アハハ、ゲーセン行くか」

「そうね」

 ちなみに、沙羅は普通に戦えば、俺より遥かに強い、だが本人曰わく「女らしくありたい」と言う理由で、こういったゴタゴタはなるべく避け、普段は俺に任せる。

 いったどこで、そんなに強くなったのやら。

 電気街口を東に抜けて、大通りの信号を渡り右へ進むと、目的地だ。

 S○GAの新館、ここは他のゲーセンとは違い、コスプレの貸し出しを行っていたりする。

 まぁ、もっと近くにゲーセンはあるのだが、わざわざ、ここを選んだ理由は、勿論コスプレを楽しむ為だ、でなければ当然、意味がない訳だが。

 沙羅のコスプレに期待しよう。

 三階のプリクラコーナーの少し奥、女性専用のフッティングルームで沙羅は着替える。

 いったいどんなコスプレなのか…おっと、俺も共用のフッティングルームで着替えるとするか。

「ふふふ、このコート好きなんだよな」

 キング○ーツの心を失ったもの達のコートを着用、これだけで充分、目立つし、着ただけで「シ○ン?」 なんて良く聞かれたりする、そんなに似てるのだろうか。

「沙羅はまだか…女の子は時間掛かるよなぁ…」

 しばらくして、沙羅が背中に飛び付いてくる。

 皆さん…女の子が背中に密着すると、どうなるか…お分かりだろうか。

 そう、それはもう…ふわふわとした柔らかくて、ロマン溢れるあれが、ダイレクトに…。

「鼻血でてるよ、咲」

「ぬぉ! やべ…ティッシュティッシュ」

「はい、ティッシュ」

「あ、サンキュー」

 とても大きい…いかんいかん…流石にこれ以上大量に出したら、引かれてしまう。手遅れの気もするが。

「もう、本当にエッチなんだから」

 ここで、ようやく沙羅の全身が見える…こ、これは!?

 ひぐ○しのなく頃にの、エンゼ○モートの制服…ああ、神様ありがとうございます、もう死んでも悔いはありません。

「おーい…咲、帰ってこーい」

「はっ! 一瞬あの世の川が見えた、あっあぶねぇ~」

「なにいってんの?」

 笑いながら、突っ込みを入れる姿も愛らしい…。

 ゲーセン内で、いくつかのアーケードゲームをプレイした後、外をコスプレでぶらつく。

 当然注目を集めるが、これはこれで楽しい、写真を何回も求められる、その都度、ポーズをする。

 いつまでも沙羅といたい…そう思いながらも、楽しい時は過ぎ去って、二人共に普段の服に戻り、駅のホームに向かう。

「ありがとう、咲」

「ありがとう、沙羅」

 同じ言葉を交わす、彼女が駅のホームの奥へ消えて行くのを姿が見えなくなるまで、見ていた。



 そして、この日を境に、彼女…宮野沙羅との連絡がとれなくなった。

 理由は不明…沙羅は極度の人嫌いだが…勝手に連絡を切ったりする奴じゃない。心辺りもない…。

 十日間、メールや電話も返事はない。

 しびれを切らした俺は沙羅の家まで行きチャイムを鳴らしたが、誰もでない、沙羅は両親と一緒に住んでいる為、誰かしら出るはずなのだが…誰も出なかった。


 話は冒頭に戻る、学校を辞めるのは、問題をおこしたからでもなく、勉強についていけなくなったからでもない。

 沙羅の通っていた中学へと、教師として、潜入し…彼女の身に何があったかを調べる。

 普通ならこんな事は不可能だ、だが沙羅の通っていた中学は私立学校で、それも俺の実の母が先代の理事長の祖父から受け継いだ、私立学校だ。

 それも超がつくほどの名門校…つまりは母が「自分の彼女に何があったのか調べなさい、じゃないと仲を認めない」と…俺を半ば強制的にここの教師に仕立て上げだのだ。

 正直、母のとんでもなさすぎる行動には目眩がする、だが働けば給料も出るし、若くして教師だ…そこそこの職業だと思うし、悪い話のようには、とても思えない。

 もはや選択肢は一つだった、俺は決意を固め、教師となる事に決めた。

 一応、教員免許とかも必要なので、教師やりながらでも、とらないとね。

 


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