未来の兵器と女子高生
「なんだったの、あいつ・・・」
全速力で家に逃げ込んだみちるは息を荒く吐きながら先ほどであった全裸男のことを考えていた。
力ずくで襲ってくるのかと思いきや、みちるの提案を受け入れそのまま近くの空家へと身を隠した外国人・・・
私の言ったことを信じたのなら、未だにあの空家で私を待っているかもしれない。
しかも全裸で。
(わ、私は被害者なのになんで罪悪感なんて感じてるのよっ!)
自分にそう言い聞かしても胸のもやもやは拭えない。
仕方なしに父親の洋服箪笥から大きめの服を引っ張り出して手近にあったカバンに服を詰め込むと家を後にした。
「もう10時だぜ。こんな時間になんの用なんだよ」
走ってくるみちるを見つけると、雨笠はじめは面倒くさそうに文句を言った。
高校を中退してからあまり顔を合わせることのなかった幼馴染からいきなり電話で呼び出されたら文句の一つも言いたくなる。
しかも理由も教えてくれないとなれば尚更だ。
「一人じゃちょっと行きたくなくて・・・」
一緒に歩き出しながら歯切れ悪くみちるが答える
(まさかみちるの奴一人で過ごすのが嫌になって俺に慰めてもらおうっていうわけじゃ、、補導されたりしないのか?)
「あー、分かった。ただそういうところは制服だと・・・危ないんじゃないか? 最近は見張ってたりするっていうしな。」
(露出狂ってそこまでするんだ・・・)
「うん、さっき私の制服目をつけられちゃったみたいで、替えの服持っていけば大丈夫かなって」
(ウソだろ。みちるの奴道の途中で着替えるつもりかよ。そこまでするなら最初から着替えてこいよ・・・)
「ま、まぁ替えの服があるなら心配無用だな、でもそこまでするならお前の家でもよかったんじゃないか」
「あたしの家なんてダメだよ!危ないもん!」
「そ、そういうものなんだ・・・」
(ホテルに行くより両親がほとんど帰ってこない家の方が危ないってどういうことだ・・・?)
勘違いしたまま頭を悩ませるはじめを余所に不意にみちるが足を止める
「着いたよ。ここにいるんだけど」
目の前には何年も人が住んでいない空家だ。何の変哲もないただの空家。
なぜか玄関のドアだけが見当たらない。
少なくとも今日の朝まではあったはず。何が起きた。
「じゃあ先に入って、ね?」
みちるはこちらを見ながら力強く頷く。
「ね?ってちょっと・・・」
やっと自分が何か勘違いしていたことに気づいてきた。
みちるは怪訝そうな顔をしながらも再び事情を説明した。
「・・・で、服を持っていってあげようかと思って」
「なるほど、つまりお前は襲った露出狂の外人相手に服をプレゼントしようと、そういうことか?」
「で、でも約束しちゃったし・・・」
「お前、頭おかしいんじゃないか」
はじめは体中から力が抜けてしまった。
幼馴染の裸が見られると思ったら露出狂の相手をさせられるなんて冗談にしか思えない。
そもそもドアをぶち破るような人間が相手なら俺がいようといまいと変わらないだろう。
「よし、このまま帰るぞ」
そう言いかけた瞬間、空家の玄関の暗がりから話題の人物が出てきた。
筋骨隆々、まさにマッチョの化身。
股間に目をやったはじめは固まってしまった。
(来なければよかった)
はじめはここに来たことを激しく後悔した。
そんなはじめを尻目に男は無表情でみちるを見ている。
「待っていた」
「コレ、お父さんのだけど、」
みちるは恐る恐るかばんから服を取り出すと全裸の男に手渡すと男はその場でさっさと服を着始めた。
「みちる、もう用事は済んだだろ? 帰ろう」
みちるを見るはじめは何故か涙目になっている。
「待て」
トランクスを履く動作を途中で止めて男が急に話しかけてきた。
「みちる、お前の名前は市ヶ谷みちるという名前か」
「まずその前に服来てほしいんだけど・・・」
「了解した」
みちるの返事に男は素直に応じる
「ねぇトランクスの後ろ前逆だよ?」
「了解した」
「このシャツは一番下ね」
「了解した」
(みちるの奴なんだかんだ言って楽しんでるだろ)
はじめはてきぱきと服の着せ方を指南するみちるを見てそう思わざるを得なかった