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第3話 「玉」の使い手

街をでたのはたった15分前。そしてヘルゼーはきづかされた。自分が井のなかの蛙だったということに。普通に物語や絵本の中にいるだけだと思い込んでいたいわゆる、魔物とかモンスターと言われるものが目の前にいた。


「ウソォ…」

「あれ、こんなことも知らなかった?」

かなりあっけにとられているヘルゼーに対して落ち着き払ったシルフィーが声をかけた。

「えぇ?!知ってたの?」

「当然。」

冷静に切り返されたのでよけいに驚いた。

「こーんな低級モンスターでビビっちゃダメよ。何のために玉を採取したと思ってんの?」

「えっ?!あれって闘技大会とかお遊戯会で使うだけじゃ…」

「想像力、もしかして0?」

「なっ!!」

「剣、さっきみたいに出してみなよ。」

「どーやって出したっけ。え〜っと。」

「ふ〜〜〜。」

やれやれという感じでシルフィーがため息をついた。

「んじゃ最初の方は私が敵を倒すから見て覚えてね。言っとくけど街の外じゃこれくらい日常茶飯事になるから。」

ヘルゼーはまたもや、あっけにとられた。ヘルゼーは若いがいつも重労働を強いられていたので力にはそれなりに自身はあったが、体の甲殻がいかにも岩盤のようなモンスターを剣で叩き切れる自信はこれっぽっちもなかった。それよりもヘルゼーよりも腕の細いシルフィーが恐れもせずにモンスターに立ち向かっていることに驚きを隠せなかった。次の瞬間、シルフィーが叫んだ。

「言っとくけど、回避とか防御ぐらいは自分でしてよね!」

え。マジ?!まぁそーだよね…とかなんとか思いながらもヘルゼーは玉を無意識に握っていた。彼女も玉を取出し、何かを念じるように額に一度あてた。すると、スウッと消えて木でできた中央に玉の入った杖がでてきた。とっさにヘルゼーは叫んだ。

「そんな杖じゃ倒せないって!」

って心配したら

「あんた、バカ?殴ったり、斬ったりするだけが戦いじゃないでしょ。」

と普通ーに言われた。すると彼女は杖を空高く上げ光りの弾を何発か魔物にぶちあてた。魔物消滅までの時間約2秒。あっけない。つーかすげぇ。

「キミキミ。」

シルフィーが後ろを振り向き、ヘルゼーに言った。

「出来てんじゃん。心がそのまま表れてる。」

え。まただ。無意識のうちに僕は玉を変化させていた。今度はすっごいごっつい盾を出していた。怯える心がそのままでたみたいで何だか嫌だった。でもシルフィーからでた言葉は意外なものだった。

「盾は盾でも身軽な木製の盾がでてこなくてよかった。ビビっても戦いから逃げるということはあまりしたくないみたいね。」

深層心理を読まれた気がした。そしてシルフィーは言いだした。

「私たちまだお互いの事をよく知らないわね。よしっ!!」

「へ?」

「歩きながら話すわよ!」

「はあ、」

「カトレア・シルフィー(実名)職業:討悪師、年齢16歳。魔力:測定不能…」

「ちっ…ちょっとまったぁ〜!!」

「何?」

「何今の何今の?」

「はぁ?」

「魔力:測定不能って!!」

「えぇ。文字どうりよ。」

「何で測定不能なの?!」

「計測器が壊れるのよ。私が使うと。」

「は………???」

ヘルゼーは言葉を失った。計器類は最大5000まで測定出来るようになっている。普通3000と言ったらすごい魔力だと言われる。(ちなみにヘルゼーは1500。いたってフツーー。)それが計測不能だとォォォォ?信じられるかぁ!?そんなヘルゼーをよそにシルフィーは話をすすめる。

「父:カトレア・クロック、48歳。故人。髪、灰色。職業:玉を使った武器屋。剣道5段。怒ると目の色がかわる。普段の目は青。(怒ると紫)戦争に巻き込まれて死亡。頭はいつも爆発したような寝癖があった。」

「死んじゃったんだ…。」

「うん。それからっと、母:カトレア・フロスキー。48歳。故人。職業:魔術家(占い師のようなもの)魔法検定8段。(最高10段)目の色:紫、髪:黒。戦争時前線に召集され、そのまま戦死。まぁ、私もあなたと同じ孤児よ。っと、家族のことはこのぐらいにしておいて、ヘルゼー君、キミのことをおしえてね。」


「えっと…」

「あぁ、話さなくていいわ。」

「は?」

そういうとシルフィーは玉を取出した。

「まさか…」

「そのまさかよ。玉の性質の一つ見透かす力。アドベア・ヘルゼー、15歳。あら、1コ下ね。父:アドベア・カイト、30歳。故人。職業:ジャーナリスト。戦争に巻き込まれて死亡。母:アドベア・クリス。29歳。故人。まだ若かったのに。職業:―――ん?見えない。知られたくないのね。目の色、青。髪―――秘密の多い母親ね。」


シルフィーが一通り見ている間ヘルゼーはあ然とし、言葉一つでなかった。

「何でそんなことまでって顔してるわね。」

えーーーー。何で僕が考えてることまでわかるのさぁ。反則だよー。とか思ってたらシルフィーが教えてくれた。


「反則も何もないわ。さっき玉を採取したときに言ったじゃない。『能力を写し取れるもの』って。あの玉には相手を見透かす能力も秘められていてね、修業した人が使えば個人情報なんてカンタンに引き出せちゃうって事ね。」

すっかりバレてるし。この人に隠し事やウソは無駄だなぁとヘルゼーは実感した。すると突然ヘルゼーはめまいを感じ、その場に座り込んでしまった。

「あ…れ??立てな……。」

「当然ね。訓練も受けてないシロウトが玉の変形を1日に2回もするなんて、死にたがっているようにしか見えないもの。どこで身につけたのか知らないけど、ちゃんと修業しないと、その内本当に死ぬよ?外の世界はキミがいた『夜も安全に眠れる町』とはちがうんだから。」

なんかバカにされた気分だ。果てしなくムカついた。

「大丈夫。今はできなくてもいずれ出来るようになる。確実にね。心配しなくて平気よ。私も修行中の身だし。あなたの修業に付き合えば私も修業になるしね。」


それじゃ、僕は修業の毎日だなとヘルゼーは思った。ど〜みても、スパルタ教育をしそうな顔をしている。特に最後の笑顔がね……、何とも言えない気分でヘルゼーは聞いていた。すると彼女が突然いった。

「さて、そろそろ寝床の準備をしなきゃ。」

「え?!まだ昼だよ?!」

「バカね、立てなくなるまで魔法使ったら旅はストップ。今日はここまで。それ以上無理矢理歩いて死にたいんなら別だけど。」

「野宿?」

「当然。」

「女の子なのに?」

「仕方ないでしょ?旅してるんだから。」

「襲われたら…」

「襲う気なの?」

「僕じゃなくて!!!」

ヘルゼーは顔を真っ赤にしていた。それをよそにシルフィーは笑っていた。くすくすと。

「何が可笑しいの!!!」

ヘルゼーが怒ると

「ごめんごめん。大丈夫よ。あなたに襲われるとは思ってないし。魔物でしょう?平気よ。私の魔力をなめないで!」

そういうと、彼女は玉を手にし、大きな大きな、そうまさに死神が持ってるんじゃないかと言うような鎌を出してみせた。

「すご…!でもでも、寝てるときに玉持ってなくて魔物とかに襲われたら?」

「とんだ心配性ね。みてて。」

そういうと、彼女は玉を持たずに立ち上がり何もない手から光の弾を何発か打放った。

「えぇ?!」

ヘルゼーが驚いているとシルフィーが教えてくれた。

「だいぶ魔力は持っていかれるけど玉がなくても戦えるの。だから平気!」

ヘルゼーは思った。味方でよかった。敵だったら相手にしたくないランキング、ぶっちぎりでNO.1だ。そしてその日はそこで泊まった。ヘルゼーは座り込んでから、1歩も動けなかった。体が悲鳴をあげているのが一発でわかった。

「くっ……」

そんなヘルゼーなんて全く気にせずにシルフィーは着々と夕飯の準備をしていた。……といっても皿を並べているだけなのだが。

「ねぇ。」

「うん?」

「何か作んないの?」

「作るよ?」

「どーやって?」

「こーやって……!」

ポムっ!軽快な爆発音が目の前でして、もくもくと煙につつまれた。もしかしてまた魔物?!一瞬の不安とともにヘルゼーは叫んだ。

「シルフィー?!シルフィー?!大丈夫かぁ?!」

するとトンでもない返事が返ってきた。

「何が?」

えーーーーー。本日2度目の超ビックリ発言。心配して損したかもしれ……した!!目の前の煙が晴れてニコニコ顔のシルフィーが現われた。同時に、すんごい料理。超豪華フルコースと言った感じだ。

「こっ…コレって。」

「魔法よ。ちゃちゃっとね。今日は旅の初日だからちょと豪華ね。」

いつのまにか夕暮れ時。辺りは暗くなり始めていた。

「電気つけなきゃだね。」

「何言ってんのヘルゼー。」

「え?」

「ここは森よ?電気なんてないわ。」

あ、そっか。水も電気もないんだ。

「夜とかど〜すんの?」

「コレ。」

と言いながらシルフィーはランプを取出した。中には小さな玉が入っている。

「よっ。」

人差し指で玉を指すと玉が炎のようにゆらめき、輝きだした。でも、どうみても小さい。手のひらサイズだ。

「それと…ホイッ」

ランプを指さすと、ランプが大きく大きく大…ってでかすぎだろコレー?!

「ちょちょっ!」

「ん?」

「『ん?』じゃなくて!デカイ!!」

「あぁ、キャンプファイヤーみたいに暖まるにはこれぐら大きくないとね。」

本当にキャンプファイヤーするときのくんである木みたいな大きさだ。

「そっか、暖もとらなきゃなんだ。」

「そーゆーこと!」

「あったけ〜!」

「今は動けないだろうからもう少しそこに居てね。」

「どこいくの?」

「お風呂。」

「はぁ?!ここ森のなかだよ?!」

「鈍いなぁ……。」

「あ!!玉ね。」

「そーゆーこと、ちなみに、のぞいたら地獄が見えるから。(にっこりと妖笑)」

「のぞかないよっ!!ってか動けないし!!」

「そ〜だったね。」

なんて今知ったみたいな言い方しやがって…。たまにシルフィーってイラっとくるな…。

「冗談なんだからそんなに怒んないでよ?」

なんて言いやがった。

「ってかキャラ変わりすぎ!」

誰がキャラ変わるほど怒らせたと思ってんだーーーー!!!!心の底からさけびたかった。そんなことを思っていたらいつのまにかシルフィーは居なくなっていて少し離れたところで入浴しているみたいだった。ヘルゼーはフルコースを目の前にして、限界だった。ヘルゼーは少しだけ体が動いたので1番近くにあったフルーツにかぶりついた。

「うんめぇ〜〜〜〜!!」

でもこれ以上は動けないのであとのご馳走はシルフィーが来るのを待つしかなさそうだった。手に取れるだけのフルーツを取って、元の位置に戻りフルーツを堪能したが、5分でなくなった。

「腹減ったなぁ〜。」

情けない声で呟いていると何処からともなくでっかいピコピコハンマーで殴られた。ピコっという良い音がした。以外と痛かった。

「いってっ!!」

「先に手をつけた罰ね。」

バレたか……。シルフィーは新しい洋服になっていた。

「パジャマ?」

「そーだよ?」

「どーりで。」

「何が?」

「色。」

「は?!」

「普段は黒じゃん?」

「あぁ、白だから?」

「そーゆーこと。」

シルフィーはラフな格好だったが白の洋服に黒の髪がよく映えていた。

「いつのまにか口癖うつってるし。」

「あ……。」

「まいっか、んじゃ夕食にしよう。」

「待ってました!」

「いただきます!」

「いただいてます!」

「何ソレ〜!」

シルフィーはツボに入ったらしく大笑いしていた。

「だって、先に食べちゃってたから……。」

「はははっ!そーだね。間違ってないよ君。」

なんてたわいもない話をしながらの久しぶりに楽しい夕食になった。だが1つおかしい事といえば、ヘルゼーの異常な食欲だった。1人で5人前は食べている。

「普段こんなに食べたことないよ。こんなにお腹すいたこともないし。」

「魔法は恐ろしく体力を使うからね、たくさん食べないと持たないよ?」

「うん。実感したよ。」

夕食をすませるとヘルゼーは少し動けるようになっていた。

「おっ。立てる!!」

「無理しちゃダメだよ。そのまま行ってお風呂入っておいでよ。服も用意しておいたから。気に入らなかったら魔法で好きなのに替えてあげるから安心して。」

「あっありがとね〜。」

ってドラム缶かいっ!なんてベタな。まぁ仕方ないか…。でも、これにシルフィーも使ったんだよね…、ちょっと気まずい。まっいっか!!熱すぎるかと思ったら以外に適温。あったけーーーー。何か色々あって今日は疲れたな、早くあがって寝ちゃおう。

ザバッと音をたててあがった割りにはシルフィーは気付いてなかった。シルフィーは地図用の玉を眺めていた。その玉には、世界地図が映し出されていたがいくつか、赤い矢印が点滅していた。もっとよくみてみたいと思い、シルフィーに気付かれないようにそ〜っと近づいたがヘルゼーが見える位置になる前にシルフィーが気付き声をかけられてしまった。

「ヘルゼー、出たんなら早く言ってよ!!あなたは今一刻も早く体を休めなきゃならない時なんだから。」

「あっごめん……。」

「謝る所じゃないけど、まぁいいや。さぁ。」

そう言うと、シルフィーお得意の魔法でカンタンにベットが出てきた。

「おやすみ。」

「おやすみ……」

シルフィーは少しうわの空だったが特に気にしなかった。なにより疲れて眠すぎた。目を閉じた瞬間、意識が吹っ飛んだ。

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