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第12話 闇に堕ちた町、光を愛する者。〜4〜

レイラは愕然とした。それと同時にシルフィーかレイラを見て鬼のような形相で言い放った。

「あんた等にみくびられるほどヤワな鍛え方してないわよ。」

レイラ達の顔は一様に恐怖の顔へと移り変わった。そしてそこがレイラの限界だったのだろう、次々にレイラの分身たちが消えていく。そして最後に残った一人がシルフィーが言った通り、北東の窓辺にいたレイラ。コイツが本物だ。

「クソッ!!」

すると目眩でもしたのかレイラがそこに座り込んだ。

「ふうっ。これもチェックメイト。2勝目ね。」

「まさか私がここまで追い詰められるとはね……。でもたぶん次はあなたでも助かるかどうか分からないわね。」

「どういう意味??」

「そのまんまよ。」

「たかだか鬼ごっこでしょう?」

「あなたは体のどの部分でも誰にも触られちゃだめなのよ。」

「もし触られたら?」

「あなたの負け。この場所に転送される仕組みになっているわ。あなたにも呪い似たた魔法をかけてあるからね。」

「それでこんなに体が重いのね。てっきり魔力でも吸われ過ぎたのかと思ったわ。」

「フッお気楽ね。例え髪の毛一本でも触れられたらここに転送されるわ。ちなみにその時はいくらあなたでも助からないような処刑台も一緒に用意しておくから。」

「それは怖いこと。」

「ぜんぜん怖がってる顔してないんだけど。」

「フフ。まあいいわ。ところでこの魔法はいつになったら解けるの?」

「心配しないでって敵に言うのもなんだけど、この監獄を出れば自動的に解けるようになってるわ。というか私の魔力じゃそれが限界の範囲よ。ここまできて嘘はつかないから安心なさい。私も少し回復したらあなたを追い詰めに行くから覚悟しなさい。それから、ここの最深部、今も奥まった場所だけどその更に奥の奥の奥にあなた達の荷物が置いてあるからそれを取ってから行ったほうがいいんじゃない?この監獄は外からの魔法の干渉を受けない石で作られてるから一度外へ出てから取ることはできないわよ。まあそこにも兵士はいるだろうけどね。」

「ご忠告ありがとう。でもそろそろ行くわ。」

「せいぜい少ない命が長引くようにね。」

今まで戦っていたフェンシング場は捕まっていた部屋よりも浅い所にあるようだ。捕まっていたときよりもこの部屋は暖かく感じられたからだ。深い所に行くには、空気の流れを読むしかない。空気が流れている方は、どちらかというと出口に近いはずだ。つまり、その逆方向。空気の流れがあまり無く、よどんでいる方に行けば、きっと最深部に出れるはずだ。

方向はわかった。しかし今最も重要な事はこの流れ出る血液をどう止めるかだ。先程の矢の嵐を食らって以来、肩に当たった一本の矢が思っていたよりも深くシルフィーの肉を裂いていた。肩から血がポタポタと滴り落ちる。刺さったわけではないので、腕は使い物にはなるがこの出血の量では敵兵に自分の居場所を教えているようなものだ。あいにくシルフィーは回復魔法が使えないので(昔挑戦したが傷を広げる結果になりタイプが合わないという結論が出された。)止血すらままならない。仕方ないので玉で包帯を作り出しそれを巻いておいた。簡単だが多少の役には立つだろう。止血はできていないだろうが、少なくとも血が床に滴り落ちることはなくなるはず。

と、そんなことを考えながら長く暗いジメジメとした廊下を歩いていると階段を見つけた。ラッキー!!目を輝かせたシルフィーだったが、下から声が聞こえてきたので慌てて隠れる場所を探す。が、無い。

「どこに逃げたんだ?!」

「この辺に居るはずだ!!何が何でも探し出せ!!」

「でも、監獄守様でもきつい戦いになってるんだろう?俺らなんかで役に立つのかなぁ??」

会話の内容からして、まちがいなく兵士だろう。

「時間稼ぎくらいにはなるだろうよ。」

階段を上ってくるようだ。カツンカツンと靴の音がする。ヤバイ。カツン…カツン…

どうしよう。これはまさしく絶体絶命!!そうこうしている間にも兵士は階段を上る。カツン…カツン…カ…

「こっちよ!!さあ早く!!」

どこからとも無く女性の声が聞こえる。女兵士かと思い慌てて振り向く。するとそこには……

「え??」















一方ヘルゼーはハイフェと共にもう地下1階まで来ていた。ヘルゼーが檻をの鍵開け、ハイフェが幻をつくり中に居る人間を逃がす。シルフィーの居るところと違いここは割りと光があり明るいので魔法を使わなければ簡単に逃げた事がばれてしまうのだ。が、そうはいえハイフェもそろそろ限界だ。もう何十人と違う種類の幻を作っているのだから当然だ。

「よし。ハイフェ、このフロアの幻を消していいぞ。」

「え?!でもそれじゃ……」

「いいんだ。どうやらシルフィーの方に敵があつまっているらしい。」

「なんで?」

「蝶だよ。さっきとばしたやつ。全然帰ってこないだろ?きっと何かあったんだよ。だとしたらこっちに大量の兵が来ることはまずない。」

「えっ?!でもそれって……。」

「うん。シルフィーがあぶないかもね。」

「いいの?!」

「良くないよ。だけど今は信じて、今やるべき仕事をやらなきゃ。」

「そう……だね。じゃあ魔法を解くよ!!」

「周りは見といたけどやっぱり兵は居なさそうだからいいよ。」

バァチィィンという何かがはじけたような音がした後元通りの静けさが戻った。ただそこに居るはずの罪人と称されていた人間が居ないことを除いて。

「体は大丈夫か?」

「うん。思ったより魔力は消費されてなかったみたい。少しだるいけどまだまだ幻を作れるよ。」

「じゃ、このフロアのやつらは順番に上にのぼって、兵がいるか確認が済み次第一人ずつ周りに悟られないようにうまく逃げてくれ!」

「了解〜。」

さて、このフロアのやつは逃がした。後残ってるのは……

「地下4階に行きますか!」

「あと2フロアくらいなら大丈夫。早く行こう!ヘルゼー兄ちゃん!!」

「そーだね!」

再びヘルゼーとハイフェは走り出した。

















暗くてよく見えないが、そこには金髪の長いウェーブをした豊かな髪の女性が居た。鍵が開いていた。中に引きずり込まれた。

「ありがとう。でも、どうして助けてくれるの??」

「どうしてですって?私たちを助けてくれるんでしょ?」

高く澄んだ声、暗くてもわかるほど肌の色が白く瞳は茶色だ。

「助けてくれないの?」

「いや、そりゃ助けるけど……。」

「だったら協力する。偶然だけどあなたが捕まる時にたまたま腕がこの牢に触れたの。そのときに錠が開いたのよ。」

「じゃあ今開いたわけじゃないのね。驚いた。この牢に触れた記憶が無かったもの。」

シルフィーは密かにヘルゼーの仕業かと期待したのだが違ったようだ。

「そうでしょうね。あなたが触れたときは気を失っていたから。わたしはアリア。メウス・アリアよ。」

「初めましてアリア。私はシルフィー。時間が無いわ。あなたを助けるにしても、このフロアに人達をここの集めなければならないし。」

「心配しないでシルフィー。ただ助けられるだけじゃお荷物になると思ってこの監獄に捕まっている人達のほとんどの人はここにいるわ。」

シルフィーはきつ゛いていなかったが、目が慣れてきてようやくわかった。アリアの後ろには50人ぐらいの人達が集まっていた。

「牢に入っていなくてばれないの?」

「あなたが監獄守との試合を受けてくれたおかげで兵が手薄になっているの。」

「誰が全員の鍵を開けたの?」

「あなたの残したほのかな魔法の痕跡を見たら光の守護魔法だってわかったの。それよりシルフィーあなたひどい怪我ね。回復魔法は使えないの?」

「残念ながら。」

「私も得意なほうじゃないから傷は治せないわ。一応出血だけ止めてあげる。あなたの血が敵に場所を知らせてしまうから。ただ傷自体は治ってないからあとでちゃんと手当てしてね。」

アリアはそういい終わると光の玉をだしそれから小さな蛍のような発光体をシルフィーの傷にめがけて飛ばした。みるみるうちに出血はおさまり、深く切れたシルフィーの肩の肉があらわになった。

「痛々しくて見ていられないわ。本当なら完治させてあげたいけれど……。」

「充分よ。ありがとうアリア。」

「一つお願いがあるの。シルフィー。この監獄の最深部に一人のおじいさんが捕らえられているはずなの。その人をここに連れてきて欲しいの。」

「なぜ?ここは女の監獄では?おじいさんなら男の監獄のほうに入れられているんじゃないの?」

「いいえ。そのおじいさんだけは特別なの。この街にとってとても大切な人なの。詳しい話をしている暇は無いわ。会えばきっとわかるから。」

「わかった。」

「気をつけて、どこにどんな仕掛けがしてあるかわからないわ。」

「いろいろありがとう、アリア。きっとおじいさんをつれてここに戻ってくるわ。」

「ありがとう、シルフィー。」

感謝の言葉を聞く前にすでにシルフィーは牢を出ていた。あまり長い間同じところにとどまるのは危険だと考えたからだ。幸い近くに兵士は居ないようなので先程の階段を急ぎ足で下りていった。急ぎ足で進むが、足音はなるべくたてないように慎重に一歩一歩刻んでゆく。2・3分降りつつ゛け、ようやく最下層にたどり着いた。身も凍るような寒さと静けさ。何の音も気配も無いまるでそこの階だけ時が止まり動くことを忘れてしまったのかと思う程異様な空間だった。明かり用の玉まで無いので真っ暗だ。本当にこんな空間に人など居るのだろうか、と疑ってしまうほどだった。

「明かりよ、照らせ。」

呪文を唱えなくても明かりを指先に灯す事などシルフィーに取っては簡単なことだったがなぜか唱えてしまった。シルフィーの勘だったのだが、唱えなければ魔法が使えないような気がしたからだ。

指先にほのかな光が輝いた。以外と広い空間だった。兵士の居る気配はまったくしなかったのだが一応念のために激しい光の使用は避けた。

コツン……コツン……コツン………

シルフィーのブーツが地面を踏みしめる音だけがその空間に鳴り響いた。極度の寒さのためか、その場の異様な空間のせいかはわからないがとても息苦しく、いつのまにかシルフィーは肩で息をしていた。

「誰か……おるのか……?」

「うわっ!」

急にしわがれた声が聞こえてきたので思わず飛び上がってしまった。人のいる気配なんてまるでしなかったのに……。

「おぉ、兵士ではないようじゃな……。」

年老いた男性の声がした。ハスキーボイスだった。

「おじい……さん……?」

「はは……そうじゃの。ところでお嬢さん、何故こんなところへ来たのじゃ……?今日はなんだか兵も、ここの空気もざわついておるわ……。」

「えっと……あなたを助けに参りました。」

「ほほ……、ご冗談を。年寄りをからかうもんじゃないぞ……。」

「冗談ではありません。上の牢にいるアリアという女性に頼まれました。」

「アリア……、アリアとな?なるほど。ならば信じよう。名を。」

「カトレア・シルフィーと申します。」

「カトレアか……。懐かしき響きよ。」

「え?」

「何、こちらの話じゃ。ところでシルフィー。ワシをどうするつもりじゃ?」

「とりあえず、アリアのところへつれてゆきます。」

「そうか。」

そういって老人は牢の奥から現れた。その老人の姿にシルフィーは驚きを隠せなかった。

「あ……あなたは?!」

「騒ぐな、上の兵にきつ゛かれては元も子もないじゃろう?!」

髪は短くちじれてはいるがしっかりと生えていて色は白、憔悴しきってはいたが意志のある強く優しい灰色の瞳。単なる老人ではなかった。前町長だ。




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