第10話 闇に墜ちた街、光を愛する者。〜2〜
「う……ん?」
ようやくシルフィーは目を覚ました。ヘルゼーとは違い一発で状況を判断した。
「地下5階ぐらいかな?最深部だと嬉しいんだけど。」
のんきに伸びをする。決して今の状況がわかっていない訳ではない。ここからいつでも抜け出せるという自身があるのだ。
今のシルフィーの状況はこうだ。
手錠に足かせをつけられ壁にはりつけになっていて、首にまで首輪がはめられている。
しかも頑丈な厚い鉄製の物でわざわざ魔力を吸い続ける性質の玉まではめてあり、魔法も使えないようなひどい状況だ。が、問題は無い。魔力を吸われたところでシルフィーの余りある魔力が果てるはずが無い。この街にくるまでの間にもしっかり基礎練はしていたし、逆に魔力は増幅していた。魔力の使いすぎで倒れることは聖玉を解放するとき以外はまず無いだろう。
すると、目の前に1匹の蝶が飛んできた。
「(これって確かヘルゼーの……)」
そして早く手錠や足かせを外せと態度で示された。
「(むぅ…ヘルゼーの分際で……。)」
だが、あまりの慌てぶりなのでひとまず従うことにした。不本意ながらも。
シルフィーは魔力を吸われてはいるものの、脱出するのには充分な魔力があった。そして、全身に行き渡っている魔力を右手に集め、まず右手を自由にした。そして左手についている手錠に軽く触れた。光の守護魔法のおかげであまり魔力を消費せずに全ての足かせをはずせた。
すると、急に辺りが慌ただしくなった。
きっとこの蝶を探しにきた馬鹿共だろう。
が、なぜか蝶がかなり焦ってシルフィーにもとの体勢に戻れというので同じ格好をした。すると蝶が自ら擬態を解き、鎖や足かせに擬態した。これならいつでも戦闘体勢に入れるとシルフィーは思った。と同時にこの玉に自らの意志が入っていることに驚いた。ヘルゼーの体内にいたのだからヘルゼーの意志が入っているのは不思議ではないのだが自らの意志がある玉を見るのは初めてだった。
が、そんな穏やかな状況では無い様だ。急に兵達が集まり、通路の脇に整列をした。何が始まるのかと見ていたら角から女性と思われる人が現われた。髪は白でベリーショートの天然パーマ。瞳の色はクリーム色をしていた。背が高くて騎士隊長の様な格好をしている。
「全員、敬礼!」
ビシッと言う音が聞こえるぐらい綺麗に揃った。
「ご苦労さま。」
しかも、シルフィーの檻の前で止まり、中に入ってきた。
「君が街を荒らした犯人だね?ずいぶん簡単に捕まってくれたじゃないか。………何が目的だい?」
「別に?あなた方の町長さんにも言ったけど、私たちはただこの街を通りたかっただけよ。」
「本当か?」
「えぇ。」
「ウソだな。」
「はぁ?!何でよ?!」
「貴様!言葉遣いに気を付けよ!監獄守様だぞ!」
「関係ないわね……!」
すごみを効かせて言った。なぜかひるんでくれた。
「おっお前!この状況が分かっているのか?!」
「わからないとでも思うの?」
「貴様……!!」
「騒がないでもらえるか?それとも……………死ぬか?」
「すみませんでした!!」
「わかってくれればいいんだよ。ところで、君が良ければなんだが……。」
視線をシルフィーに向けながら言った。
「何よ?」
「私と戦ってみないか?」
「はぁ?!!」
「君の魔力は飛び抜けている。本気を出せばこんなちんけな監獄ぐらい簡単にふきとばせるだろう?まぁ、だから玉に吸わせてるんだけど。力試しをさせてはくれないかね?」
「私へのメリットは?」
「ふむ。ここから出してやろう。」
「交渉決裂ね。」
「何?」
「私がここからでるのは当然よ。命賭けてるし、魔力吸われて弱ってるところだし。」
「言ってくれる。」
「私の望みは私を含むこの監獄にいる全員をここからだすこと。ソレが条件ね。」
しばらく考えたあと結論を出したようだ。
「……わかった。そうしよう。」
「で?形式はどうするの?」
「3回戦としようじゃないか。」
「なんだってかまわないわ。」
「種目は、フェンシング・魔法・鬼ごっこといこうじゃないか。」
「2つはいいとして、何で鬼ごっこなのよ。」
「もちろん条件付きだ。この監獄にいる兵士300人に一回も触れられないことと、最深部にお前等の荷物を置いといてやる。もちろん、罠とかはナシだ。」
シルフィーは軽く微笑んだ。
「いいでしょう。わかったわ。」
「じゃあ早速1回戦の始まりだ。フェンシング場に行くぞ。」
フェンシングか……。やったこともないし、正直勝てるかどうかはわからない。けれど負けるわけには行かない。負けたらそのあとの私を待つのは死だ。一応練習風景をみてなんとなくルールをつかむ。
「やったことはあるのか?」
「ないわ。」
「そうか。ではこうしよう。初心者にはハンデだ。お前は魔法の使用を許可しよう。」
私の魔力を計るつもりだ。2回戦目に備えて。
だが、シルフィーは挑発に乗ることにした。
「あら、いいの?それはありがたいことだわ。」
「では、始めるぞ。」
戦ってみてよく分かった。こいつはかなりのてだれだ。素早い攻撃&リカバリー。相手に隙をあたえさせない。以外と戦いづらいな……。でも、こーゆー場合は!
シルフィーは攻撃をひらりとかわし攻撃させると見せ掛け、フェイントを入れたのち相手の顔めがけて風を発生させた。簡単に言えばつむじ風。相当な勢いに相手もさすがに呑まれて……
「チェックメイトよ。」
「まさかこんなやり方で負けるとはね。でも、まだまだこれからが本番よ!」
少しシルフィーは驚いた。なぜなら今までにシルフィーの魔法を目の前にしてひるまない奴は初めてだったからだ。
「そうね。でも次は負ける気がしないわ。」
「そうかしら?」
不敵な笑みを浮かべているところからしてなかなか魔法にも自身があるようだ。
「あぁ、もし2回連続であなたが勝っても、3回戦目まで戦ってもらうわよ。」
「別にかまわないわ。」
「あら、以外ね。間違いなく拒否されると思ってたんだけど。」
「どうせ、私に拒否権はないでしょう?」
「先読みってやつ?」
「どうでもいいわ。さっさと始めましょう。」
「そんなに焦らなくたっていいじゃない。」
「私たちには時間がないのよ。こんなとこで止まってられないの。」
「ふ〜ん。あたしには関係ないけどね。」
「そうでしょうね。」
「戦いの説明に入るけど、魔法対決は武器の使用を一切認めない純粋な魔力勝負でいかせてもらうわ。まぁ、魔法で作った武器なら使用は許可するけど、普通の武器には強度が劣るから余りいい策ではないわね。あとは特に無いわ。何か質問は?」
「特に無いわ。」
「じゃあ、始めるわよ。」
「さっさときなさい。先手は差し上げるわ。」
「なめられたものね。」
冷笑しながらも相手の魔力が高まっていくのを感じる。空気がぴりぴりしてきた。そして、自分の回りにシールドを作りそこから刄を何百本とうちこんできた。だが、シルフィーからしてみれば甘すぎる攻撃だ。
「くどい。」
そう一言言うと自分の身の回りに光の魔法陣を描き、そこから大きな光の刄を3本出しそのまま床を伝わせて降り注いでくる刄を跳ね返した。
「まさか、こうも簡単に破られるとはね。でも、まだまだこれから!」
「今度はこちらからいかせてもらうわよ。」
すると、シルフィーは自分の両手に緑の光の玉を作り、一つに合わせた。まるで無重力空間にある水のようなかんじだ。
「簡単にあてるだけじゃだめよね?」
さらにそこから一つの角をもった緑に輝きを放つ馬がでてきた。ユニコーンのようだ。
「それをどうするの?」
相手だって黙ってみてはいない。シルフィーがユニコーンを作っている間に、黒い大きな球形をしたエネルギーの固まりを作っていた。そして、さらにそれを弓のような形に変化させてシルフィーに打放った。
が、その美しいユニコーンは蹄を一回ならしただけですべてを消し去ってしまった。
「なかなかやるのね。」
「この子はそれだけじゃないわ。」
そういうとシルフィーは相手に向かって指を差し何かを伝えた。するとユニコーンは相手にエネルギー砲を口から放った。
「ちょっ!」
半端無い威力。簡単に言うと幅の広いレーザー砲を撃たれた感じだ。
相手はギリギリで避けたが服が軽く焼けていた。
「よく避けたわね?いいわ。名前を聞いてあげる。」
魔法などのバトルにおいては名乗らないことが多いのだが、相手を認めたときは別だ。名前を聞き尊敬の念を表す。
「レイラよ。」
「簡単で呼びやすくていいんじゃない?」
シルフィーは大分余裕だったがレイラはかなり追い詰められていた。なぜあんな大きな魔法を使い続けて平気で立っていられるのかが不思議でしかたなかった。
大変遅くなってしまい申し訳ありませんでした!!受験がようやく終わり、一段落したので、また書かせていただきます。今までのように更新停止にはならないと思いますが、不定期なのは許してください。しがない学生なので。では。 大橋 結菜