5人の囚人
物語はいよいよ、起承転結でいうところの承へ……
・前回のあらすじ・
魔女の家で魔女に会いました
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一つ目の牢屋には、太った中年の男がいました。
青年の姿を見つけると、血相を変えて近寄ってきました。
「おお、おおっ、頼む、ここから出してくれ! もうこんな牢屋はウンザリだ!!」
悲痛な叫びと、牢を叩く音があたりに響きました。
「なんでこいつ牢屋に入ってるん?」
青年が聞くと、魔女はケタケタとおかしそうに笑いながら答えました。
「この男はね、私との約束を破ったのさ。魔女との約束は絶対だ。魂を奪われて当然だね。それにしても今さら出してくれとはあつかましい豚だよ。さて、次だ」
去り際、青年には男の心が聞こえました。
『まだ終わりたくない! おれはやっと、やっと気づいたんだ! なのに!!』
二つ目の牢屋には、うつろな目をした少女がいました。
青年の姿を見つけると、体を震わせておびえます。
「……いや……ごめんなさい……お婆様……ゆるして……」
普通でない様子に、青年はとまどいました。
「クックック、どうやら私があんたを使って乱暴させようとしてるように勘違いしてるみたいだね」
「いやいやいや、ねーよぉ。まぁこれぐらいの年でも俺はぶっちゃけオッケティングだけどな。てかこの子は何したん?」
「何もしてないさ。こいつは自分から望んで牢に入ってるんだ。理由なら本人から聞きな」
魔女と青年が話している横でも、少女はまだおびえています。どうやら、まだ話をするのは難しいようです。去り際、少女の心の声が聞こえました。
『お願い……私を外へ……』
三つ目の牢屋には、ガタイのいい大きな男性がいました。
とても落ち着いた様子で、青年と魔女に気が付くと、愛想よく微笑みかけてきました。
「クックック、まるで見世物のクマのだね」
「そんな笑えない冗談言われてもクマっちゃうぜ。で、この人は?」
「こいつとは、もともと契約で魂をもらうことになっていたのさ。もちろん本人も納得している。救うも何もないんだよ」
魔女がそう言うと、男の人は静かに言いました。
「その通りです。魔女さんには、感謝してもしきれないほどです」
去り際、男の人の心の声が聞こえました。
『早く……早く殺してくれ……』
四つ目の牢屋には、美しい女性がいました。
魔女と青年が近づくと、彼女はキッとこちらを睨みます。
「ちょっと! ここから出してよ!」
「嫌だね。出してほしかったら歌を歌うこった」
「それだけは嫌だって言ってるでしょ!!」
彼女の剣幕に、青年は驚きました。うわ、ないわー。でもこの不思議とゾクゾクする気持ちはなんだろう。
「こいつを閉じ込めてる理由かい? こいつは美しいだろう。それにキレイな声で歌を歌うんだ。だから、観賞用にさらってきた。ただ、せっかくさらったのにここじゃちっとも歌いやしない。だから懲らしめるために閉じ込めているのさ」
ひどい理由だ、と青年は思いました。しかし、彼女もどうしてそんなに歌を嫌がるのだろうと、疑問も感じました。
去り際、彼女の心の声が聞こえました。
『クソクソクソクソクソクソクソクソクソクソ! チクショオオオオオオオオオオオオオ! どうすりゃいいっていうんだよ!!!!!!』
五つ目の牢屋には、小さな老人がいました。
老人は青年を優しい目で見つめながら言いました。
「誰だてめぇ、ブチ殺すぞ」
ひどく口の悪い老人でした。
「ふん、こいつはね、よりによって私に喧嘩を売ってきたんだよ。クックック、まあ、難もなく返り討ちにしてこのザマだけどねえ」
「うるせぇ。もう一回勝負しろやこのシワガエル!」
魔女に対しても強気な老人に、青年は少し感心しました。
去り際、老人の心の声が聞こえました。
『そろそろ腹が減ったな』
全部の牢屋を見て、二人は小屋の中に戻りました。
「とりあえず、お前が助けたいという人間たちは全部見せたよ。さて、どうするんだい。私に頼んで、あいつらを牢から出すかね? もちろんタダでというわけにはいかないがね」
魔女の言葉に、青年は一つ疑問を感じました。
魔女の言った通り、地下に閉じ込められている人たちは全員見た。そして、心の声も聞いた。
だけど、森の奥から聞こえた声はそれだけじゃなくて……もっと、深い悲しみの声も確かに混じっていた。それこそ、聞いただけで狂ってしまいそうな声が。もしかして……。
青年は意地悪に笑う魔女をジッと見ました。
もしかして……
もしかして、この恐ろしい魔女が……?
っぷ、ないない! それはないわ(笑)青年は考えを打ち消しました。
まだ続きます