やさしい青年
はじめての投稿で、ちょっと文章とかセリフ固いかもですが、ご勘弁を!
あるところに、ひとりの優しい青年がいました。困っているひとがいれば放っておけず、自分の身を犠牲にしてでも助けました。近くに困っているひとがいなければ、遠くまで誰かを助けに行きました。
そんな青年に、人々は必ずこう聞きます。
「なんであなたはそんなに優しいの?」と。
しかし青年はいつも悲しげに微笑むだけで、何も答えないのでした。
ある日、青年は深い森の中へ行くと言い出しました。世にも恐ろしい魔女が住んでいると言われる、危険な森です。
「もしも魔女に会ってしまったらどうするのですか!」「魔女に見つかったら魂をとられる!」「あの森から無事に帰ってきた者はいないぞ!」
人々はそう言って、青年を止めました。しかし青年は、微笑んでこう言ったのです。
「いや、まぁむしろ魔女に会いに行く的な感じ? なんとかなるっしょ」と。
森の中の奥深く。そこに魔女の家はありました。一見すると、普通の木こりが住んでいるような小屋です。しかし、入口に「魔女の家」と書かれているのですから、間違いはないのでしょう。
青年は迷うことなく、魔女の家へと入っていきました。
小屋の中は不思議な空間でした。外からみたより中は広く、あちこちに大きな壺と、分厚い本が塔のように重なって置いてあります。読めない字で、魔方陣のような模様も床にいくつか書いてあるようでした。魔女は、部屋の中心にある椅子にゆったりと座っていました。
とがった鼻に、鋭い眼、ゴワゴワと長い白髪が床まで伸びています。
「いらっしゃい」
そう言って、魔女はしわしわの顔をこちらに向けました。まるで青年が来ることが分かっていた、というようです。クックック、と魔女がいやらしく笑いました。
魔女は、訪れてきた青年を歓迎し、お茶を出しました。青年が今まで嗅いだこともない不思議な匂いがします。
「大丈夫、飲んでも死にはしないよ。せっかくの客人だからね」
そう言って、しわだらけの顔を歪ませました。なるほど、噂通りの恐ろしい魔女です。しかし、青年はニコニコと出されたお茶を飲み、うめー!おかわり! とお礼を言いました。
「なかなか肝のある若者じゃないか。さて、客人。私に何の用かな? まさかお茶を飲みに来ただけではなかろうて」
青年は手元に用意した紙を見ながら、魔女に言いました。
「人を、助けに来ました。どうやらこの場所は人の深い悲しみに溢れているようなのです。どうか、下のひとたちに会わせてくれませんか?」
「……ほう。深い悲しみねぇ」
魔女はニヤリと笑い、立ち上がりました。腰は曲がっていますが、それでも青年よりも魔女の背は大きいようでした。ギラギラと光る瞳が、青年を射抜くように見つめます。
「クックック、確かに地下には人間を何人か閉じ込めてある。だが、どこでそれを知ったんだい?」
魔女の威圧にひるむことなく、青年は答えました。
「なんかその辺からめっちゃうるさい声が聞こえたので」
声? と魔女が聞き返します。おかしい、地下から声がもれるはずはないのに。魔女の疑問は当然です。その一方で青年は、やっべ、普通に素で話しちゃったわー、まぁしゃあねぇか、と一人ブツブツ言っていました。
そして、青年は観念して今まで誰にも打ち明けなかった秘密を魔女に話したのでした。
青年には、人の心が聞こえました。それも、悲しいと思う心だけが。
それを聞くと青年は、悲しんでいる本人よりも辛くて、堪らない気持ちになってしまうのです。だから、今まで出来る限り人を助けてきたのです。そして、森の奥から、聞いたこともないような悲しい声が聞こえてきたので、ここまで来たのでした。
さすがの魔女もこれを聞いて、驚きました。
「悲しい心が聞こえる、ね。面白いじゃないか。心の声なんぞ、魔女でも聞こえないというのにねえ」
何が面白いのか青年には分かりませんでしたが、魔女の機嫌が良いようなので、気にしませんでした。
「それで、その悲しい心の主たちを助けにきた、と。クックック、とんだ偽善者だねえ」
「うんまぁぶっちゃけ、そいつらの声のせいでここ三日ほどぜんっぜん眠れねえから超怖いけど勇気出して仕方なくこんな場所まで来たんだけどな」
青年は正直者でした。
「ふん、まぁいいよ、地下に連れて行ってやろう。見せるだけなら構わんさ」
「あざーっす」
気前のいい魔女に、青年はお礼を言います。その顔を見て、なぜか魔女はまたニタリと不気味に笑うのでした。
魔女が、杖で床を叩きました。すると、床のあった場所は一瞬で地下に続く階段へと変わったのです。青年は、魔女の後を追って階段を降りて行きます。暗い、暗い階段の先には、わずかな明かりがありました。
そこには、五つの牢屋がありました。
続きはwebで!(一度言ってみたかっただけ)