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DRIVEN - 感情は、長く抑えてはいけない。  作者: 黒金カズナ


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第七章 オンライン状態

また一体のドラウンドが崩れ落ちた。ザヒラは足を伸ばした。「残り二体」すぐに整然とした足音が後ろから響いた。

リサはゆっくりと目を開けた。足が地面を引きずっている。体が誰かにもたれかかっていた。見慣れたフーディーが目に入った。ゆっくりした足取り、聞こえてくる息も重い。

「デ、デニス……」リサが力なく呼んだ。

「起きてたの? はあ、自分で歩いてよ。マジ重い」デニスは一歩一歩前に進みながら呟いた。リサは体を揺すり、デニスの腕から離れた。まだ少し頭がぼんやりしていた。体が震えながらも歩こうとする。肩甲骨のあたりをさすると、鋭い痛みが走ったが、もう血は出ていなかった。

「ザヒラ先輩はどこ?」リサが弱々しく聞いた。

「まだドラウンドと戦ってる。チー・ロクとチー・ルンが手伝ってる」

「誰?」

「チー家。別のファミリーだ」デニスが答えた。

リサの耳に、後ろから音が届き始めた。轟音が断続的に響く。でも今回はデニスの動きに合わせて、前を見続けた。

「手伝わなくて大丈夫なの?」リサが弱い声で聞いた。

「わからない」デニスの声が震えていた。

リサはデニスを見た。デニスは自分の肩を自分で掴んでいた。顔が汗でびっしょりで、奥歯を強く噛みしめていた。

「デニス?」

「手伝いに戻りたい?」デニスはリサをきつく見つめ、足を止めた。後ろをちらりと覗いた。

「嫌な予感がするんだ、リサ」

二人は目を見合わせた。リサは息を整えた。リサが引き返し始め、デニスはドローンを準備した。

***

「危ない!!」チー・ロクが上から叫んだ。

その瞬間、暗い路地の影から誰かが素早く飛び出してきた。盾を持ち上げた。チー・ロクからは、チー・ルンが倒れているのが見えた。見知らぬ女がその盾を支えていた。左手で押し、右腕で全力を受け止めている。ドラウンドが両手で盾を叩きつけた。女は低く膝をついたが、ザヒラにも倒れたチー・ルンにも当たらなかった。

「リサ! なんで戻ってきたの!?」ザヒラの声がインターコムに響き渡った。チー・ロクの耳が痛くなった。

「いった!」チー・ロクはインターコムを一時的に外した。

「うるさいんだよこの野郎!!」ドラウンドが右手を引いて打ちかかった。ザヒラは盾の外にガントレットを放り出し、すぐにリサと一緒に盾を押し返した。

「うあっ……」リサは叫び、膝をついて右手で盾を押し続けた。ザヒラがリサに視線を向けた。ドラウンドが左手を引いた。

「ドラウンドがまた攻撃します!!」チー・ロクが上から叫んだ。

甲高い騒音がドラウンドの右耳に炸裂した。ドラウンドがよろめき、横を通り過ぎたドローンに向かって振り回した。

「なんでこんなとこにでかい蚊がいるんだよ!?」ドラウンドがリサ、ザヒラ、チー・ルンから離れた方向へと引きつけられた。

「大丈夫、リサ? なんで戻ったの。なんでバンカーに行かなかったの?」ザヒラがインターコムで心配そうに聞いた。

「大丈夫です、先輩。状況はどうなってますか?」リサの声がかすかに聞こえた。上からチー・ロクにはリサの視線がドラウンドから離れないのが見えた。

「状況は複雑なの、リサ。一回引い――」

「状況はどうなってるんですか、先輩!?」リサがザヒラの方へ向き直り、声を張った。ザヒラの目が大きく開いた。唇を噛んでいるのが見えた。

「手短に言うと、ドラウンドの体がもう五十パーセントブライトに覆われてる。倒す方法は急所を攻撃するか、十分な強さの電撃でスタンさせるかのどちらか」ザヒラが説明した。デニスのドローンを追いかけているドラウンドのスピードが少しずつ落ち始めていた。

「道具はありますか?」リサが聞いた。

ザヒラは首を横に振った。

「あります!」チー・ロクがインターコムじゃなく直接叫んだ。

ザヒラとリサが同時にチー・ロクを見上げた。

「電撃弾があります」チー・ロクが続けた。

リサとチー・ロクは視線を交わした。リサが頷いて立ち上がった。

「リサ、どこ行くの?」ザヒラがリサの足を掴んだ。もう一方の手は盾を持ってまだ身を隠している。

「ザヒラ先輩は休んでてください。私まだ体力あります。さっき寝てたし」リサは微笑んで盾の外へと出ていった。

「リサ!!!」ザヒラが叫んだ。

チー・ロクはライフルを手に取り、グラシオ弾を引き抜いて電撃弾に替えた。ライフルの色が淡い青から濃い紫へと変わった。それまで静かだった発射音が、静電気のようなノイズに変わった。チー・ロクは深呼吸して、照準をドラウンドではなくリサに向け直した。リサが走り、電柱の横に立った。右腕がだらりと動かない。左手には落ちていた木の枝を握っている。

リサはチー・ロクに向かって頷いた。力の限り電柱を叩いてから、すぐに電柱から離れた。ドラウンドが振り返り、リサを見つけると飛びかかった。チー・ロクはゆっくりと息を吸い込み、人差し指が引き金に乗った。リサは電柱と建物の隙間をすり抜けてかわした。ドラウンドの両手が地面に激突し、そのままどぶに落ちた。

「うがああっ」ドラウンドがどぶから這い出した。体中が濡れてぬめっていた。

チー・ロクが引き金を引いた。弾がずぶ濡れのドラウンドの腹に命中した。水を通って電流が全身に走った。体が激しく震えた。口から煙が出始め、目が白く裏返り、そのまま前に倒れた。ブライトがゆっくりと消えていき、傷が癒えていくにつれて、一片も残らず消えた。

リサは右肘を左手で抱えた。ザヒラが倒れたチー・ルンの横に盾を置いてリサの元へ走った。ザヒラがリサを抱きしめた。「大丈夫?」

リサは微笑んだ。「大丈夫です、先輩」

ザヒラはドラウンドの方へ向き直り、首に触れようとした。

「待って、まだ電流が残ってる」デニスが路地から出てきてドラウンドに近づいた。検電ドライバーで背中を確認した。

光った。デニスはそのままドラウンドの背中を踏み、足を上下に動かした。

「生きてる」デニスが言った。

ザヒラが後ろへ倒れ込んだ。リサがすぐに支えた。チー・ロクがライフルをしまって屋上から降りてきた。

下に着くとすぐにチー・ルンの状態を確認し、両手をさすった。「大丈夫、少し押しつぶされただけ」

チー・ロクはリサの方へ歩いてきた。

「すみません、先輩。ちょっと腕を借りていいですか」リサは戸惑いながらも頷いた。チー・ロクはリサの右腕をまっすぐ伸ばして素早く引いた。

「いたっ……!!」リサの目から涙がにじんだ。

「これで大丈夫です。あとで医者に診てもらってください。感染症のチェックのために」チー・ロクがリサの肩を軽く叩いた。

「ありがとう、チー・ロク」リサはしかめっ面で微笑んだ。片目が細くなっている。

「どういたしまして」チー・ロクが微笑みを返した。

広い通りから規則正しい足音が聞こえてきた。また遅れてやってきた警備員たちだった。デニスが目を細めてため息をついた。

「疲れすぎて怒る気にもなれないの?」チー・ロクが聞いた。

「いつもこうなんだよ。エージェントは全員タフだと思ってるのか?」デニスは首の後ろをかいた。

ザヒラとチー・ロクが笑った。その時、後ろから何かが倒れる音がした。全員が振り返った。リサがアスファルトの上に力なく仰向けに倒れていた。

「リサ!!」ザヒラが叫んだ。

サイレンが耳をつんざいた。救急車が三台やってきて彼らを迎えた。

***

鼻を突く見慣れた匂いが漂っていた。白い天井が目に映る。

「知らない天井だ」リサが小さく呟いた。

右を見ると、包帯が腕に巻かれていて、細いチューブが点滴につながっていた。左を見ると、誰かが足を組んで本で顔を隠していた。

「『アドレナリンに基づく神経応答と反射の向上に関する分析』」リサはゆっくりと読み上げた。

「ボ、ボス」リサが呼んだ。声がか細かった。

「あ、もう起きてたんだ」アセプは本を閉じ、赤い椅子を引き寄せてリサの隣に座った。

「大丈夫?」アセプはOKサインを作りながら聞いた。

リサは目を閉じて小さくため息をついた。「た、たぶん。右手の感覚がないんです。さっきチー・ロクが直してくれたのに」

「そう? じゃあチー・ロクの紹介はしなくていいか」

リサは毛布に目を落とし、足を動かした。

「ボス」

「さっきからボスボスって! ずっとここにいたのに!」リサは目をぱちくりさせ、今度はもっと深くため息をついた。息を整えてから聞いた。

「ドラウンドの体についてた黒いもの……あれは何ですか?」

「ブライト?」アセプは唇を尖らせて空気を吸い込んだ。手を離しながら息を吐き出した。

「簡単に言うと、あれは……えーと、難しい言葉だな。憎しみが爆発すると、それが外に出てくる。場所はランダムで、形もそれぞれ違う。体の一部を覆い始めると、その部分が硬くなったり鋭くなったりする」親指を立ててにっと笑った。

いつも通りだ……

リサはアセプを細目で見て、ゆっくりと頷いた。「わかりました、説明してくれてありがとうございます、ボス」

コンコン

ドア越しにノックの音がした。アセプがリサを見た。リサが頷いた。

「どうぞ」アセプが呼んだ。

「失礼します」白いポニーテールの若い女が入ってきた。防弾ベストを着ている。

「正式にお礼を申し上げさせてください。弟を助けていただき、ありがとうございました。エージェント・リサ」女はリサの足元の真ん中まで歩いてきて、ゆっくりと頭を下げた。リサは驚いて横を見てから、目の前の女に視線を戻した。そして左手を振った。

「た、たまたまです」リサは頭をかきながら愛想笑いをした。

「チー・ロク、久しぶりだね」アセプが言った。

「アセプさん、お久しぶりです。もっと早く止められなくて申し訳ありませんでした」

「いや大丈夫、これはザヒラのせいだから。チー・ルンが巻き込まれなければよかったんだけどね」アセプが言った。

リサはアセプの答えを聞いて目を丸くした。口を開いて聞いた。「どうしてザヒラ先輩のせいになるんですか、ボス?」チー・ロクも黙ったままアセプの答えを待った。

「ザヒラが『取り込み中』にプロフィール変えるか、プライドを少し捨てて断りさえすれば、別のエージェントが対応してた」

チー・ロクはゆっくりと頷いた。リサはチー・ロクとアセプを交互に見た。

「あいつは疲れてた。前の任務でエネルギーを使い切って、レポートも終わってないのにまた新しい任務を受けた。だから武器を忘れて、任務が余計こじれた」アセプは首を横に振った。「まあドラウンドの『保護施設』が管理してる国のせいでもあるけどな」アセプはぼそっと付け加えた。

「ドラウンドの『保護施設』?」リサが首を傾げた。

「そうか、まだ知らなかったか。ドラウンドってのはね、リサ。簡単に治るものじゃない。今まで一人も回復した人がいないんだ。だから専用の施設で保護されてる」

「な、治らないんですか?」リサの目が大きく開いた。

暴れて人を傷つけるドラウンド。治らない?

「そう、なぜかはまだ研究が進んでないんだけど。今できることは、鎮静剤で抑えるか、憎しみの原因から遠ざけるかしかない」アセプはチー・ロクの前に椅子を一脚置いた。チー・ロクはすぐに腰を下ろした。

リサは天井を見上げた。スーパーヒーローが怪物を攻撃して倒す場面が頭に浮かんだ。怪物は危険すぎる、放っておけない。

でも、あれは怪物。ドラウンドは……

人間だ。

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