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DRIVEN - 感情は、長く抑えてはいけない。  作者: 黒金カズナ


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第四章 赤い女

デニスが重い息をつきながらメインルームに入ってきた。目の下に濃い隈が浮かんでいる。顔がまっすぐアセプに向いた。

「ボス……こんなのは無理です! こんな設計、俺には作れない。外で買うか、専門家に頼んで後で俺がアップグレードする方がいいですよ」デニスは疲労でひどく前屈みになりながら設計図をアセプの顔の前に突き出した。昨晩から一睡もしていないのが見てとれた。

「しょうがないか。今回は節約できると思ったんだけど。もう寝ていいよ」デニスは答えず、そのままメインルームを出ていった。リサの方を一瞥もしなかった。

「あれ、どうしたのデニス? ゾンビみたいな顔して」外から低くてのんびりした女の声が聞こえた。デニスはちらりと後ろを向いただけで、何も言わずに行ってしまった。

「なに、感じ悪」

女がルームに入ってこようとした。まだ顔も見えないうちに、ソファのクッションがリサの頭上を飛んでいった。

「入る前に服直せ、アホ! 子供がいるんだぞ!」アセプが怒鳴った。女がよろけて後ろに倒れた。

クッションをぎゅっと掴んで横に投げた。「出迎えもなしで、任務終わらせて帰ってきたら速攻怒られるとか」

「うるさい! ベータは朝から帰ってたのに、お前は夕方になってようやく来た」アセプはすでに別のクッションを手に持っていた。

女はドアの枠を強く握り、震える脚で立ち上がろうとした。ぐちゃぐちゃになったメイクが見えた。崩れ方からして、クッションのせいだけではないらしい。滲んだ跡がすでに乾いていた。女はドアに寄りかかってから、なんとか歩き始めた。

厚いレザージャケットも、その下の体のラインを隠しきれていなかった。バイオリンのように美しい曲線。足元はヒールとミニスカート、真っ赤。歩くたびに艶やかな赤いネイルがきらりと光った。

女はアセプに向かって指を突きつけた。爪がほとんど顎に刺さりそうだ。「どこ行ってたか聞きもしないわけ? リーダーとして気遣いのかけらもないね」

アセプの顔の血管がぴくりと動いた。「聞かなくてもわかってる」

女はコイを見て、続いてリサに視線を移した。

「あら、新しい女の子。やっとコイのために母を探してきたんだ」片手を腰に当てた。

「違う、新しいメンバーだ」アセプが大きくため息をついた。

女は腰から手を外してリサに差し出した。

「ザヒラ・アングラエニ・プトリ・ヌグラハ・アユだ」

長い。

リサはおずおずと手を伸ばした。

「リ、リサです」

「…………」

間も置かずザヒラは手を引いた。そのままゆらゆらと台所の方へ歩いていく。

「ビ……フライパン温めといて、すごくお腹空いてるから」叫んだが、台所の入口で立ち止まり、レザージャケットのポケットをまさぐった。

「あ、そうだ。コイ、スナックあるよ。さっき渡すの忘れてた」ザヒラが向きを変えた。ザヒラが横を通り過ぎた瞬間、リサはなぜか体がぴんと固まった。

なんで身構えてるんだろ、私。

「あ、あ、ありがとう……おばさん」コイが小さく答えた。

それまでVの形だったザヒラの口が、へになった。

「コーイ……」

コイがびくっとして、さらにアセプの背中に深く隠れた。

「おばさんじゃなくて、ク・ザ・ヒ・ラ・姉ちゃん。でしょう?」ザヒラは口の端をひくひくさせながら微笑んだ。

「自覚しろよババ、おばさんって呼ばれて当然だろ」アセプが静かに言った。

「うるさい。ふんっ」ザヒラは顔を背け、台所へと戻っていった。

リサはアセプの背後で震えているコイに視線を向けた。さっきからずっと、体ごとぶるぶると揺れていた。

***

リサは自分の部屋で、ラボ時代の服をたたんで整理していた。ルクマン博士と一緒に写った写真を拭いて、引き出しの上に置いた。気がつけばもう日が沈んでいた。腕時計が震えた。

ファルハンからメッセージが届いていた。インフィニット加入おめでとうの言葉だった。

「おめでとうリサ。まあ、本当はおめでとうって言う必要もなかったんだけどね。絶対入れると思ってたから。アセプってちょっと変わってるからさ」

リサは小さく微笑みながら読んで、喉が渇いたので台所に向かった。廊下からメインルームを見ると、部屋は暗かったが、かすかに明かりが漏れていた。近づいて覗き込み、真っ白で奇妙な形のものが見えた瞬間、思わず固まった。

ゆ、幽霊……?

「なんでそこで突っ立ってるの」その声は――ザヒラだった。

リサはほっと息をついて電気をつけた。白いフェイスマスクが顔全体を覆っており、髪もひとまとめにまとめられている。

「レ、レポート書いてるんですか、先輩?」リサが聞いた。

「どう思う?」

その返しにリサはどうしたらいいかわからなくなった。座り続けるか台所に行くか迷っていると、ザヒラが隣の空いたスペースをぽんと叩いた。「こっち来て」

リサはゆっくり近寄って腰を下ろした。目が自然とザヒラの見慣れないフェイスマスクに向いた。

「ほんとに黙ってるだけなんだ。自分から話しかけたりしないの?」ザヒラはタイピングしながら素っ気なく言った。

「え……あの……」リサは何を話せばいいかわからず視線をさまよわせた。

「ぷっ……ははは」ザヒラが笑い出した。リサはますます混乱した。「冗談冗談、ごめんね。同世代の女の子見たら、いじらずにはいられなくて」

リサも引きつった笑いで合わせた。「先、先輩って何歳ですか?」

「まだ若いよ、27なりたて。あなたもそのくらいでしょ?」

リサはゆっくり顔を向けた。「わ、私、21です……」

「はあ!? 21!? 嘘でしょ、どこが21なの! 顔が大学のOBみたいだし、背まで高いし。何センチあるの?」ザヒラが叫んだ。

「172です……」

「本当に? 高いなあ……ねえ、背が高くなるコツってある?」

リサは視線を泳がせた。話題を逃げ込む場所がない。

「え、あの、それは……」

「どうせもう伸びない癖によ、ババ。若い子の邪魔しないの」アセプが小さなコンビニの袋を持ってメインルームに入ってきた。テーブルに置くと、ずしりと重い音がした。

ザヒラはアセプに指を向け、こめかみの血管が浮いた。「何よ、あんただって若く見えるじゃない。ずるい」

「え……ボスって何歳なんですか?」リサが気になって聞いた。

「28」アセプは左手でピースサインを作り、右手の指で8の字を作った。

リサは目を丸くしてアセプの顔をまじまじと見た。「ぜ、全然もっと若く見えます……」思わず呟いた。少し間を置いてから、ザヒラとアセプを交互に見た。

「え、ちょ、ちょっと待って……二人って同い年ですか?」

「同い年どころじゃないよ」ザヒラがため息をついた。

「小学校からの幼馴染です」アセプはピースサインの指をひらひらさせながらくすくすと笑った。リサの口が開いたまま止まった。

「こんな夜に何買ってきたの?」ザヒラはレポートを打ちながら聞いた。

アセプが袋から中身を全部出した。一キロから五キロまでのダンベルが一対ずつ並んだ。

「なにこれ、小さくない?」ザヒラが聞いた。

「俺のじゃない。彼女のだよ」アセプは眉でリサを示した。

「え……私ですか?」リサは自分を指差した。

「そう。明日から武器ができるまで、これで鍛えてもらう」

「ぶ、武器……私の?」

アセプは頷いた。「武器なしで任務には出られないだろ。外の職人に頼んで、お前に合ったものを作ってもらうことにした。安心して」

アセプは新しいチェルートの先端を切って火をつけた。「最初はデニスに頼もうと思ったんだけど、鉄の部分が無理だって。まあ鍛冶屋じゃないし、ハンマー持たせたら重さに負けるのが目に見えてるな」アセプはゆっくり長く吸い込み、口をわずかに開けた。煙が水のように流れ出した。

リサはふと気がついた。夕方からデニスもベータも姿を見ていない。「そ、そういえば……ベータさん、まだ起きてないんですか?」

「こいつはいつもそう。ハンティング任務の後は、二日寝ないと気が済まない」ザヒラが答えた。

「ハンティング?」リサが聞いた。

「そう、逃げたドラウンドを狩り」

アセプが口の端でチェルートを咥えたまま、にっと笑った。

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