最後の約束
空が暗くなる頃、彼女は小さな公園のベンチに座っていた。風が少し冷たく感じる。もうすぐ彼との約束の時間だ。
「来るかな?」
心の中で何度もその言葉を繰り返してみるが、答えはいつも返ってこない。でも、今日は違う気がした。
数年前、彼と約束したことがあった。
「もしもお互いに連絡が取れなくなったら、この公園で待つことにしよう」
と……彼がどこかへ消えてしまったあの日から、彼女は毎日この場所に来ている。もうすぐ三年が経つ。
その時、遠くから足音が聞こえてきた。彼女は無意識に立ち上がり、振り返る。そこには彼が立っていた。
「久しぶりだね」
彼は以前と変わらない笑顔を浮かべていたが、少し疲れたようにも見えた。
「でも、どうして今になって? ずっと待ってたのに」
彼はゆっくりと歩み寄り、彼女の前に立つと、少し困った顔をした。
「ごめん、ずっと伝えられなかったんだ」
「どうして?」
「僕、もう死んでるんだよ」
その言葉を聞いた瞬間、彼女の胸が締めつけられるように痛んだ。彼女は黙って彼を見つめた。彼の手が触れることなく、彼女はそれを感じた。
「でも、約束したよね。君が待っているなら、いつか必ず来るって」
「どうしてそんなことを……」
「もう君を引き止めるわけにはいかない。君に忘れられた時、僕もさよならするんだ」
彼は最後に優しく微笑むと、そのまま消えていった。風に乗って、彼の言葉が静かに響いた。
「忘れないで。君を守ってるから」
彼女は忘れるまでその言葉を胸に噛みしめていた。




