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6 親友なのに犬猿の仲?

「早乙女さんっ」

 翌日、教室に入って真っ先に、眉毛をハの字にした綾小路が俺のもとに駆け寄ってきた。

 金髪がふわふわと揺れて、女の子特有のいい匂いが漂ってくる。

 俺の体も今は美少女のはずだが、あいにく自分の体臭は感じ取れなかった。


「昨日、喧嘩したって本当ですのっ!?」

「え?」


 誰に聞いたんだろう?

 もしかして、どこかに昨日の喧嘩騒動を見ていた人がいて、ちょっとした噂になっちまったか?

 くりくりした愛らしい瞳を不安げに震わせる綾小路。

 うっ……かわいい……!

 

 俺は感情を抑えてひらひらと右手を振った。

「たまたま鬼塚といるときに、絡まれて、ちょっとな」


「お怪我はありませんか!?」


 俺の右手を綾小路のか細い両手のひらが包み込む。

 あまりの柔らかさにびっくりした。

 女子の手って、こんなに柔らかいんだ。


「な、な、ないよ。鬼塚、喧嘩強かったから」

「良かったです……」

 動揺を隠しつつ、ピンピンしている俺を見て、ようやく綾小路は胸を撫で下ろした。


 なんでこんなに心配してくれるんだろう……?


 も、もしかして、俺のこと、好きなのかな……?


 ──なんて、前世の俺だったらそんな勘違いをしていただろう。

 しかし!

 今の俺は、女子高生だ!

 女子同士であればクラスメイトが不良の喧嘩に巻き込まれた、な〜んて事件を聞いたら綾小路のような態度になるのは、当然なのかもしれない。


「鬼塚くん……、昔は喧嘩するようなかたじゃなかったのに……」

 ぽつり、と零すように綾小路がつぶやいた。


 昔の鬼塚?

「そうだったのか?」

「はい……、伊集院くんといつも仲良く遊んでて……」

 え?


「……伊集院と鬼塚って、昔は仲良かったのか?」


 驚いた俺が尋ねると、綾小路はハッとしてその小さな口を手で押さえた。

「あっ、すみません、なんでもないんです。忘れてください……」


 そうして、綾小路は「早乙女さんがご無事で良かったです」と微笑んで、自席へと戻って行った。


 残された俺も自分の席へと向かう。


 ──伊集院と鬼塚の仲が良かった?


 少女漫画では、この二人は犬猿の仲だからこそヒロインを奪い合っていたはずだ。

 それなのに、もともとは仲良しだったなんて……。

 

 電球が光るかのように、俺は閃いた。

 

 この原作ストーリーをねじ曲げてしまえば──二人の仲を元通りに取り持てば、ヒロインが二人に迫られることもないんじゃないか?


 ……恋愛フラグを回避できるかもしれない!


 そうと決まれば、と俺は作戦を考える。

 仲の良かった二人が仲違いしているなら、きっと何か事件があったはずだ。

 二人がここまでお互いを嫌い合うようになった、大きなきっかけが。

 なにがあったかは見当もつかないが、意外と解決できるような問題だったりして。


 他人が介入したら、さっさと仲直りするかもしれない。


 まずは、本人たちから事情を聞いてみないことには始まらないな。

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