表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/42

30 このときめきは、いったい……?

 綾小路が校門に到着すると、既に迎えの車が待機していた。


「おかえりなさいませ、お嬢様」


 そう言って、黒服の運転手が後部座席のドアを開けてくれる。


 綾小路は車に乗り込んだ。

 このまま、お見合いの席に連れられてしまう。

 車が発進していくのが、死刑台を登っていくようだ、と綾小路は感じていた。


 でも、死刑台になるかどうかは、自分次第。


 決めたのだ、今日こそは親の言いなりにはならない、と。

 親にも、婚約者にも。自分の気持ちをはっきりと伝えるのだ、と。


 流れる風景を見ながら頭に浮かぶのは、自分のために本気で怒ってくれた、早乙女の顔。


「わたくしのために、そんなに怒ってくれたのは、早乙女さんが初めてですわ……」


 綾小路はその身分ゆえ、逆らう者などいなかった。

 特に、綾小路の両親に逆らう者は。

 娘である綾小路こそ、その典型とも言えた。


 親に逆らえない綾小路を、周りはどう思っていたのか知る由もないが、誰も親の意見がおかしいだなんて言わなかった。

 言いなり状態になっている綾小路に対しても、だ。


 だからこそ、自分のために「おかしい」と怒ってくれる早乙女は新鮮だった


「自分の人生を生きていいだなんて……初めて言われましたわ……」


 両親に対して、綾小路は諦め癖がついていた。

 幼少期こそ泣いたり反抗したりもしたが、その何倍にもなって怒鳴り声が返ってきた。

 親の言うことを聞かない限り、一生怒鳴られ続ける。


 その結果、身につけた処世術が「諦め」だった。


 親の言うことを聞くことが、自分を守る術でもあったのだ。

 自分を守るどころか、人生を諦めることにも繋がるわけだが。


 そんな処世術をおかしいと否定してくれた早乙女。

 綾小路自身も、どこかでおかしいとは感じていたが、もう体が慣れきってしまっていた。

 早乙女が何か行動を起こしてくれたわけではない。

 それでも、自分の感じていた些細な違和感を言葉にして、代わりに怒ってくれた。

 それだけで、綾小路がもう一度諦めないでみよう、と立ち上がるには十分だった。


 早乙女は、綾小路に勇気を与えてくれたのだ。


「…………?」


 綾小路は、ふと、自分の左胸を押さえる。


 どき、どき、どき、どき。


 鼓動が高鳴っている。

 それも、嫌な高鳴りじゃない。

「このときめきは……いったいなんでしょうか……?」

 車は、着々と目的地へと進んでいた。

読んでくださり、ありがとうございます!

ぜひ☆やリアクションをポチッとよろしくお願いします!

感想やレビュー、励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
キマシタワーが建設されるなんて素晴らしいです。私は今猛烈に感動しています。毒親は私が殺します。 更新お疲れ様です!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ